ブレダ宣言
(王政復古に向けたチャールズ二世の宣言, 1660)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

ブレダ宣言:Declaration of Breda
清教徒革命(ピューリタン革命)によって亡命の身にあったチャールズ二世が,1660年4月,王政復古に向けて発した宣言.革命・共和制時代の言動に関する大赦などを約束したこの宣言をイングランドの仮議会が受け入れ,王政復古が確定した.

国王チャールズ

神の恩寵によりイングランド,スコットランド,フランス,アイルランドの国王,信仰の擁護者等々たるチャールズ.身分や地位を問わず,余のすべての忠実なる臣民に挨拶申し上げる.

もし,王国全体に広まりたる全般的な騒動と混乱によっても,すべての人が,かくも長い年月血を流すままにされた傷口がふさがれるようにとの願いや望みに目覚めなかったとすれば,余が何を言っても甲斐なきことであろう.しかしながら,この長きにわたった沈黙ののち,余は,余がいかにそれに向けて貢献することを望んでいるかを宣言することが余の義務であると考えるに至った.そして神と自然とが余のものとしたもうた権利の回復をほどなく獲得するという望みを捨て去ることが決してできず,かくも長く悲惨と苦難を味わってきた余ならびに余の臣民たちへのあわれみにより,神が余の民にできうる限り流血や損害なく,平穏にして平和裡にその余の権利の回復を余に与えたもうことを,日々天なる神に懇願している.余が余のものである権利を享受したいと望むのは,国土全体にわたる完全かつ全体的な裁きの施行により,そして必要でありそれに値するところには余の慈悲をさしのべることにより,余の臣民が法により彼らのものである権利を享受できるのと何ら変わるところはないものである.
そして処罰に対するおそれにより,過去のことを自ら意識している者が,国王,貴族,民すべてへの正当な古来の基本的な権利の回復による静穏と幸福に反対することによって今後も罪の道に固執することがないようにするため,余はここに本状によって宣言する.余はここに,身分や地位のいかんを問わず,本状の公表後四十日以内に余の恩寵と厚意を受認し,公にそのことならびによき臣民としての忠節と臣従に復することを宣言する余のすべての臣民に(今後議会によって除外される人物のみを別として)無条件の大赦を与えることとし,求められ次第,余は余のイングランドの国璽のもとに発行する用意がある.前記した者のみを別として,余の忠実なるすべての臣民は,いかに道を誤った者であっても,本宣言によって厳粛に与えられる国王の言葉に信を寄せるがよい.本状の公表以前に余あるいは余の王たる父に対して犯されたいかなる犯罪も,彼らに対して今後決して裁きの場に上ったり問題視されたりすることはなく,その生命も自由も財産もいささかなりとも損害を受けるものではなく,あるいは(余の力のあたう限り)叱責や残りの最善の臣民から区別された扱いによって彼らの評判がいささかなりとも害されるものではないものとする.余は,今後,不和,分断,相違のあらゆる兆候や党派心が余のすべての臣民の間で完全に消滅することを望み,命ずるものであり,余の臣民には,余の保護のもとに自分たちの間での完全なる協同に至り,それにより自由な議会において余および彼らの正当なる権利についての取り決めを行なうよう勧め,促すものである.国王としての言葉において,余はその自由な議会の助言を受け入れる.
そして時代の熱意と非妥協性により宗教においていくつかの見解が生じ,それにより人々は相対立する党派心や敵愾心に関わったが,それらは今後諸見解が行動の自由のもとに統一された暁には沈静化され,よりよく理解されるものであろうから,ここに余は良心を告白する自由を宣言し,いかなる者も,王国の平和を乱すものでない宗教上の問題での見解の相違のために平穏を乱されたり,問題視されたりすることはないこと,そしてその寛容を完全に認めるために十分なる審議の上で余に提出される議会立法に同意を与える用意があることを宣言する.
そして,かくも長い年月にわたって続いた騒乱そして幾多の大いなる変転のうちに,多くの士官,兵士その他に対し,あるいはそれらの人物により多くの下賜や購入がなされており,それを現在所有する者がそれぞれの土地所有権について法的な訴訟を起こされるかもしれないことに鑑み,余は同様にそのようなすべての相違点およびそのような下賜,販売,購入に関するあらゆる事項は議会において決定されることを望むものである.議会こそが関係するすべての人々の正当なる満足を規定することができる最善の機関である.
そして余はさらに前述した目標に向けての,そしてマンク将軍の指揮下にある軍隊の士官および兵士に支払われるべきすべての未払い金の完全な支払いのためのいかなる議会立法にも同意する用意があるであろうこと,そして彼らが現在享受しているのと同様の俸給と条件において余に仕える軍隊に受け入れられることを宣言する.
余の手による署名と王璽のもとに作成.
余のブレダにおける宮廷にて.
一六六〇年四月四/十四日,
余の治世第十二年.

翻訳にあたってのテキストはMosaic Unit 10: The Declaration of Bredaを用いた.

(C) 2003.10. 友清理士; 訳文の最終修正日2003.10.5
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