ブレダ条約(第二次英蘭戦争の講和条約)(1667)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

ブレダ条約:Treaty of Breda
第二次英蘭戦争の講和条約.
疫病流行,ロンドン大火と災難続きのイングランドは本土のチャタム海軍基地近くまでオランダ艦隊に攻め込まれ,講和を余儀なくされた.

神の恩寵によりイングランド,スコットランド,フランス,アイルランドの国王,信仰の擁護者等たる最もやんごとなき力ある君主チャールズ二世およびネーデルラント連邦の連邦議会の諸閣下の間の平和と同盟の条約.一六六七年七月二十一/三十一日締結.

第一条〔友好〕
第一に,今日より,最もやんごとなき大ブリテン国王およびネーデルラント連邦共和国の連邦議会の諸閣下の間,そしてどこに位置しようとも両者に従う土地,国土,都市の間に,そして身分を問わずその臣民,住民の間には,真実の,確固として侵されざる平和,誠実な友好,より緊密で直接的な同盟と連合が確立される.

第二条〔敵対行為の中止〕
また,今後は前記国王と前記連邦議会の諸閣下の間では,あらゆる敵意,対抗心,不和,戦争は止み,廃される.両者とも陸上,海上,水上を問わずどこにおいても,とりわけそれぞれの統治下にあるすべての領域,属領,地点,自治体(いかなる状態にあろうとも)を通じて,あらゆる略奪,荒廃,危害,傷害,横行はいっさいこれを行なわず,控えるものとする.

第三条〔免責;獲得領土の確定〕
また,前記国王陛下とその臣民,または前記連邦議会とその国民のいずれかの側が戦争中,もしくはこれまでのいずれかの時点においてこうむったすべての加害,傷害,損害,損失は,いかなる大義や主張に基づくものであろうとも,忘却のうちに埋められ,あたかもそのようなことが起こらなかったかのように記憶から全面的に消し去られるものとする.
さらに,前記の平和,友好,同盟が確固としてゆるぎない基礎の上に存立するよう,そしてこの日より新たな不和や対立のあらゆる契機が断たれるよう,さらに次のことが合意された.今後,この戦争中もしくはこの戦争前のいずれかの時点において,武力もしくは他の何らかの手段によって他方より獲得し,保留していたようなあらゆる土地,島,都市,砦,地点,植民地(数はいくらでも)については,そして去る五月十日/二十日の時点でそれぞれが獲得し,保有していたものについてはいっさい例外なく,両者のそれぞれは,主権,財産の完全な権利とともに,保持し,保有するものとする.

第四条〔獲得船舶などの確定〕
加えて,戦争中もしくはこれまでのいずれかの時点において前述した当事者もしくはその国民のいずれかの手中に落ちたすべての船舶(設備品,商品を含む)およびすべての動産は,いかなる補償や返還もなく,現保有者のもとにあり,そうとどまるものとする.そのそれぞれは,そうして獲得されたものについて,議論なく,また場所,時期,内容による例外なく,権利者となり,そうとどまるものである.

第五条〔訴訟の停止〕
加えて,前記国王陛下および前記連邦議会またはその国民が他方を訴追し,もしくはこれを相手取って行動するかもしれない,もしくはしようとしているあらゆる法的措置,訴訟,主張は,いかなるものであろうと,またすでに結ばれた平和条約もしくは同盟条約のいずれかの条項によって(特に一六六二年に調印された条約の第十五条において)どのような形で抑制され,定められ,定義され,保留されたものであろうと,この戦争中もしくは以前のいずれかの時点において,前述した一六六二年の条約前でも後でもこの同盟の日までに起こった問題もしくは事項に関するものは,無効で,消し去られ,完全に撤回されたものであり,そうとどまるものとする.これに関し前記国王陛下と前記連邦議会は宣言すべきであり,ここに宣言する.本状により,あらゆる法的措置,訴訟,主張に関して,自身についてもその後継者についても,相手に対してこれ以上何ものも迫ることはせず,今後それに基づいていかなる行動もとることは許されず,またとるべきではない.

第六条〔講和後の奪取領土の返還〕
しかし,先の第三条で明示した五月十日/二十日よりあとに,または講和の締結もしくはこの条約の調印後に,いずれかの当事者が他方より土地,島,都市,砦,植民地その他の地点を奪取し獲得した場合には,そのすべてのものは,場所や時間の区別なく,善意のもとに,それらの地点において講和の締結が知られた時点と同じ状態と条件において返還されるものとする.

第七条〔遠隔地への配慮〕
しかし,当事者たちもしくはその一方がそれを取得もしくは奪取したのが遠方の地点もしくは沿岸で講和締結後ではあってもそれらの地点に報せが届く前であったと主張する船舶,商品,その他の動産の返還や清算に関してしばしば生起する問題について,今後不和や論争を避けるため,次のことが合意された.本文書の締結と公表後にいずれかの当事者の手に落ちたあらゆる船舶,商品,その他の動産は,英仏海峡もしくは英国の海については十二日以内,北海においても同じく,そして英仏海峡の出口からセントヴィンセント岬までは六週間以内,またそこから先,前記岬より遠方で等分線すなわち赤道よりこちら側では大洋も地中海も他と同様に含めて十週間以内,前記の線の境界を越えた部分は世界中八か月以内のものについては,例外なく,また時間や場所による区別なく,返還や補償についていっさい考慮することなく,現保有者のものであり,そうとどまるものとする.

第八条〔拿捕免許状の無効化〕
また,前述の放棄と規定によって,敵国船拿捕および返報としての拿捕免許状はすべて,一般的なものも個別のものも,またその効力によって将来敵対行為がなされる可能性のあるそれに類するものについても,考慮し,対処しておくべきであり,それらはこの同盟の公式な権威により禁止され,撤回されることが合意された.そしてもしいずれかの国民が,そのような撤回後にそのようなすでに撤回された免許状もしくは委任状の主張もしくは権威のもとに,講和の締結後,先の第七条に規定された期間が経過したのちに新たに害をなしたり,敵対行為を行なったりしようと企てる場合には,それらの者は公共の平和を乱す者と見なされ,取得した物の完全な返還もしくは彼らに責のある損害の完全な賠償をした上で,国際法に従って処罰される.このことは,前述のように撤回された前記免許状にこれに反するなんらかの節が挿入されていたとしても変わりない.

第九条〔戦時の敵対文書の無効化〕
アフリカやアメリカといった遠隔の地,特にギニアにおいて,貿易と航海の自由にとって有害な声明や宣言,またそれに類する文書が,双方の総督や官吏の手でその上官の名において発布,公表されてきたことに鑑み,同様にして次のことが合意された.そのようなすべての声明,宣言,前述したような文書は廃止され,今後は無効にして効力をもたないものと見なされる.そして上述した当事者の双方およびその住民や国民は,アフリカやアメリカにおいても,一六六二年の条約が署名された時点において行使し,享受していた,または権利として行使し,享受するはずであった貿易と公海の自由を行使し,享受するものとする.

第十条〔捕虜の返還〕
また,双方の捕虜は,身分,位階,条件を問わず,身代金その他の自由の代償なくすべて解放されるものとする.ただし,食事その他の合法的な理由によってできた負債は清算するものとする.

第十一条〔敵に対する合同〕
前記大ブリテン国王および前記連邦議会は,海陸を問わずいずれかの国の平和を乱さんとするすべての者,またはいずれかの属領内に居住する者で一方の公然の敵と宣言された者に対して,それぞれの同盟者およびその国民の権利,自由,免責を防衛し,保護するために連帯し,連合し,同盟した友邦であり続ける.

第十二条〔互いの利に反することの禁止〕
前記大ブリテン国王,前記連邦議会のいずれも,どこにおいても,陸上,海上,港,特区,入り江,河川を問わず,いかなる機会においてでも,他方の利に反する,もしくはいずれかの国民の利に反するいかなることも行なったり,なしたり,努めたり,交渉したり,試みたりすることはしない.そのいずれも,またその国民のいずれも,何らかの者が他方に,もしくはいずれかの国民に害もしくは不利になることをしたり,交渉したり,試みたりするのに対して,援助や助言,好意を与え,提供し,供することはせず,同意することもしない.むしろ,それぞれの属領に居住もしくは滞在する者で一方に反することを行なったり,なしたり,交渉したり,試みたりする者に対して明確に,そして実際に禁じ,反論し,現実に妨げるものとする.

第十三条〔互いの敵の支援の禁止〕
前記国王も前記共和国も,またその支配下に滞在もしくは居住するそのいずれの国民の何人も,互いの謀反人をかくまったり,これに対して助力,助言,好意などいっさいのものを与えたりすることはないものとする.むしろ,その属領のいずれかに住み,居住し,滞在するすべての者に対して,前述の謀反人に海陸を問わず,人員,船舶,武器,軍需物資その他の禁制品,または資金,補給物資,糧食を供給したり調達したりすることを明確に禁じ,有効にこれを妨げるものとする.そして本状の趣意に反して供給,調達されるあらゆる船舶,武器,軍需物資その他の禁制品,また資金,補給物資は,いかなる人物に属するものであっても,違反者のいる国に押収され,没収される.そして本状の意味に反することを意図的かつ積極的に行なったり,犯したり,試みたり,助言したりする者は両当事国の敵であると判断され,違反の犯された国において反逆者として処罰される.しかし,禁止された物資すなわち禁制品の明細については,今後協定される.

第十四条〔互いの敵に対抗する上での支援〕
前記大ブリテン国王および前記連邦議会は相互に誠意と信義をもって(機会のある限り)互いの謀反人に対抗するのを,海陸を問わず,人員,船舶において援助する.その費用と負担はそれを望む側が負うものとし,その規模と方法はその機会の必要に応じて後日協定される条件に従うものとする.

第十五条〔互いの敵の援助の禁止〕
前記国王も前記共和国も,またそのいずれの国民の何人も,その支配下の国土,土地,避難港,海港,入り江において,相手国で公式に宣言された,もしくは宣言されることになっているいかなる謀反人や逃亡者も受け入れない.またそのような宣言された謀反人や逃亡者に対し,前述した場所やその土地,国土,避難港,海港,入り江,支配下のその他の場所において,いかなる援助,助言,宿舎,兵士,船舶,資金,武器,弾薬,糧食を与えたり譲ったりすることはしない.またいずれの国もその支配下にある国土,土地,海港,避難港,入り江においていかなる人物もそれらの謀反人や逃亡者を受け入れることを認めず,いかなる援助,助言,宿舎,好意,武器,弾薬,兵士,船舶,資金,補給物資がそのような謀反人や逃亡者に与えられ,譲られることを許しもせず,むしろ明確に,そして有効に禁じ,現実にこれを妨げるものとする.

第十六条〔互いの敵の国外追放〕
いずれかの当事者が公の正式な書簡で他方に対し,ある人物が謀反人や逃亡者である,もしくはそうであったこと,それらの者もしくはその一部がその国の支配下の土地,国土,海港などのいずれかにおいて受け入れられていた,または居住し,潜伏し,避難していることを通知した場合には,そのような書簡を受け取った国またはそのような通告が与えられたもしくは宣言がなされた人物は,そのような通告が与えられた日から起算して二十八日以内にそのような謀反人や逃亡者に対してその支配下の国土のあらゆる場所から退去し,出発することを課し,命令する義務を負う.そして前記謀反人や逃亡者がそのようにして課され,命令されたのち十五日以内に退去,出発しない場合には,それらの人物は死および土地財産の没収をもって処罰される.

第十七条〔イギリスの敵の保護の禁止〕
前記大ブリテン国王のいかなる謀反人も,連合諸州の属領と領土内にいずれかの人物(その位階と身分がいかなるものであろうと)が有する(いかなる権利や肩書きによってこれを保持し,所有するものであろうと)城,都市,避難港,支配地その他の場所(特権のある場所であろうとそうでなかろうと)において受け入れられることがあってはならない.また,それらの謀反人もしくはその一部がその時点において何らかの権利もしくは肩書きによって有しているもしくは有していると主張する場所に受け入れられたり,滞在したりすることを認めてはならない.

第十八条〔貿易;自由往来〕
前記大ブリテン国王およびその臣民および陛下の属領のすべての住民そしてまた前記連合諸州とその国民と住民は,その位階や境遇を問わず,互いに何事においても好意と友好をもって接する義務を負う.彼らは自由かつ安全に陸上,水上において互いの国土,都市,町(城壁の有無,防塞の有無を問わず),避難港そしてヨーロッパに位置するそのすべての属領を通行し,望むだけ長くそこに滞在し続け,そこで自らの用に必要なだけ糧食を買い入れることが許され,妨げられないものとする.そして同様に,彼らは自らが適当と思うあらゆる種類の物品,商品を交易,輸送し,通常の税を払った上で随意にそれらを輸出,輸入することができる.ただし,それぞれの国には,固有の法と慣習が認められる.双方の側の国民と住民は,互いの国土や属領で交易を行なう際,今後は,輸入関税その他の税について,その地で交易する他の外国が通常支払っている率に従った額以上のものを支払うことを強いられることはない.

第十九条〔海の主権〕
前記連合諸州の船舶は,軍艦も他のものも,前記大ブリテン国王の軍艦に英国の海にて遭遇した場合には,これまでいつの時代にも守られてきたのと同じしかたで,旗を降ろし,中檣帆を下げるものとする.

第二十条〔海賊の処罰と強奪品の返還〕
通商と航海のより一層の自由のため,前記大ブリテン国王と前記連邦議会は,その避難港,都市,町に海賊や海の無法者を受け入れることなく,その国民のいずれかが受け入れることも許さず,また彼らに何らかの応接,支援,糧食を与えることもないものとする.むしろ,前記の海賊や海の無法者もしくはその仲間や共謀者,教唆者をみつけだし,逮捕し,彼らが他者に対して与えた恐怖に対する当然の処罰を受けるよう努めるものとする.そして彼らの海賊行為によって奪取され,いずれかの当事国の港に運び込まれた船舶,物品,商品がみつけられた場合には,たとえ売却されていたとしても,すべて正式な所有者に返却されるか,所有者もしくは委任状に基づいてそれに異を唱える者に補償が与えられる.ただし,彼らの財産権は法に従って有効な証明によって海事裁判所に明らかにされなければならない.

第二十一条〔第三国からの敵国船拿捕免許状や海賊について〕
前記大ブリテン国王の国民およびそれに服する諸王国や国土の住民ならびに前記連合諸州の住民および国民は,陸海を問わず,いかなる主張や旗印のもとであろうとも,互いに何らかの敵対行為もしくは暴力行為をなしたり企てたりすることは認められない.その結果として,前記国民や住民が,連盟する両国のいずれかと対立するもしくは公然たる戦争状態にあるいずれかの君主もしくは国から敵国船拿捕の委任状や免許状を獲得すること,ましてやそれらの免許状の効力に基づいて一方の当事国の国民を悩ましたりこれに害を与えたりすることは合法ではない.また当事者のいずれの国民でもない外国の軍艦が,他の何らかの君主もしくは国の辞令をもって,前述した当事国のいずれかの港において船の装備を行なったり,捕獲物資を売却したり買い戻させたり,またその他の方法で交換したりすることは,船や物品についても,その他の陸揚げ品についても合法ではない.そしてこれらの人物が糧食を購入することも,前記辞令を下した君主の領内の次の港に行くのに必要なもののほかについては合法ではない.もし前記大ブリテン国王または前記連邦議会の国民が偶然に当事国の一方の国民から強奪された船や物品を購入したり,交換その他の方法により取得した場合には,その国民は前記船や物品を権利者に遅滞なく返還する義務を負い,いかなる補償も,支払われたり約束されたりした代金の返還も求めないものとする.ただし,返還を受ける人物は前記大ブリテン国王の枢密院の前に,または前記連邦議会の前に,正当な所有者もしくは権利者であることを明らかにするものとする.

第二十二条〔第三国との友好条約など〕
前記大ブリテン国王もしくは前記連邦議会が何らかの友好条約もしくは同盟条約を他の国王,共和国,君主,国家と結んだ場合には,相手国がそこに含められることを望んだ場合には,互いをその属領とともにその条約に含めるものとする.そしてそのような条約や友好関係,同盟についてはすべて互いに通知するものとする.

第二十三条〔事故による和平崩壊の防止〕
この友好,連盟,同盟の期間中に当事国の国民もしくは住民のいずれかによってこの条約もしくはその一部に反することがなされ,もしくは試みられた場合,それが陸上,海上,水上のいずれであろうとも,前記国家間のこの友好と同盟がそれによって壊され,中断されることはなく,完全に有効なものとしてとどまり続ける.そしてこの条約に反することを犯した特定の人物のみが処罰されるのであって,他の何人も影響されない.そしてこの条約に反することを犯したすべての者によって,関係するすべての者に正義が行なわれ,補償が与えられる.その期限は,陸上,海上,他の水上を問わず,ヨーロッパのいずれかの部分,〔ジブラルタル〕海峡内のいずれかの地点,アメリカ,アフリカ沿岸,または喜望峰のこちら側のいずれかの土地,島,海,入り江,湾,川その他の地点の場合には正義の要求がなされてから十二か月以内に,そして〔喜望峰〕岬の向こう側のあらゆる地点(上に述べたような)については,前述した方法によって正義の要求がなされてのち十八か月以内とする.しかし,この条約に対する違反者が出頭して裁きを受け,各地点の距離に応じた上に明記されたそれぞれの期間内に補償を与えようとしない場合には,それらの人物は両当事国の敵であると宣言され,その地所,財産,歳入はいっさい彼らによって与えられた傷害や不正のしかるべき完全な補償のために没収される.そして彼らがいずれかの当事国の属領内に来た際には,本人に対してもその罪状に対して誰もが受けるべき処罰を受けることになる.

第二十四条〔互いの国内での通行・交易の自由〕
前記大ブリテン国王の臣民およびその支配下にある人々は自由かつ安全にネーデルラントのすべての諸州およびヨーロッパにおけるそのすべての属領を旅し,また陸路または海路でそこまたはそこを越えたところにある他の地点に到達するために通過することができる.そして連合諸州のすべての地区,連合諸州の内部にある都市,砦,駐屯地,もしくはヨーロッパにあるその属領中の他の地点を通って,これらすべての地点で交易を行なう本人でもその代理人,仲買人,召使いでも,武装していても非武装でも(ただし,武装している場合には一隊に四十人を超えないものとする),物品や商品を持たないでも持っていても,望むところに行くことができる.また,連合諸州の民と住民は,同じ自由を前記国王のヨーロッパのすべての属領において享受する.ただし,これらの者はみな残らず,その交易や商いにおいてそれぞれの国の法と制定法に従うものとする.

第二十五条〔避難船の扱い〕
いずれかの国の国民の商船が嵐,海賊その他何らかの必要によって一方の属領のいずれかの避難港に追い込まれた場合には,望むときにその船と財貨とともに安全に出発することができる.荷下ろしをしたり,販売を行なったりしない限りは関税その他の税を支払う必要もないものとする.また,船上にいかなる人や物品も,またその船が(前述のようにして)到着した地点の法令や慣習に反するいかなる物も受け入れない限り,妨害や臨検を受けることもないとする.

第二十六条〔船員の強制徴募禁止〕
いずれの当事国の商人,船長,船員も,その船,物品,品物,商品も,他方の土地,避難港,街道,河川において戦争その他の用に供するために一般的もしくは個別的命令によって拘束されたり押収されたりすることは,特別な必要があり,公正な補償がなされるのでない限り,あってはならない.ただし,このことはいずれかの国の通常の法廷によって正当になされる押収や逮捕を妨げるものではない.

第二十七条〔武器の携行〕
双方の側の商人,その仲買人,召使い,そしてまた船長その他の船員は,海路もしくは他の水路によって旅立つ場合も帰還する場合も,いずれかの当事国の避難港にいる場合も,陸に上がる場合も,自らと財貨の防衛のためにあらゆる種類の攻撃用,防衛用の武器を携え,これを用いることができる.しかし,宿舎や宿に来た際には,再び乗船するまでそこに武器を置いて残すものとする.

第二十八条〔相手国商船の保護〕
いずれかの国の軍艦もしくは護送船団が,同じ進路を取るもしくは同じ方向に向かう他方の国民もしくは住民に属する商船に海上で出会い,もしくは追いついた場合には,同じ進路を進む限り,これに襲いかかろうとするすべての者に対してこれを保護し,防衛する義務を負う.

第二十九条〔領域内での拿捕への対策〕
いずれかの国もしくは中立国の国民もしくは住民の船がいずれかの港においていずれの国の国民でも住民でもない第三者によって拿捕された場合には,その避難港もしくは支配下において,もしくはそこから前記船が拿捕された国は,他方とともに,前記の船を追跡して取り戻し,所有者に返還するよう努力する義務を負う.しかし,このすべては所有者もしくは関係当事者の負担において行なわれる.

第三十条〔臨検〕
双方の側の臨検者およびそれに類する役人はそれぞれの国の法に従って身を律し,その辞令もしくは命令書によって認められた以上を課したり要求したりしてはならない.

第三十一条〔傷害修復の手続き〕
いずれかの国もしくはその国民や住民によって他方の国民や住民に対して,またはこの条約の条項のいずれかに反して,または共通の権利に反して傷害がなされ,もしくは実施された場合にあっても,敵国船拿捕免許状やその返報としての拿捕免許状がいずれかの側によって下されることはなく,まずは通常の法的手続きに従って裁きが要求されるものとする.しかし,そこで裁きが拒まれたり遅れたりした場合には,前記大ブリテン国王および前記連邦議会,すなわち国民や住民が不正をこうむった側の国の委員は,他方の,すなわち(上述のように)裁きが拒まれたり遅れたりしている側の国に対して公に裁きを要求するか,その国にそのような対立を審理し決着させるための〔委員〕任命を要求し,友好的な和解もしくはしかるべき法的手続きが行なわれるようにする.しかし,それでもなお遅滞があり,そのような要求後三か月以内に正義も行なわれず,補償も与えられないような場合には,敵国船拿捕免許状やその返報としての拿捕免許状が下されることができる.

第三十二条〔戦争再発時の国民への猶予〕
また,いずれかの時点において前記国王陛下と前記連邦議会との間でこのたび決着された対立が悪化し,再び公然たる戦争となった場合(神の慈悲によりそのようなことのなからんことを),それぞれの当事国の船舶,商品その他の種類の動産でそれぞれの敵国側の港にあってその支配下にあったものは,それにもかかわらず,没収されたり,不利益を受けたりすることはないものとすることが合意された.そして,それぞれの当事国の国民と住民にはその地から上に述べた物および彼らのものであり彼らが適当と考えるものをすべて,いかなる種類の妨害も受けることなく運び出す時間をもてるよう,まる六か月が認められるものとする.

第三十三条〔相手国への入港〕
それぞれの当事国の国民と住民は,常に,互いの海港に自由にはいり,そこにとどまり,そしてそこから同じように自由に出港することができることが合意され,締結された.そして商船と積荷のみならず,軍艦を伴っていてもよく,それは前記国王もしくは連邦議会に属するか個人的に辞令を取得した人物に属するかを問わず,嵐の猛威や海上の他の事故によってやってきたのか,船の修理に来たのか,糧食の購入に来たのかを問わないが,自主的に来航するときには軍艦六隻の数を超えてはならず,避難港やその隣接地には前記船舶を修復したり糧食その他の必要品を買い入れたりするための正当な理由があるより長くとどまり,滞在してはならない.そして折りにふれてより多数の軍艦がそのような港への入港を望む場合には,まず前記避難港が属する者の許可を得るまでは決して入港してはならない.嵐や不可抗力,または海上の危険を避けるための必要によってそうせざるを得なかった場合は例外とするが,その場合においてもただちにその地の総督もしくは首席行政官に来航の理由を伝え,前記総督もしくは首席行政官が認めた以上長く滞在してはならず,前述の避難港において滞在中,敵対行為その他有害ないかなる行為もしてはならない.

第三十五条〔条約の遵守〕
さらに,両当事国は真に確固としてこの条約およびそこに含まれるすべての各事項を遵守し,遂行するものであり,それがそれぞれの国の国民と住民によって遵守され,実行されるよう有効にはからうものとする.

第三十六条〔オランダの要職につく者の条約遵守〕
また,この条約と連盟が連合諸州の連邦議会とその民の側によって滞りなく善意をもって遵守されるようさらなる用心と保証として,以下のことが締結され,協定され,また前記連邦議会は本状によりそれに同意し,確固として誓約するものである.すなわち,連邦議会もしくは諸州の州議会によって,いずれかの時点において大将軍,または総督もしくは首席行政官もしくは統領,または陸軍もしくは陸上兵力の将軍,または提督もしくは艦隊,船舶,海上兵力の将軍に選任され,任命され,そうされるすべての各人は,宣誓によってこの条約およびそのすべての条項を確認し,宣誓によって神聖に,可能な限り熱心にそれを遵守して執行し,その職掌に関わる限りそれが他の者によって遵守され,執行されるようはからうことを約束する義務を負う.

第三十七条〔各国の参加〕
この平和条約には,批准書の交換前もしくはその後六か月以内にいずれかの当事国によって指名され双方によって合意された国が含められる.しかし,その一方,締約する両国は,最もやんごとなきスウェーデン国王が仲介の労をとり,神の支援を得てこの有益な和平の偉業を推進し,望まれた結論に導いたことを感謝し,その友好的な好意とたゆまぬ尽力を認め,両国の同様の友好の証として,すべての当事国の共通の合意により,上述したスウェーデン国王陛下はそのすべての諸王国,属領,属州,権利とともにこの条約に含められ,ありうる限りの最善かつ最も有効なしかたでこの和平のうちに含められることが定められ,締約された.

第三十八条〔批准〕
この条約およびそこに含まれ,締結されているすべての諸事項は,前記大ブリテン国王および前記連合諸州の連邦議会によって,今後四週間以内に,もしできるならばより早くに,しかるべく正式な形で国璽を捺された双方の側の開封勅許条によって確認され,批准されることが締約され,締結され,協定された.そしてその期間中に双方の側の批准書はブレダにて交換される.そしてその交付,交換後ただちにこの条約と同盟は通常の形で通常の場所において公表される.

ブレダにて作成.一六六七年七月二十一/三十一日.

別記条項
もし,大ブリテン国王に属するタペストリー,掛け物,じゅうたん,絵画,あらゆる種類の家具,宝石,宝飾品,骨董品その他もろもろの動産が現在,もしくは今後前記連邦議会もしくはその国民のいずれかの手中,もしくは采配下にあった場合には,前記連邦議会は前記国王に属する動産の保有者をいかなる形でも保護しないこと,それらの財貨が,それらを自発的に返還することに抵抗する者が衡平と正義に反する扱いを受けないことを前提に,彼らから取り上げられてもよいことを約束する.そして前記連邦議会は,この件に関し,普通法廷において行なわれている手続きの通常の形と方法を省いて略式で即決の審理のしかたをするよう,また,正義が執行され,誰にも不法行為を行なうことなく前記国王陛下に可能な限り弁済がなされるよう,最も有効な努力を払うことを約束する.
また,最も祝福されたる追憶のうちにある国王チャールズ一世に対して犯された恐るべき反逆と主君殺しに手を染め,法に基づいて私権を剥奪され,断罪され,その件につき有罪とされたいずれかの者が,現在前記連邦議会の属領のうちにいるか,今後そこに来たることがあれば,前記連邦議会もしくはその官吏のいずれかがそのことを知ったり通知を受けたりしたのちただちにこれを逮捕し,収容して,囚人としてイングランドに送るか,前記大ブリテン国王がその身柄を引き取り,本国に連行するために任命する者の手に届けるものとする.

ブレダにて作成.一六六七年七月二十一/三十一日.


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(C) 2004.2. 友清理士; 訳文の最終修正日2004.2.11
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