アーヘンの和(エクス・ラ・シャペルの和)
(オーストリア継承戦争の講和条約, 1748)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

アーヘンの和(アーヘンの和約,アーヘン条約,エクス・ラ・シャペルの和,エクス・ラ・シャペルの和約,エクス・ラ・シャペル条約):Treaty of Aix la Chapelle (Peace of Aix la Chapelle, Treaty of Aachen)
1740年に女性のマリア・テレジアがハプスブルク家領を継承したことに端を発したオーストリア継承戦争の講和条約.バイエルン選帝侯はハプスブルク家を押さえて神聖ローマ皇帝にまで選出されたが,1745年,選帝侯は没し,バイエルンはフュッセンの和によってオーストリアと講和.同年12月25日,ドレスデンの和によってフリードリヒ大王のプロイセンは,ハプスブルク家の皇帝フランツ一世を承認するのと引き替えにシュレジエンを獲得してオーストリアと講和.その後,フランス・スペインの連合軍がイギリス・オランダと同盟したオーストリアと戦いを続けたが,1748年10月18日,エクス・ラ・シャペルの和において講和が成立した.この結果,スペインの王子が北伊のピアチェンツァ等三公領をオーストリアから割譲され,プロイセンによるシュレジエン領有も確認された.

英国国王陛下,フランス国王,〔オランダ〕連邦共和国の連邦議会の間の最終的な平和友好条約.一七四八年十月の第十八日(新暦),エクス・ラ・シャペルにて締結され,それにハンガリー女王兼皇后,スペイン国王,サルディニア国王,モデナ公爵,ジェノヴァ共和国が加わる.

最も神聖にして分かつことあたわざる三位一体,父と子と精霊のみ名において.

いかなる形であれ必要であるべき,または必要であるかもしれないすべての人々に知らしむべし.ヨーロッパは天なる神がその休息の再建のために指し示した日を目にしている.全般的な平和が長く血なまぐさかった戦争にとって代わった.その戦争は,神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王,ブラウンシュヴァイク・リューネブルク公爵,神聖ローマ帝国の筆頭財務官にして選帝侯等々たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世,神の恩寵によりハンガリーおよびボヘミアの女王等々,ローマ皇后たる最もやんごとなく最も力ある君主マリア・テレジアを一方とし,神の恩寵によりフランス国王たる最もやんごとなく最も力ある君主ルイ十五世を他方として〔注:フランス語版ではフランスが先で次に英独〕,また同時に英国国王,ハンガリーおよびボヘミア女王兼皇后,神の恩寵によりサルディニア国王たる最もやんごとなく最も力ある君主カール・エマヌエル三世を一方とし,神の恩寵によりスペインおよびインディアスの国王たる(輝かしい追憶の中にある)最もやんごとなく最も力ある君主フェリペ五世,そしてその薨去後は神の恩寵によりスペインおよびインディアスの国王たる最もやんごとなく最も力ある君主フェルナンド六世を他方として〔注:フランス語版ではスペインが先〕勃発した.その戦争においてはネーデルラントの連邦共和国の連邦議会の諸閣下が英国国王およびハンガリー・ボヘミア女王兼皇后を補佐して参加し,最もやんごとなきモデナ公爵,最もやんごとなきジェノヴァ共和国がスペイン国王を補佐して参加した.神はその慈悲において,これらすべての列強諸国に同時に,和解,そしてそれぞれの政府に託したもうた人々への平穏の回復のために定めたもうた道を知らしめた.各国はエクス・ラ・シャペルに使節を送り,その地において英国国王,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会は全般的な講和のための予備的な条件に合意し,ハンガリーおよびボヘミア女王兼皇后,スペイン国王,サルディニア国王,モデナ公爵,ジェノヴァ共和国の使節もそれに加わり,海においても陸においても全般的な敵対行為の中止が実現された.エクス・ラ・シャペルにおいてすべての陣営にとって等しく安定で便利である和平の大業を完成させるため,締約列強諸国は最も高名にして最も秀逸なる諸卿をその特命大使,全権使節に指名し,任命し,全権委任状を交付した.すなわち,神聖なるイギリス国王はジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびサー・トマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節―を.
〔注:フランス語版では次のフランス代表がイギリス代表より先に記述されている〕
神聖なるフランス国王陛下はアルフォンソ・マリア・ルイ―アラゴンのサンセヴラン伯にして勲爵士―およびジャン・ガブリエル・ド・ラ・ポルト・デュ・テイユ,カルメル山の聖母マリア騎士会士,エルサレムの聖ラザロ騎士会士,国王の諸評議会における顧問官,陛下の官房,執務室,王太子の勲爵士団,フランス内親王の秘書官―を.
神聖なるハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后はヴェンツェスラス・アントニー―カウニッツ・リートベルク伯,エッセン,シュテーデスドルフ,ヴィットムント,アウステルリッツ,フングリッシュブロート,ヴィテ等々の領主にして皇帝皇后両陛下への現任の親密なる顧問官を.
〔注:フランス語版では次のスペイン代表が帝国代表より先に記述されている〕
神聖なるスペイン国王陛下はドン・ハコボ卿―マソネ・デ・リマ・イ・ソット・マヨール,スペイン国王陛下の官房付き侍従にしてその軍隊の少将―を.
神聖なるサルディニア国王陛下はドン・ジュゼッペ・オソリオ―最高十字勲章騎士,聖モーリスおよびラザロ軍事騎士会の大守護者,サルディニア国王陛下の英国国王陛下への特命使節―およびジュゼッペ・ボレ―カヴァンヌ伯,陛下の顧問官,そして陛下の連邦共和国の連邦議会への使節―を.
連邦共和国の連邦議会の諸閣下は@ウイリアム―ベンティンク伯,ローンおよびペンドレヒトの領主,ホラント・西フリースラント州の貴族の一員,レイデン大学の評議員,等々―およびAフレデリック・ヘンリー―ワッセナール男爵,カトウェイクおよびザントの領主,ホラント・西フリースラント州の貴族の一員,ラインラントの治水管理局長等々―,Bヘラルト・アルナウル・ハッセラール―アムステルダム市の参事会員で評議員,東インド会社理事―,Cヤン―ボルセレ男爵,ゼーラントの筆頭貴族かつ州議会,評議会,海軍委員会における貴族代表,東インド会社理事―,Dオンノ・ツウィール・ヴァン・ハーレン―ウェストステリンフウェルフの判事,フリースラント州の評議員代理,前記連邦議会のもとで軍務につくスイスおよびグラウビュンデン〔現スイス東部〕の兵全体の兵站総監―,それぞれにホラント・西フリースラント,ゼーラント,フリースラント各州の連邦議会の会議および国務評議会における各代表を.
〔西フリースラントというのはホラント州の北部にあたり,フリースラント州とはザイデル海を隔てて対岸にあたる.フリースラントは西,中部,東に区分されていたが,西フリースラントは中世からホラント伯に属していた.フリースラント州は中部フリースラントにあたる.東フリースラントはドイツである.〕
最もやんごとなきモデナ公爵はモンツォーネ伯爵―公爵の国務評議員であり公爵に仕える大佐であり,そのフランス国王陛下への全権使節―を.
各使節は互いに有効なる形の全権委任状(この本条約の末尾にその写しが付記されている)をやりとりし,それぞれの君主がこの全般的な和平の証書に挿入することが適当と判断する各事項について協議したのち,各条項についての合意に達した.それは次の通りである.

第一条〔平和の樹立〕
海上においても陸上においても,キリスト教的で全般的にして恒久的な平和,そして上に述べられた八つの列強の間,そしてその世継ぎと後継者,王国,邦,州,国土,臣民,封臣の間に,その地位と条件とを問わず,いかなる土地や人物の例外もなく誠実かつ永続的な友好が来たるべきである.締約列強諸国がそれらの間で,そしてその前記諸邦,臣民の間で,いずれの側もいかなる種類の敵対行為も,いかなる原因であろうと,またいかなる主張に基づくものであろうと犯されることを許さず,この相互的な友好と交流を維持すべく最大の関心を払うよう.

第二条〔免責〕
ここに終結した戦争の開始以前または以後になされた,あるいは犯されたあらゆることに対し,全般的な大赦が適用されるものとする.そしてすべての人々は,すべての締約国の批准書の交換の日に,戦争の始まった時点において享受していた,あるいは享受しているべきであったすべての所持品,位階,聖職禄,名誉,収入を,前記戦争によって引き起こされた占有,奪取,没収にかかわらず,維持され,あるいは回復されるものとする.

第三条〔土台とする条約〕
一六四八年のウエストファリア条約,一六六七年および一六七〇年の英国とスペインの国王の間のマドリード条約,一六七八年と一六七九年のネイメーヘンの講和条約,一六九七年のレイスウェイク条約,一七一三年のユトレヒト条約,一七一四年のバーデン条約,一七一七年のハーグにおける三国同盟条約,一七一八年のロンドン四国同盟条約,一七三八年のウイーンにおける平和条約は,全般的な講和およびこの条約の基礎をなすものである.そして,この目的のために,それらはみな完全な形において更新,確認され,それらが一字一句もらさずここに挿入されているかのごとくであるものとする.それらが将来その文面全体にわたって厳密に遵守され,どちらの陣営においても熱意をもって遂行されるよう.しかしながら,本条約によって無効とされたものは別である.

第四条〔捕虜の返還〕
一方あるいは他方の陣営において,陸上においても海上においても捕獲された捕虜,そして戦争中そしてこの日までに要求され,あるいは提供された人質は身代金なしで本条約の批准書の交換の日から起算して遅くとも六週間以内に復帰させられるものとする.それは交換後,ただちに着手されるものとする.そして海上での敵対行為の終了のために合意された期限が切れてから奪われた軍艦,商船はすべて同様に誠実にすべての装備品と積み荷とともに回復されるものとする.そして,捕虜が完全に自由になるまでに拘留国において負った負債の支払いに対し,すべての陣営において担保が与えられるものとする.

第五条〔征服地の返還〕
戦争開始以来の,あるいは去る四月三十日に調印された予備条項の締結以来になされた,あるいはなされるすべての征服地は,ヨーロッパのものと東西インドのもの,あるいは世界の他の部分のものとを問わず,前記予備条項の規定するところに従って例外なく返還されるべきであり,締約国はただちにその返還に,そしてまた最もやんごとなき親王ドン・フェリペ〔スペイン王フェルナンド六世,ナポリおよび両シチリア王カルロスの弟〕をして前記予備条項の効力により譲渡される諸邦の領有にはいらせる手続きに取りかかるための命令を発することを約する.前記参加国は厳粛に,自らもまたその世継ぎおよび継承者も,それぞれに返還ないし譲渡すると約した諸邦,国土,場所すべてについて,いかなる称号や主張のもとであろうともあらゆる権利,主張を放棄する.ただし,最もやんごとなき親王ドン・フェリペへの譲渡が規定されている諸邦の移譲は別である.

第六条〔征服地の返還〕
ヨーロッパにおけるそれぞれの返還,割譲はすべてあらゆる陣営において,上述した八参加国すべての本条約の批准書の交換の日から起算して六週間のうちに,あるいは可能ならばより早く完全に行なわれ,執行されることで決着され,合意された.その同じ六週間の期間のうちに,フランス国王はハンガリーおよびボヘミア女王兼皇后に,また同様に連邦共和国の連邦議会に,この戦争中に獲得したあらゆる征服地を返還するものとする.
ハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后は,本文書の結果として,本条約によって別して規定されているものを除き,本戦争以前にネーデルラントおよび他所において有していたすべての完全にして平和裡の領有に処されるものとする.
同時に連邦共和国の連邦議会の諸閣下は,本戦争以前にそうしていたように,ベルヘン・オプ・ゾーム,マーストリヒトの二地点,そしてオランダ領フランドル,オランダ領ブラバント,その他の場所における前記本戦争以前に彼らが有していたすべての完全にして平和裡の領有に処されるものとする.
そして,宗主権がハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后に属し,連邦議会諸閣下が守備隊を置く権利をもつネーデルラントの都市や場所は,同じ期間内に共和国の兵に対して明け渡されるものとする.
サルディニア国王は同様に,そして同じ期間内に,サヴォイ公領,ニース郡,ならびに本戦争に際して彼から征服され,奪取されたすべての諸邦,国土,場所,砦において,完全に復権され,維持されるものとする.
最もやんごとなきモデナ公爵および最もやんごとなきジェノヴァ共和国もまた,同じ期間内に,彼らに関係するこの条約の十三条および十四条の趣旨に従い,本戦争中に彼らより征服され,奪取された諸邦,国土,場所,砦において完全に復権され,維持されるものとする.
前記都市,砦,場所の返還,割譲のすべては,戦争の過程中におけるその降伏の日においてそこにあった大砲および軍需物資すべてとともに,前記割譲および返還をなすことになっている列強によってなされるものとする.そしてこれはそれらについて作成された,あるいはそれぞれの陣営において善意のもとに届けられる目録に従って行なわれる.鋳直し,あるいは他の用途のためによそに持ち去られた大砲については,口径,金属重量が同じ同数によって補填されるものとする.また,外堡が破壊されたシャルルロワ,モンス,アト,アウデナールデ,メーネンの地点については大砲なしで返還されるものとする.その他すべての地点の防塞づくりにおいて要された諸掛かりおよび費用に対しては,いかなる対価も要求されないものとする.返還される国土においてなされた公共あるいは私的な建造物についても同様である.

第七条〔北伊三邦の割譲〕
フランス国王陛下およびスペイン国王陛下が本条約によってハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,あるいはサルディニア国王陛下に対してなす返還に鑑み,パルマ,ピアチェンツァ,グアスタラ公国は今後最もやんごとなき親王ドン・フェリペに属し,彼および法的な婚姻によって生まれるその男系子孫によって,現在の領有者によって領有されてきた,あるいはされるべきと同じやり方,同じ広がりにおいて領有されるものとする.そして前記最もやんごとなき親王あるいはその男系子孫は,ハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,およびサルディニア国王の割譲証書において明記されている条件に従い,そのもとで,前記三公領を享受するものとする.
このハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,およびサルディニア国王の割譲証書は,本条約の批准書とともに,スペイン王の特命全権大使に届けられるものとし,それはフランス国王およびスペイン国王の特命全権大使が,両陛下の批准書とともにサルディニア国王の特命全権大使に,サヴォイおよびニースの国土をその君主によって受領のために任命される人物らに返還すべしというフランス,スペイン兵の将軍への命令書を届けるのと同じやり方による.前記諸邦の返還,および最もやんごとなき親王ドン・フェリペによる,あるいはその名におけるパルマ,ピアチェンツァ,グアスタラの各公領の引き受けは,次にその文面を掲げる割譲証書に従って,同じ期間内に実行されればよい.

〔原文ラテン語〕
余マリア・テレジア等々は本証書によって知らしめる.致命的な戦争に終止符を打つため,最もやんごとなく最も力ある君主たる英国国王ジョージ二世および最もやんごとなく最も力ある君主たるフランス国王ルイ十五世,および連邦共和国の連邦議会の諸閣下の全権使節の間で本年四月三十日にとある予備条項に合意がなされ,その後関係するすべての列強によって批准されている.その第四条の趣意は次のように解釈される.
〔原文フランス語〕パルマ,ピアチェンツァ,グアスタラの公国は最もやんごとなき親王ドン・フェリペに譲渡され,その封建領土をなすものとする.ただし,両シチリア王国の国王陛下がスペイン王位を継承した場合,また前記最もやんごとなき親王ドン・フェリペが子なくして没したような場合には現領有者に復帰する権利があるものとする.
そしてその後最終的な講和条約が締結された際,本件に関係するいくつかの点はその諸条項の効力により,関係諸国の共通の同意によって以下のように説明されている.
フランス国王陛下およびスペイン国王陛下が本条約によってハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,あるいはサルディニア国王陛下に対してなす返還に鑑み,パルマ,ピアチェンツァ,グアスタラ公国は今後最もやんごとなき親王ドン・フェリペに属し,彼および法的な婚姻によって生まれるその男系子孫によって,現在の領有者によって領有されてきた,あるいはされるべきと同じやり方,同じ広がりにおいて領有されるものとする.そして前記最もやんごとなき親王あるいはその男系子孫は,ハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,およびサルディニア国王の割譲証書において明記されている条件に従い,そのもとで,前記三公領を享受するものとする.
このハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后,およびサルディニア国王の割譲証書は,本条約の批准書とともに,スペイン王の特命全権大使に届けられるものとし,それはフランス国王およびスペイン国王の特命全権大使が,両陛下の批准書とともにサルディニア国王の特命全権大使に,サヴォイおよびニースの国土をその君主によって受領のために任命される人物らに返還すべしというフランス,スペイン兵の将軍への命令書を届けるのと同じやり方による.前記諸邦の返還,および最もやんごとなき親王ドン・フェリペによる,あるいはその名におけるパルマ,ピアチェンツァ,グアスタラの各公領の引き受けは,次にその文面を掲げる割譲証書に従って,同じ期間内に実行されればよい

それゆえに,上に挿入された条項によって余が言質を与えたことを履行するため,そしてフランスおよびスペイン国王,そして前記三公領の将来の領有者,そしてその男系子孫のほうも善意の上に上述された条項の趣意を厳密に履行し,同様に余に対しては同じ時間内に,同予備条約の第二および第十八条の結果余に対して返還されることになっている諸邦および地点を余に返還することを期待して,余は,余自身ならびに余の継承者についても,上述した条項によって明記されている条件のもとに,以前余が領有していた前述パルマ,ピアチェンツァ,グアスタラの三公領に対する余のすべての権利,主張,僭称を,いかなる名称あるいは大義のもとであっても譲り渡し,放棄する.そして同じ権利,主張,僭称をありうる最良にして最も厳粛なやり方で最もやんごとなき親王たるスペインのドン・フェリペおよび法的な婚姻によって生まれるその男系子孫に移譲する.前記公領の住民はみな,彼らが余に対してなした忠節および宣誓から解放され,今後は同じ忠節を余が余の権利を譲り渡す者に対して払う義務を負うものとする.しかしながら,これらすべては前記最もやんごとなき親王ドン・フェリペあるいはその子孫が両シチリア王国の王座にもスペインの王座にもつかない間限りのものと理解されるものである.その時点で,そして前述した親王が男系子孫なくして没した場合には,余は余自身,余の世継ぎおよび継承者に,これまで余に属してきたすべての権利,主張,僭称,そしてその結果前記公領を回復する権利を留保するものである.
その証として等々.


〔原文イタリア語〕
カール・エマヌエル等々.余の側でも公共の安寧を最もすみやかに再建するのに貢献したいという望みは,英国国王陛下,フランス国王陛下〔注:原文ではフランス→イギリスの順〕,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の間で去る四月三十日に調印された予備条項への先だっての参加に余を導き,去る五月三十一日,余は余の全権を通じてしかるべく参加し,余はなおその追求のため余の側において実践されるべきできるだけ多くのことを実現するつもりでいる.そしてとりわけ前記予備条項の第四条に含まれることを遂行するため―その効力によってパルマ,ピアチェンツァ,グアスタラの公領が最もやんごとなき君主ドン・フェリペ,スペイン親王が封建領土として有するべく譲り渡されるが,ただし両シチリアの国王陛下がスペインの王冠を継承するか,前記親王が男系嫡子なくして没するようなことがあり次第現領有者に回復する権利は留保される―余はそれに従い,本状において,余自身のみならず余の継承者についても,ピアチェンツァおよびピアチェンツィーノ〔ピアチェンツァ地方〕(余が領有していた)を,前述された最もやんごとなき幼児ドン・フェリペおよびその男系嫡子および法的な婚姻において生まれるその子孫がピアチェンツァ公爵として有し,領有するよう,放棄し,譲り渡し,移譲する.この目的のため,余がそれらに対してもっているあらゆる権利,主張,僭称を放棄する.しかしながら,余および余の継承者に,上で述べられた場合における回復の権利は留保する.
その証として等々.


第八条〔返還期限〕
前記返還および割譲を確実かつ有効なものとするため,それらはヨーロッパにおいてはすべての陣営において八列強すべての批准書の交換の日から起算して六週間の期間内,あるいは可能であればより早く完全に遂行,実現されるものとする.それにあたり,本条約の調印後十五日のうちに,将軍,あるいは締約国がその目的のために適当と考えて任命する人物がブリュッセルおよびニースに集まり,返還に着手し,兵にも住民にもそれぞれの国にも等しく好都合なやり方で当該者に領有させる方法について調整し,合意するものとする.しかし,締約国各国すべてが,本条約によって約された意図ならびに誓約に則って,前記八列強すべてによる本条約の批准書の交換後前記した六週間の期間内あるいは可能であればより早く,いかなる例外もなく,返還によると割譲によるとを問わず,彼らに取得さるべきすべての完全にして平和裡な領有にはいれるように.

第九条〔海外植民地の返還〕
予備条約の十八条においてあらゆる返還と割譲は等しく実行され,同時に執行されるべきであるとした誓約が相互に交わされたのにもかかわらず,フランス国王陛下は本条約の第六条によって本条約の批准書の交換の日から六週間以内あるいは可能であればより早くにネーデルラントにおいて得たすべての征服地を返還すると約する.他方,国土の遠さを考えるとアメリカに関係する事項を同じ時間内に実行に移すことも,その完全なる執行の期日を定めることさえも不可能であるがゆえに,英国国王陛下は同様に,本条約の批准書の交換後ただちに,フランス国王陛下に二名の身分ある重要人物を送り,ケープブレトンと呼ばれるロイヤル島および英国国王陛下が予備条約調印の前もしくはのちに東西インドにおいてな得たあらゆる征服地が返還されたという確実にして信ずべき報告が受領されるまで,両名はその地に人質としてとどまることとする.
英国国王陛下,フランス国王陛下は同様に本条約の批准書の交換と同時に,予備条約の第二条,前記東西インドでの征服地に関することについての去る五月二十一日,三十一日,および七月八日の宣言に従って,前記東西インドにおいていずれかの陣営によって征服されたあらゆる地点をそれぞれに返還,あるいは受領するために任命された委員に宛てた命令書の写しが届けられるようはからう義務を負う.しかしながら,ケープブレトンと呼ばれるロイヤル島は降伏の日においてそこにあったすべての大砲および軍需物資をそれについてつくられた目録に従って残し,前記降伏の日におけるのと同じ状態において返還されるものとする.その他の返還については,予備条約の第二条および去る五月二十一日,三十一日,そして七月八日の宣言および協定の意味するところに従って,西インドにおいては新暦六月十一日,東インドにおいてはやはり新暦で十一月三十一日における状態で行なわれるものとする.そしてその他のことはすべて,今回の戦争以前にそうであった,あるいはそうであるべきであったことを土台として再建されるものとする.
前記の各委員は西インドの者も東インドの者も,英国国王陛下およびフランス国王陛下が,批准書が,前記両陛下の意図と本条約によってなされた誓約を最もすみやかに実現するために必要なすべての訓令,辞令,権限委任状,命令書が備え付けられた上で交換されたとの第一報を受け次第出発するよう用意するものとする.

第十条〔引き渡し領土における徴税権など〕
それぞれに返還または譲渡されることになっている国土の通常の歳入および軍の維持および冬営のためにそれらの国土に課される賦課は,本条約の批准書の交換の日までそれらを有している列強に属するものとする.しかしながら,その支払いのために十分な保証が与えられている限り,執行措置をとることは許されず,軍の馬糧および備品は明け渡しまで提供されるものと常に理解される.以上の結果,すべての列強は戦争の過程において有していた国土,町,地点に対して課してきた賦課や徴発で,前記戦争のできごとによって前記国土や町,地点を棄てることを余儀なくされた時点において払われていなかったものを,要求したり取り立てたりしないことを約束し,誓約する.

第十一条〔文書・記録の扱い〕
返還される国土,地所,町,場所にあったすべての書類,手紙,文書,記録,および譲渡される国土に属するそれらのものは,それぞれに,善意をもって,届けられ,あるいは引き渡されるものとする.それは前記した書類,文書―例を挙げれば,メヘレンの市議会の記録保管所より持ち去られたもの―がみつかった場所によらず,可能であれば所有権の転移と同時に,遠くとも八か国すべての本条約の批准書の交換後二か月で行なわれるものとする.


第十二章〔サルディニアの獲得地〕
サルディニア国王陛下は古来よりまた新たに享受せるすべて,とりわけ一七四三年に獲得したヴィジェヴァーノ―パヴェーゼの一部―およびアンギエラの国土の領有を,この君主が現在領有しているやり方において,彼に対する割譲の効力によって続ける.

第十三条〔モデナ公への返還〕
最もやんごとなきモデナ公爵は本条約ならびに本来の権利と大権,格式の効力によって前記条約の批准書の交換後六週間,可能ならより早くに,そのすべての諸邦,地点,砦,国土,所持品,歳入,そして一般に戦争前に公が享受していたいっさいのものを所有するようになる.
同時に,公の記録,文書,書き物,動産などはその性質を問わず,そしてまたその国土が奪取されたときにそこにあった大砲および軍需物資は同様に公に返還されるものとする.欠けているもの,あるいは他の形に変えられたものについては,そのようにして取り上げられた物の公正なる値が現金にて支払われるものとする.その金,ならびに最もやんごとなきモデナ公爵がハンガリーに有していた封土が返還されなかった場合,それに対する等価物については,本条約の第八条に従って相互の返還と領有の着手を執行するための手段について協議するために調印後十五日のうちにニースに集まるそれぞれの将軍,あるいは委員によって決着され,調整されるものとする.それにより,最もやんごとなきモデナ公爵は,そのすべての諸邦を回復するのと同じ日に同様にしてそのハンガリーにおける封土あるいは上記の等価物の享受を開始し,返還され得ないものの値を受領できるようにする.同じ批准書の交換後六週間の期間中にグアスタラ家の自由保有地に関しても公正にとりはからわれるものとする.

第十四条〔ジェノヴァへの返還〕
最もやんごとなきジェノヴァ共和国は本条約ならびに本来の権利と大権,格式の効力によって前記条約の批准書の交換後六週間,可能ならより早くに,戦争前に公が享受していたすべての諸邦,地点,砦,国土,いかなる性質のものとを問わず所持品,地代,歳入の所有を回復する.とりわけ,前記共和国の構成員,臣民のすべての者は,本条約の批准書の交換後前述の期間以内に,彼らがウイーン銀行,オーストリア,ボヘミアあるいはハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后の他のいかなる諸邦,またサルディニア国王の諸邦においてもつすべての資金の享受および処置する自由を回復するものとする.そして利子は,本条約の批准書が交換される前記の日から起算して厳密かつ規則的に彼らに支払われる.

第十五条〔原状復帰〕
八締約国の間において,一般的な平和を利し,維持するため,そして特にイタリアの平穏のため,本条約によってなされる執行と処置は別として,それをしたあとはすべてのことは戦争前にあった状態にとどまるものとすることに決着され合意された.

第十六条〔アシエント〕
一七一三年三月二十六日にマドリードにおいて調印された黒人貿易のためのアシエントの条約,そして前記条約の一部をなす年ごとの船の条項は,〔もともと遅くとも一七四六年には失効するはずになっていたが,〕このたびの戦争の開始以来その享受が中断された四年の分は本条約によって特に確認される.それは前記戦争以前に執行されていた,あるいはされるべきであったのと同じ土台の上に,同じ条件のもとで執行されるものとする.

第十七条〔ダンケルク〕
ダンケルクは陸側においては防備を施されたまま,現在あるのと同じ状態にとどまるものとする.そして海側については,以前の諸条約の基準にとどまるものとする.

第十八条〔未解決の諸問題〕
英国国王陛下がハノーヴァー選帝侯としてスペイン王室に対して有する金銭的な要求,〔ベルギーの〕サンユベール大修道院に関する意見の相違,エノーの包領,ネーデルラントにおいて新たに設立された事務局,プファルツ選帝侯の主張,そして本条約に記載されるよう規定されることができなかった他の諸条項は,その目的のために両陣営より任命される委員によって,あるいは関係列強によって合意される他のやり方において,ただちに友好的に調整されるものとする.

第十九条〔イギリスの王位継承〕
一七一八年八月二日にロンドンにおいて締結された四国同盟の条約における,大ブリテン王国の王位継承を在世中の英国国王陛下の王朝に保証することを含み,大ブリテン国王の称号を帯びた人物およびその男女の子孫に関係しうるあらゆる備えを与えた第五条は,本条項によって,それがここに完全な形で挿入されているかのごとく,特に確認され,更新される.

第二十条〔ドイツの領主としてのイギリス王の参加〕
英国国王陛下は,自らもその世継ぎと後継者も,ブラウンシュヴァイク・リューネブルク選帝侯として,そしてドイツにおける前記陛下のすべての諸邦と所領〔の名〕においても,本講和条約に含められ,保証される.

第二十一条〔オーストリアの継承権〕
本条約に関わりのあるすべての列強は,一七一三年四月十九日の国本勅諚を保証しており,亡き皇帝カール六世の〔遺領〕全体の相続を,前記国本勅諚によって確立された順位に従って在世中のその娘ハンガリーおよびボヘミア女王兼皇后およびその子々孫々に認めているが,それを可能な限り完全なやり方で更新する.しかしながら,前記皇帝あるいは前記皇女によってすでになされた割譲および本条約によって規定される割譲は別とする.

第二十二条〔シュレジエン,グラーツの帰属〕
プロイセン国王陛下が現在領有するシュレジエン〔シレシア〕公爵領,グラーツ〔クロツスコ〕伯爵領はすべての列強,参加国,本条約の締約国によってその君主に対して保証される.

第二十三条〔条約の執行〕
本条約を締約し,関わりをもつすべての列強は,それぞれ相互にその執行を保証する.

第二十四条〔批准書の交換〕
しかるべき有効な形で処置された本条約の厳粛なる批准は,その調印の日から起算して一か月のうちに,可能であればより早く,このエクス・ラ・シャペルの市において全八者間で交換されるものとする.

その証人として下に署名せる我々,特命大使および全権使節は,その名前と全権委任状の効力とによって,我々の手で本平和条約に署名し,我々の紋章の印章をそこに捺させた.
一七四八年十月第十八日,エクス・ラ・シャペルにて作成.

(署名)

(捺印場所)サンドイッチ   (捺印場所)W・ベンティンク
(捺印場所)T・ロビンソン  (捺印場所)G・A・ハッセラール
(捺印場所)サンセヴラン・ダラゴン(捺印場所)J・V・ボルセレ
(捺印場所)ラ・ポルト・デュ・テイユ(捺印場所)O・Z・ヴァン・ハーレン

別記条項
第一条〔称号〕
締約列強諸国が交渉の過程で全権委任状あるいは他の証書において用いた,あるいは本条約の前文において用いられている称号のいくつかは一般に承認されているものではなく,それによって前記締約国のいずれに対しても,いかなる害をもきたすものではないこと,そしてそれぞれの側において前記交渉の場で,また本条約において称号が採用され,あるいは省略されたことは引用されたり,それから何らかの判断が導かれたりすることはないものとすることが合意された.

第二条〔使用言語〕
フランス語が本条約のすべての写しにおいて用いられ,また参加の証書に用いられるかもしれないことは,主張されたり,判断の根拠とされたり,あるいは締約国のいずれかを何らかの形で害したりするものではないことが合意され,決定された.今後については各国とも,同様の条約や証書についてフランス語以外の言語の写しを与え,受けることをならわしとしており,またその権利がある諸国に関する場合,またはその諸国が起草する場合,これまで守られてきており,また守られるべきである慣習に従うものとする.
本条約,そしてそれへの参加は,それでもなおあたかも前述した習慣に従っていた場合と同じ効力をもつものであり,本別記条項もそれらが条約に挿入されていた力を同様にもつものとする.

その証人として下に署名せる我々,英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命大使および全権使節は,本別記条項に署名し,我々の紋章の印章をそこに捺させた.
一七四八年十月第十八日,エクス・ラ・シャペルにて作成.

(署名)

(捺印場所)サンドイッチ   (捺印場所)W・ベンティンク
(捺印場所)T・ロビンソン  (捺印場所)G・A・ハッセラール
(捺印場所)サンセヴラン・ダラゴン(捺印場所)J・V・ボルセレ
(捺印場所)ラ・ポルト・デュ・テイユ(捺印場所)O・Z・ヴァン・ハーレン


英国国王陛下の全権委任状

国王ジョージ
ジョージ二世,神の恩寵により大ブリテン,フランスおよびアイルランドの国王で,信仰の擁護者,ブラウンシュヴァイク・リューネブルク公爵,神聖ローマ帝国の筆頭財務官および選帝侯等々.本状を手にされるすべての人にご挨拶申し上げる.幸福にも着手された全般的な講和を完全なものとするため,そしてそれをできるだけ早く望ましい決着に導くため,余は二名の適格な人物に本会議における余の特命全権大使の称号と性格を与えることを適当と考えるに至った.ゆえにご通知申し上げる.余は,余の信頼する,そしてよく敬愛すべき卿サンドイッチ伯ジョンならびに余の信頼する,そしてよく敬愛するトマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,余のドイツ皇后およびハンガリーおよびボヘミアの女王への全権使節―の熱意,判断,技量,そして重要な事項を扱う手腕への完全なる信頼をもつものであり,両人を指名し,就任させ,権限を与え,任命したものであり,余は本状によって両人を余の真の,疑いなき特命大使,使節,委員,代官,代理人,全権に指名し,就任させ,権限を与え,任命し,両名一組にあるいは各人にありとあらゆる権力,権威ならびに余の一般的および個別的な命令(ただし,一般は個別を損なわず,その逆もないものとする)とを与えた.両名はエクス・ラ・シャペルあるいは上述された平和と平穏のための条約と交渉が行なわれるであろういかなる場所にも赴き,そこで余のために余の名において,単独で別個に,あるいは合同して集団で関係する諸君主および諸邦から同じ権力と権威を与えられた大使,委員,代官,全権とともに,会合して会議や協議を行ない,そして確固として安定した平和,そして真摯な友好とよき調和とを再びうち立てるために必要なことに関し,彼らと協議し,取り引きし,相談し,結論する.そしてそのようにして合意され,結論されたあらゆることに,余のために余の名において,署名する.そしてそのようにして合意され,結論されたことに関する条約あるいは諸条約を作成し,そして前述の大業の完遂に関連するかもしれない他のあらゆる事項について処置する.それは広いしかたと形においてであり,あたかも余自身がもし臨席していたら行なっていた場合と同じ力と有効性をもつ.余は余の王としての言葉において,余の前記特命全権大使あるいはそのいずれかによって処置され,締結されたことはいかなることでも最も完全な形で同意され,承認され,受け入れられるであろうこと,そしていかなる人物にも,全体であろうと部分的にであろうとそれを蹂躙したりそれに反する行ないをしたりすることを決して許さないであろうことを約束するものである.その証のため,余は,余自らの手によって本状に署名し,余の英国の国璽を捺さしめた.余の治世第二十二年の一七四八年,七月/八月第三十/十日,余のヘレンハウゼンの宮殿にて発給.


フランス国王陛下の全権委任状

ルイ,神の恩寵によりフランスおよびナヴァールの王.本条を目にするすべての人にご挨拶申し上げる.余は大いなる有益な和平の偉業の決着および公共の平穏の再建を加速するために余にあたう何事も惜しまぬことを望んでおり,余の大切にして敬愛すべき卿アラゴンのサンセヴラン伯爵にして勲爵士,およびド・ラ・ポルト・デュ・テイユ氏,国王の諸評議会における顧問官,官房および執務室付き秘書官,余の最愛の息子王太子の管理の秘書官を完全に信頼している.これらの大義および余をそれに向けて動かす他のもっともな考察のため,両人に辞令を発し,任務を授けたものであり,そして余の手によって署名された本状により両人に辞令を発し,任務を授ける.そして彼ら両人の一組,ならびに他方が不在ないしは不調の場合にはその一方に個別に,余の名において,特命全権大使の資格において和平締結のためにエクス・ラ・シャペルに実際に集まった,主君による有効なる形の全権委任状を携えた大使や使節と協議し,両名がともに,あるいは前述の不在ないしは不調の場合にはその一方がよいと考えるような条約,条項,協定,そして主として確固とした平和と,これまで戦争にあった余と諸君主および諸邦,あるいは交戦中の列強の補佐との間の完全なる融和を再びうち立てるべき最終条約を決着し,締結し,署名する全権,委任,個別命令を与え〔ることにし〕たものであり,与える.国王としての信義と言葉において,前記サンセヴラン・ダラゴン伯および前記ド・ラ・ポルト・デュ・テイユ氏あるいは前記した他方が不在ないし不調の場合にはその一方が本全権委任状の効力により規定し,約束し,署名したいっさいについて,受け入れ,確固としてゆるがないものとして維持し,逐一完遂,執行するものであり,いかなる大義のためであろうといかなる口実のもとであろうと,決してそれに違背することなく,また違背されることも許さないこと,そしてまた批准の書状が有効なる形で送られるようはからい,合意される期限内に交換されるようはからうことを約束する.それはまさに余の望むところである.その証として,余は余の玉璽を本状に捺さしめた.主の年一七四八年,余の治世の第三十四年,十月の第七日,フォンテーヌブローにて発給.
     (署名)ルイ
   (そして下のほうに)
      国王により,
      (署名)ブリュラール
そして国璽によって黄蝋で封される.


連邦議会の全権委任状

ネーデルラント連邦共和国の連邦議会.本状を目にするすべての人々にご挨拶申し上げる.現在キリスト教世界をさいなんでいる戦争がよき平和によって終結するのを目にすることを我々は何にも増して熱心に望んでおり,エクス・ラ・シャペルの市が協議の地として合意されたことに鑑み,我々は,我々にあたう限り,あまりに多くの地方が荒廃させられ,あまりに多くのキリスト教徒の血が流されることに終止符を打たんとする同じ望みにより,それに向けて我々に割り当てられたあらゆることを貢献し,この目的のため,前記会合に我々の議会のうちから,公務に対する知識と経験,我々の国家の福利に対する愛着の両面からそれぞれ実を示した数名を派遣する意欲をもちつづけていた.
@ウイリアム氏―ベンティンク伯,ローンおよびペンドレヒトの領主,ホラント・西フリースラント州の門閥貴族の一員,レイデン大学の評議員,等々―およびAフレデリック・ヘンリー氏―ワッセナール男爵,カトウェイクおよびザントの領主,ホラント・西フリースラント州の門閥貴族の一員,ラインラントの治水管理局長等々―,Bヘラルト・アルノルト〔前文ではアルナウト〕・ハッセラール氏―アムステルダム市の参事会員で評議員,東インド会社理事―,Dオンノ・ツウィール・ヴァン・ハーレン氏―ウェストステリンフウェルフの判事,フリースラント州の評議員代理,我々のもとで軍務につくスイスおよびグラウビュンデンの兵全体の兵站総監― ―それぞれにホラント・西フリースラント,フリースラント各州の我々の議会および国務評議会における代表―は,我々のもとでいくつかの重要な任務においてめざましい功績を上げ,その際忠誠,精励,事態運営の手際のよさを示した.これらの大義および我々をそれに向けて動かす他のもっともな考察のため,前記のベンティンク,ワッセナール,ハッセラール,ヴァン・ハーレンの各氏に辞令を発し,任務を授け,代理としたものであり,本状により各人に辞令を発し,任務を授け,代理とし,我々の特命全権大使の資格において和平のためにエクス・ラ・シャペルに行き,その地においてフランス国王陛下およびその同盟者の十分な全権委任状を携えた特命全権大使と協議し,現在の戦争の原因となっている意見の相違を終結させて静める方法について交渉するための全権,委任,個別命令を与え〔ることにし〕たものであり,与える.そして我々の前記特命全権大使は全員ともに,あるいは他の者が病気その他の障害によって不在の場合にはその一部またはそのうちの一人は,同じ件につき合意し,よくて確実な平和条約を締結し,調印し,そして一般に彼らが前記した平和の成就に必要と考えるすべてのことを処置し,交渉し,約束し,承認し,そして一般にもし我々が臨席していたら我々がしたであろうすべてのことを行なう権限をもつものとする.その目的のためには本状に含まれていないより個別な委任状と命令が必要であったとしても.我々は,我々の前記特命全権大使,あるいは他の者が病気,不在,その他の障害の場合その一部またはその一人によって規定され,約束され,承認されたことは,誠実に善意をもって受け入れ,確固としてゆるがないものとして維持し,それに対して我々の批准の書状が,彼らが我々の名で届けると約束する期限内に送られるようにはからうことを約束する.一七四八年,三月の第八日,ハーグにて,我々の議会において我々の国璽,我々の議会の議長の花押,そして我々の筆頭書記官の署名のもとに発給.
     (署名) H・ヴァン・イッセルムデン,Vt.

(下のほうに)

前記連邦議会の諸閣下の命令にて,
     (署名) H・ファーゲル

連邦議会の全権委任状

ネーデルラント連邦共和国の連邦議会.本状を目にするすべての人々にご挨拶申し上げる.現在キリスト教世界をさいなんでいる戦争がよき平和によって終結するのを目にすることを我々は何にも増して熱心に望んでおり,エクス・ラ・シャペルの市が協議の地として合意されたことに鑑み,我々は,我々にあたう限り,あまりに多くの地方が荒廃させられ,あまりに多くのキリスト教徒の血が流されることに終止符を打たんとする同じ望みにより,それに向けて我々に割り当てられたあらゆることを貢献する意欲をもちつづけてきており,この目的のため,これまでにすでに前記会合に我々の議会のうちから,公務に対する知識と経験,我々の国家の福利に対する愛着の両面からそれぞれ実を示した数名を派遣している.すなわち,@ウイリアム・ベンティンク氏,ローンおよびペンドレヒトの領主,ホラント・西フリースラント州の門閥貴族の一員,レイデン大学の評議員,等々―およびAフレデリック・ヘンリー氏―ワッセナール男爵,カトウェイクおよびザントの領主,ホラント・西フリースラント州の門閥貴族の一員,ラインラントの治水管理局長等々―,Bヘラルト・アルノルト・ハッセラール氏―アムステルダム市の参事会員で評議員,東インド会社理事―,Dオンノ・ツウィール・ヴァン・ハーレン氏―ウェストステリンフウェルフの判事,フリースラント州の評議員代理,我々のもとで軍務につくスイスおよびグラウビュンデンの兵全体の兵站総監― ―それぞれにホラント・西フリースラント,フリースラント各州の我々の議会および国務評議会における代表―である.そして我々は現在,第五の人物をこの同じ目的のために上述の四名に加えることを適当と考えるに至った.Cヤン氏―ヴァン・ボルセレ男爵,ゼーラントの筆頭貴族かつ州議会,評議会,海軍委員会における貴族代表,東インド会社理事,そして前記ゼーラント州派遣の我々の議会における代表―は,我々のもとでいくつかの重要な任務においてめざましい功績を上げ,その際忠誠,精励,事態運営の手際のよさを示した.これらの大義および我々をそれに向けて動かす他のもっともな考察のため,前記のヴァン・ボルセレ氏に辞令を発し,任務を授け,代理としたものであり,本状により同人に辞令を発し,任務を授け,代理とし,我々の特命全権大使の資格において和平のためにエクス・ラ・シャペルに行き,その地においてフランス国王陛下およびその同盟者の十分な全権委任状を携えた特命全権大使と協議し,現在の戦争の原因となっている意見の相違を終結させて静める方法について交渉するための全権,委任,個別命令を与え〔ることにし〕たものであり,与える.
そして我々の前記特命全権大使は前記した我々の特命全権大使ベンティンク,ワッセナール,ハッセラール,ヴァン・ハーレンの各氏とともに,あるいは病気その他の障害のため他の者が不在の場合にはその一部または一人とともに,あるいは単独でさえも,同じ件につき合意し,よくて確実な平和条約を締結し,調印し,そして一般に彼が前記した平和の成就に必要と考えるすべてのことを処置し,交渉し,約束し,承認し,そして一般にもし我々が臨席していたら我々がしたであろうすべてのことを行なう権限をもつものとする.その目的のためには本状に含まれていないより個別な委任状と命令が必要であったとしても.我々は,前記ヴァン・ボルセレが他の四名の特命全権大使とともに,あるいは他の者の病気,不在,あるいは他の障害の場合にはその一部または一人とともに,あるいは同人単独ででさえも,規定され,約束され,承認されたことは,誠実に善意をもって受け入れ,確固としてゆるがないものとして維持し,それに対して我々の批准の書状が,同人が我々の名で届けると約束する期限内に送られるようにはからうことを約束する.一七四八年,四月の第二十五日,ハーグにて,我々の議会において我々の国璽,我々の議会の議長の花押,そして我々の筆頭書記官の署名のもとに発給.
     (署名) H・V・ハメルステル,Vt.

(下のほうに)

前記連邦議会の諸閣下の命令にて,
     (署名) H・ファーゲル

ハンガリー女王兼皇后の参加証書

最も神聖にして分かちがたき三位一体,父と子と精霊の名において

関係する,あるいは関係するかもしれないすべての人々に知らしむべし.
英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命全権大使らがこのエクス・ラ・シャペルの市にて本十月の十八日に,彼らの間で本年の四月三十日に合意され,締結された予備条約の基礎の上に,全般的かつ最終的な平和条約および二つの別記条項を締結して調印した.その条約および別記条項の文面は次の通りである.
[挿入がなされる]
そして前記特命全権大使らはハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后の特命全権大使に,陛下の名においてそれに参加するよう友好的なしかたで招いた.
下記の大使ら,すなわち,神の恩寵により大ブリテン国王たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世の側からはジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびサー・トマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節:神の恩寵によりハンガリーおよびボヘミアの女王にして皇后たる最もやんごとなく最も力ある君主マリア・テレジアの側からはヴェンツェスラス・アントニー卿―カウニッツ・リートベルク伯,エッセン,シュテーデスドルフ,ヴィットムント,アウステルリッツ,フングリッシュブロート,ヴィテ等々の領主にして皇帝皇后両陛下への現任の枢密顧問官は,彼らが互いにやりとりした彼らの全権委任状(その写しは本証書の末尾に添付されている)の効力により,次のことに合意した.
ハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下は,可能な限り早く,ヨーロッパの安息を再建し,確固たるものとするのに貢献することを望んでおり,本証書の効力により,前記条約および二つの別記条項に,いかなる保留も例外もなく,加わる.そこにおいて前記陛下に約束されていることがすべて善意のもとに履行されると固く信じてのことである.同時に,陛下は同じようにこの上ない誠意をもって陛下に関係するあらゆる条項,節,条件を実行することを宣言し,約束するものである.
英国国王陛下は同様に,このハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后の参加を受け入れ,同じようにいかなる保留も例外もなく,前に挿入されている前記条約や二つの別記条項に含まれるあらゆる条項,節,条件を実行することを約束する.
本証書の批准書は,このエクス・ラ・シャペルの市において,本日より起算して三週間のうちに交換されるものとする.
その証として,我々英国国王陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后の特命全権大使は,本証書に署名し,それに我々の紋章の印章を捺した.
一七四八年十月二十三日,エクス・ラ・シャペルにて作成.
   (捺印場所)V・A・フォン・カウニッツ・リートベルク


ハンガリー女王兼皇后の全権委任状

余マリア・テレジア,神の恩寵によりローマ,ドイツ,ハンガリー,ボヘミア,ダルマティア,クロアティア,スラヴォニア等々の皇后にして女王,オーストリア女大公,ブルグント,ブラバント,ミラノ,スティリア〔シュタイアーマルク〕,カリンシア〔ケルンテン〕,カルニオラ,マントヴァ,パルマ,ピアチェンツァ,リンブルフ,ルクセンブルク,ヘルダーラント,ヴュルテンベルク,上下シュレジエン女公爵,スワービア〔シュヴァーベン〕およびトランシルヴァニア女侯爵,神聖ローマ帝国,ブルゴヴィア〔ブルガウ〕,モラヴィア,上下ルサティア〔ラウジッツ〕の女侯爵,ハプスブルク,フランドル,ティロル,〔アルザスの〕フェレット,〔スイスの〕キュブルク,〔イタリアの〕ゴリツィア,グラディスカ,アルトワの女伯爵,ナミュールの女伯爵,スラヴォニア辺境,ポートナオン,サラン,メヘレン等々の女領主,ロレーヌおよびバール公妃,トスカナ大公妃等々は,本状によって通知し,証明する.ブレダで開かれた会議は解散され,エクス・ラ・シャペルにてこのたびの戦争に参加している各君主からの,彼らの間にもちあがった意見の相違を終結させ,平和を回復する手段について合意する権限を与えられた使節らの間で協議が行なわれることになっていることを知らされたゆえ,そして余としてもかほどに望ましい帰結を可能な限り早く,最も確実にして有効なしかたで得るために余にできることはいかなることでもすることは何にも増して心にかけていることであるため,時を移さずそのように有益な偉業を推進するのに余の勤めをなすべく,その地に余の全権使節を送る.さらに,それらの使節には余の大使としての資格も与えた.したがって,余の現任の枢密顧問官にして神聖ローマ帝国伯爵ヴェンツェスラス・アントニー・フォン・カウニッツ・リートベルク,またタデウシ―ライシャハの自由男爵,余の官房侍従,前オーストリア政府の顧問官,そして余の連邦共和国の連邦議会の諸閣下への使節―のいくたびの試練で実証されてきた忠節,実務経験,英知を完全に信頼し,その両名,そしておのおのに余は余の大使としての資格ならびに全権を与えたものである.それに従い,その権限は,本状によって両名,そして他方が不在ないしは故障の場合にはそのおのおのに,可能な限り広いやり方において次のように与えてある.両名あるいは他方が不在または故障の場合にはその一方が余の同盟国およびその使節らと共同で努力し,このたびの戦争において余や余の同盟国に対する陣営に参加している他の君主たちの同様の全権委任状を携えた使節と友好的な協議をもち,それに関係するどのような問題にでも合意し,合同であろうと個別にであろうとそのようにして合意されたどのようなことにでも調印し,捺印することができるよう,一言でいえば,もし余自身が臨席していたらできるようなあらゆることを余の名においてできるように.余の皇后としての,女王としての,女大公としての言葉において,余の前述した全権使節―その上余の大使としての資格も与えられた―がなし,締結し,調印したあらゆる証書一つ一つに同意し,承認し信義をもって実行することを約束する.その証として,またそれがより大いなる力をもつため,余は本全権委任状に余自らの手で署名し,余の皇后,女王,女大公としての印章をそれに捺すことを命令した.一七四七年十二月十九日,余の治世第八年目,余の都ウイーンにて発給.
     (署名)マリア・テレジア
C・ウルフェルト伯爵
神聖なる女王兼皇后陛下の命令により,     ヨハン・クリストフ・バルテンシュタイン


スペイン国王陛下の参加証書

最も神聖にして分かちがたき三位一体,父と子と精霊の名において

必要であるべき,または必要であるかもしれないすべての人々に知らしむべし.英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命全権大使らがエクス・ラ・シャペルにて本年十月の十八日に,最終的な平和条約と二つの別記条項を締結し,調印した.その条約および別記条項の文面は次の通りである.
[挿入がなされる]
そして前記特命全権大使らはスペイン国王陛下の特命全権大使に,前記陛下の名においてそれに参加するよう友愛をもって招いた.下記の大使ら,すなわち,神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王,ブラウンシュヴァイク・リューネブルク公爵,神聖ローマ帝国の筆頭財務官にして選帝侯等々たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世の側からはジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびトマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節:そして神の恩寵によりスペインおよびインディアスの国王たる最もやんごとなく最も力ある君主フェルナンド六世の側からはドン・ハコボ卿―マソネ・デ・リマ・イ・ソット・マヨール,前記スペイン国王陛下の官房付き侍従にしてその軍隊の少将―は,やりとりした彼らの全権委任状(その写しは本証書の末尾に添付されている)の効力により,次のことに合意した.
スペイン国王陛下は,可能な限り早く,ヨーロッパの平和を再建し,安定させるのに貢献し,協力することを望んでおり,本証書の効力により,前記条約および二つの別記条項に,いかなる保留も例外もなく,加わる.そこにおいて前記陛下に約束されていることがすべて誠意をもって履行されると固く信じてのことである.同時に,陛下はこの上ない誠意をもって陛下に関係するあらゆる条項,節,条件を実行することを宣言し,約束するものである.英国国王陛下は同様に,このスペイン国王陛下の参加を受け入れ,同じようにいかなる保留も例外もなく,上に挿入されている前記条約や二つの別記条項に含まれるあらゆる条項,節,条件を実行することを約束する.
本証書の批准書は,このエクス・ラ・シャペルの市において,本日より起算して一か月のうちに交換されるものとする.
その証拠として,我々英国国王陛下およびスペイン国王陛下の特命全権大使は,本証書に署名し,それに我々の紋章の印章を捺さしめた.
一七四八年十月二十日,エクス・ラ・シャペルにて作成.
   (捺印場所)サンドイッチ   (捺印場所)ドン・ハコボ・マソネ・デ・リマ・イ・ソット・マヨール


スペイン国王陛下の全権委任状

フェルナンド,神の恩寵によりカスティリア,レオン,アラゴン,両シチリア,エルサレム,ナバラ〔ナヴァール〕,グラナダ,トレド,バレンシア,ガリシア,マヨルカ,セビリア,サルディニア,コルドバ,コルシカ,ムルシア,ハエン,アルガルヴェ,アルヘシラス,ジブラルタル,カナリア諸島,東西インド,および大洋の島々と陸地の国王,オーストリア大公,ブルグント,ブラバント,ミラノ公爵,ハプスブルク,フランドル,ティロル,バルセロナ伯,ビスケーおよびモリノ卿等々.天なる神より私の王冠に合された広大な属領の統治を信託されて以来,私の軍勢が関わっている問題に名誉ある決着をつけ,ヨーロッパに平和を与えるのに協力するために,その目的に最も資するように思われるあらゆる公正な手段を尽くしたいというのが私の最も切なる願いであるがゆえに,そしてそれぞれの使節,とりわけ現在戦争中の列強の使節が,全般的な和平という同じ見通しをもってエクス・ラ・シャペルに集まっていることを知っており,したがって私の側としても助力するために,そのような目的のために必須の忠節,熱意,理解力を備えた使節を任命することが必要であり,そなたドン・ハコボ・マソネ・デ・リマ,私の官房付き侍従にして私の軍の少将のうちにこれらの特別かつ卓越した資質を見出したがゆえに,そなたを選び,指名する.その目的は,私の特命全権大使の資格を帯び,私の名においてエクス・ラ・シャペルに赴き,その地において,あるいは取引に便利と考えられる他のいかなる場所であろうとも,私自身の代理をし,すでにその地にいる,あるいはこれから現われる現在交戦中の列強の使節あるいは使節たちと取り引きし,協議する.そしてまた同じようなやり方で,前記使節たちとしっかりした名誉ある和平に役立つ条約あるいは諸条約を締結し,調印してもよい.そしてそなたがこのようにして取り引きし,締結し,調印するものはいかなるものであろうとも,今この時点より,受け入れられ,批准されたものと認め,私の王としての言葉のもとに,あたかも私自身がそれを取り引きし,協議し,締結し,調印したかのように遵守し,履行し,同じく遵守され,履行されるようはからうことを約束する.その目的のため,私はここにそなたに,法によって求められるような最も広いやり方において,私の権威と全権を与える.その証として,私は本状の発送を手配し,私の手によって署名し,秘密の印章によって封され私の下記の顧問官―国務大臣,戦争全般,歳入,東西インド,および海洋の大臣―によって副署せしめた.一七四八年五月十二日,アランフェスにて発給.
    私こと国王
    セノン・デ・ソモ・デ・ビラ


サルディニア国王陛下の参加証書

最も神聖にして分かちがたき三位一体,父と子と精霊の名において

必要であるか,あるかもしれないすべての人々に知らしむべし.
英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命全権大使らがこのエクス・ラ・シャペルの市にて去る十月の十八日に,彼らの間で当初本年の四月三十日に合意され,決着された予備条約の基礎の上に,全般的かつ最終的な平和条約および二つの別記条項を締結して調印した.その条約および別記条項の文面は次の通りである.
[挿入がなされる]
そして前記特命全権大使らはサルディニア国王陛下の特命全権大使に,前記陛下の名においてそれに参加するよう友愛をもって招いた.
下記の大使ら,すなわち,神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世の側からはジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびトマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節:そして神の恩寵によりサルディニア国王たる最もやんごとなく最も力ある君主カール・エマヌエル三世の側からはドン・ジュゼッペ・オソリオ―最高十字勲章騎士,聖モーリスおよびラザロ軍事騎士会の大守護者,サルディニア国王陛下の英国国王陛下への特命使節―およびジュゼッペ・ボレ―カヴァンヌ伯,陛下の顧問官,そして陛下の連邦共和国の連邦議会への使節―は,互いにやりとりした彼らの全権委任状(その写しは本証書の末尾に添付されている)の効力により,次のことに合意した.
サルディニア国王陛下は,可能な限り早く,ヨーロッパの平和を再建し,安定させるのに貢献し,協力することを望んでおり,本証書の効力により,前記条約および二つの別記条項に,加わる.そこにおいて前記陛下に約束されていることがすべて誠意をもって履行されると固く信じてのことである.同時に,陛下はこの上ない誠意をもって陛下に関係するあらゆる条項,節,条件を実行することを宣言し,約束するものである.
英国国王陛下は同様に,このサルディニア国王陛下の参加を受け入れ,同じようにいかなる保留も例外もなく,上に挿入されている前記条約や二つの別記条項に含まれるあらゆる条項,節,条件を実行することを約束する.
本証書の批准書は,このエクス・ラ・シャペルの市において,本日より起算して二十五日のうちに交換されるものとする.
その証拠として,我々英国国王陛下およびサルディニア国王陛下の特命全権大使は,本証書に署名し,それに我々の紋章の印章を捺さしめた.
千七百四十八年十一月七日,エクス・ラ・シャペルにて作成.
   (捺印場所)T・ロビンソン   (捺印場所)オソリオ
                   (捺印場所)デ・ラ・カヴァンヌ


サルディニア国王の全権委任状

カール・エマヌエル,神の恩寵にしてサルディニア,キプロス,エルサレムの国王,サヴォイ,モンフェラート,アオスタ,シャブレー,ジェノヴァ,ピアチェンツァの公爵,ピエモンテおよびオネリア侯爵,イタリア,サルッツォ,スーザ,イヴレア,チェヴァ,マッロ,オリスターノ,セツァーナ侯爵,モリエンヌ,ジェノヴァ,ニース,テンダ,ロモント,アスティ,アレッサンドリア,ゴチェアーノ,ノヴァラ,トルトーナ,ヴィジェヴァーノ,ボッビオ伯爵,ヴォー,フォシニー男爵,ヴェルチェッリ,ピニュロール,タランタシア,ルメリーノおよびセジア渓谷の領主,神聖帝国のイタリアにおける親王および終身司祭等々.本状を目にするすべての人々にご挨拶申し上げる.去る四月三十日にエクス・ラ・シャペルにて調印された和平の予備条項に参加したのち,ヨーロッパにおける全般的な平和の完全なる再建に協力することを衷心より望んでおり,前述した予備条項に余と同様に調印し,参加したすべての列強も,その同じ予備条項およびそれに付随する他の証書を一つの最終的な全般的講和条約にまとめることで助力を与えるつもりになっている.これらの理由および余をそれに向けて動かす他の考慮から,余の大切にして敬愛すべき,そして信頼すべき騎士オソリオ―騎士・最高十字勲章,聖モーリスおよびラザロ軍事騎士会の大守護者,余の英国国王陛下への特命使節―およびボレ・ド・ラ・カヴァンヌ伯―余の顧問官,余の連邦共和国の連邦議会の諸閣下への使節,そしてエクス・ラ・シャペルでの会議への余の全権使節―の能力,経験,熱意,そして余のために尽くす忠誠心を信頼し,彼らを指名し,代理としたものであり,本状により彼らを余の特命全権大使に指名し,代理とするものである.そして余は彼らに,余の名において,そして余の特命全権大使の前記資格において,合同して,あるいは他方の不在,病気その他の故障の場合にはそのうちの一人で,前述した列強のその目的のための委任状を携えた特命全権大使それぞれとともに,合同してあるいは個別に,ヨーロッパにおける全般的な平和を確かなやり方で再建するために彼らが適当と考える最終的な平和条約,条項,協定,証書を作成,締結,調印する,あるいは同じ目的のためにすでに締結,調印されているものに参加する権限,委任,個別命令を与え〔ることにし〕たものであり,与える.それらの場面において彼らが余自身が臨席していたとしたらそうするであろうと同じ権威をもって行動することを望むむのであり,たとえ本状に含まれていないより個別の命令を要求するような何事かが起こったとしてもである.国王の信義と言葉のもとに,上に述べられた余の特命全権大使騎士オソリオおよびド・ラ・カヴァンヌ伯によってなされ,合意され,規定され,調印されたことすべてについて,違背することなく,また直接間接を問わず,いかなる原因であろうといかなる口実のもとであろうとも,それに対するいかなる違背も許さず,遵守し,遺漏なく遵守させることを,そしてまたしかるべき形でのその批准の書状を,合意された期間内に交換されるように発送されるべくはからうことを約束するものである.その証として,余は本状に余の手によって署名し,余の外務筆頭大臣D・レオポルド・ド・カレット・ド・ゴルゼーニュ侯爵によって副署せしめ,そして余の紋章の秘密の印章をそれに捺さしめた.主の年千七百四十八年,余の治世十九年,八月の二十四日,トリノにて発給.
        (捺印場所)C・エマヌエル
    (下のほうに)  カレット・ド・ゴルゼーニュ


モデナ公爵の参加証書

最も神聖にして分かちがたき三位一体,父と子と精霊の名において
必要であるか,あるかもしれないすべての人々に知らしむべし.

英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命全権大使らがこのエクス・ラ・シャペルの市にて今月十月の十八日に,彼らの間で当初本年の四月三十日に合意され,締結された予備条約の基礎の上に,全般的かつ最終的な平和条約および二つの別記条項を締結して調印した.その条約および別記条項の文面は次の通りである.
[挿入がなされる]
そして前記特命全権大使らは神の恩寵によりモデナ,レッジオ,ミランドラの公爵等々たる最もやんごとなき殿下フランチェスコ三世の全権使節に,前記最もやんごとなき殿下の名においてそれに参加するよう友愛をもって招いた.
下記の全権大使および使節ら,すなわち,神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世の側からはジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびトマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節:そして最もやんごとなきモデナ公爵殿下の側からはモンツォーネ伯―公爵の国務評議員であり公爵に仕える大佐であり,そのフランス国王陛下への全権使節―は,互いにやりとりした彼らの全権委任状(その写しは本証書の末尾に添付されている)の効力により,次のことに合意した.
最もやんごとなき殿下モデナ公爵は可能な限り早く,ヨーロッパの平和を再建し,安定させるのに貢献し,協力することを望んでおり,本証書の効力により,前記条約および二つの別記条項に,いかなる保留も例外もなく加わる.そこにおいて前記最もやんごとなき殿下に約束されていることがすべて誠意をもって履行されると固く信じてのことである.同時に,殿下はこの上ない誠意をもって殿下に関係するあらゆる条項,節,条件を実行することを宣言し,約束するものである.英国国王陛下は同様に,この最もやんごとなきモデナ公爵殿下の参加を受け入れ,同じようにいかなる保留も例外もなく,上に挿入されている前記条約や二つの別記条項に含まれるあらゆる条項,節,条件を履行することを約束する.
本証書の批准書は,このエクス・ラ・シャペルの市において,本日より起算して三週間のうちに交換されるものとする.
その証拠として,我々英国国王陛下および最もやんごとなきモデナ公爵殿下の特命大使および全権使節は,本証書に署名し,それに我々の紋章の印章を付さしめた.
一七四八年十月二十五日,エクス・ラ・シャペルにて作成.
(捺印場所)T・ロビンソン (捺印場所)モンツォーネ伯


モデナ公爵の全権委任状

フランチェスコ,モデナ,レッジオ,ミランドラ公爵.
このたびの戦争に関わっている列強の間の全般的な平和のためのエクス・ラ・シャペルで開かれることになっている会議において,余に関係する内容が取り引きされることになっており,そのために余が安心して頼れる能力,忠誠心,英知をもつ使節をその地にもつことが必要であるがゆえに,この場面において,モンツォーネ伯―余の国務評議員であり,フランス国王陛下の宮廷での全権使節であり,余に仕える大佐―をおいて大いなる信頼をもって用いることのできる人物はいないと考えるに至った.その理由により,余は彼を前記会議における余の全権使節に選び,代理とするものである.そのために彼には,その地において余の名において余に関するあらゆる事項について取り引きし,彼が余のために最も好都合と判断するいかなることでも余に代わって約束し,同意し,締結し,規定し,調印する権能,権威,全権を一般および個別命令とともに与え,認める.この目的のために,前記会議に出席する関係するあらゆる宮廷からの全権使節が彼を余の全権使節として受け入れ,承認することを望むものである.君主の信義と言葉のもとに,同全権使節によって締結され,受け入れられ,規定されたすべてのことを確定して批准されたものと考え,是認し,遵守することを約束するものである.
その証として,余は本状に署名し,余の大臣の一人によって副署されるものであり,余の印章を捺した.一七四八年この十一月三十日,マルセイユにて発給.
     (署名)フランチェスコ
    (そしてすぐ下に副署) ド・ボンディリ


ジェノヴァ共和国の参加証書

最も神聖にして分かちがたき三位一体,父と子と精霊の名において

必要であるか,あるかもしれないすべての人々に知らしむべし.
英国国王陛下,フランス国王陛下,連邦共和国の連邦議会の諸閣下の特命全権大使らがこのエクス・ラ・シャペルの市にて今月十月の十八日に,彼らの間で当初本年の四月三十日に合意され,決着された予備条約の基礎の上に,全般的かつ最終的な平和条約および二つの別記条項を締結して調印した.その条約および別記条項の文面は次の通りである.
[挿入がなされる]
そして前記特命全権大使らは最もやんごとなきジェノヴァ共和国の全権使節に前記最もやんごとなき共和国の名においてそれに参加するよう友愛をもって招いた.
下記の大使および全権使節,すなわち,神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王たる最もやんごとなく最も力ある君主ジョージ二世の側からはジョン―サンドイッチ伯,ヒンチンブルック子爵,セントニーツのモンタギュー男爵,イングランド貴族,海軍省の第一委員,王国の摂政委員会の一員,陛下の連邦共和国の連邦議会への全権使節―およびトマス・ロビンソン―最も名誉あるバース勲爵士団の一員,陛下のローマ皇帝陛下およびハンガリーおよびボヘミアの女王兼皇后陛下への全権使節:そして最もやんごとなきジェノヴァ共和国の側からはフランチェスコ・マルキス・ドーリアは,互いにやりとりした彼らの全権委任状(その写しは本証書の末尾に添付されている)の効力により,次のことに合意した.
最もやんごとなきジェノヴァ共和国は可能な限り早く,ヨーロッパの平和を再建し,安定させるのに貢献し,協力することを望んでおり,本証書の効力により,前記条約および二つの別記条項に,いかなる保留も例外もなく加わる.そこにおいて前記最もやんごとなき共和国に約束されていることがすべて誠意をもって履行されると固く信じてのことである.同時に,共和国はこの上ない誠意をもって共和国に関係するあらゆる条項,節,条件を実行することを宣言し,約束するものである.
英国国王陛下は同様に,この最もやんごとなきジェノヴァ共和国の参加を受け入れ,同じようにいかなる保留も例外もなく,上に挿入されている前記条約や二つの別記条項に含まれるあらゆる条項,節,条件を履行することを約束する.
本証書の批准書は,このエクス・ラ・シャペルの市において,本日より起算して二十五日のうちに交換されるものとする.
その証拠として,我々英国国王陛下および最もやんごとなきジェノヴァ共和国の特命大使および全権使節は,本証書に署名し,それに我々の紋章の印章を捺さしめた.
一七四八年十月二十八日,エクス・ラ・シャペルにて作成.
(捺印場所)T・ロビンソン
    (捺印場所)F.cois M.ie ドーリア


ジェノヴァ共和国の全権委任状


ジェノヴァ共和国の元首,執政,知事.
我々の貴族フランチェスコ・マリア・ドーリアの経験,忠誠心,熱意を重視し,我々は彼をアキスグラーノ別名エクス・ラ・シャペルにおける,あるいは今後和平会議が開かれたり場所を移されたりするかもしれない土地での和平会議における我々の全権使節として選び,代理とした.そして我々は,その地において我々の名において我々に関する事項について取り引きし,我々に代わって,我々の利に最もかなうと考えるいかなることにでも合意し,締結し,規定し,調印する広い権能および全権を一般および個別命令とともに同人に与え,授与〔することに〕し,同人に与え,授与するものである.それも,本状よりもより完全で個別な命令が必要となるかもしれないが,もし我々自身が臨席していたらしたであろうと同じやり方においてである.この目的のため,前記会議に臨席する関係するあらゆる宮廷の全権使節が彼を我々の全権使節として受け入れ,承認することを望む.主権者の信義と言葉において,同人によって本全権委任状の効力により締結され,受け入れられ,規定され,調印されたすべてのことを確定され,批准されたものとみなし,遵守することを,そしてまた有効な形での我々の批准の証書を合意された期限内に交換できるよう発送することを約束する.
その証として,本状は我々の下記の国務大臣によって署名され,我々の通常の印章を捺されるものとする.
一七四八年この三月一日,我々の王宮にて発給.
     (捺印場所)C・ジュゼッペ・マリア・セルトリオ
                  国務大臣

原文はフランス語.翻訳にあたってのテキストはA Collection of Treaties between Great Britain and Other Powersの英語訳を利用し,一部Recueil des Traites de la France の原文を参照した.

(C) 2003.9. 友清理士; 訳文の最終修正日2005.1.18
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