権利宣言(1689年2月)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

権利宣言:Declaration of Rights
1688年11月,イングランドに上陸し,名誉革命を果たしたオレンジ公ウイリアムおよびその妃メアリーがイングランド王位を受けるのと引き替えに承認した議会の文書.同年12月に権利章典として法制化され,イギリス憲法の基本文書の一つとなる.

先の国王ジェームズ二世は自ら登用したもろもろの邪悪な顧問官・判事・大臣たちの助言により,この王国のプロテスタント信仰,法制,自由を転覆・根絶せんとして,
法律や法律の執行を議会の同意なく免除したり,効力を停止したりする権限を僭取し,
先述の僭取されたる権限を是認することを免れようと丁重に請願したことを理由としてもろもろの高位聖職者を逮捕ないし迫害し,
教会問題のための委員による裁判所と呼ばれる裁判所を設置するための辞令を国璽のもとに発し,それを執行させようとし,
議会の承諾によらない時期・方法において,国王大権の僭称のもとに,王室のために王室の使用に供する資金を調達し,
議会の同意なく平時においてこの王国内に常備軍を募り,維持し,法に反して兵士の宿営を行ない,
カトリック教徒が法に反して武装され登用されているそのときに,プロテスタントである善良なる臣下の武装解除をさせ,
議会において奉仕する議員の選出の自由を侵し,
議会によってのみ扱われるべき問題や主張について王座部裁判所での迫害やその他もろもろの恣意的にして違法な手続きを行ない,
近年においては偏って堕落しており不適格な人物が選出されて裁判において陪審として奉仕し,特に自由土地保有者でない者が大逆罪の裁判においてもろもろの陪審員とされた.
刑事告訴された人物に対して過大な保釈金が要求され,臣下の自由のためにつくられた法の恩恵を受けることを妨げる結果となった.
過大な罰金が課され,不法にして残虐な刑罰が科された.
罰金や没収財産に対して,それを課されるべき人物に対する有罪宣告ないし判決の前に権利の付与や約束が行なわれた.
これらすべては知られている法や成文法,そしてこの王国の自由に完全に,真っ向から反するものである.
先述の国王ジェームズ二世が国政から退位し,それによって王座が空位となり,オレンジ公殿下(全能なる神の恩寵によりこの王国を教皇主義と専制支配から解放する輝かしい使徒となられた)は(聖俗貴顕ならびに庶民の主要な人物たちの助言により)プロテスタントなる聖俗貴顕への書状を書かしめ,各州,都市,大学,特権都市,そして五港への書状を書かしめて,権利によって議会に送られ一六八八年一月二十二日にウエストミンスターにて会し着席するそれらを代表する人物の選出を求め,彼らの宗教,法律ならびに自由が二度と転覆の危険にさらされることのないような体制をつくらんとした.それらの書状に基づき,選挙がなされた.
そしてそれに基づき,聖俗貴顕ならびに庶民はそれぞれの選挙の書状に従い,今余すところなく自由にこの国民を代表するものとして集い,先に述べられた目的を達成するための最善の手段をこの上なく真剣に考慮し,まず(その父祖たちが同様な場合に通例なしたように)古来からの権利と自由を擁護し,主張するために宣言する:
議会の同意なくして国王の権限によって法律の効力を停止したり,その執行を停止したりするとされた権力は違法である.
最近僭取され,実行されたように,法律ないしその執行適用を免除することは違法である.
教会問題についての裁判所を設立することは違法にして悪質である.
議会の同意によらない国王大権による資金集めは違法である.
国王に請願することは臣民の権利であり,そのような請願を理由とした拘禁ないし訴追は違法である.
議会の同意なくして王国内に平時に常備軍を募り,維持することは違法である.
プロテスタントの臣下が自衛のために武器を所持することは合法である.
議員の選挙は自由であるべきである.
議会における言論,討論は自由であり,いかなる裁判所でも議会の外においても弾劾されたり問題に問われたりするべきではない.
法外な保釈金や法外な罰金を科してはならない.また残虐で尋常でない処罰を科してはならない.
陪審員はしかるべき方法で選出し,大逆罪の裁判に関わる陪審員は自由土地保有者であるべきである.
刑罰の確定前の罰金などは違法であり,無効である.
問題を改善し,法を修正,強化,保持するために議会は頻繁に開催されるべきである.
そして聖俗貴顕ならびに庶民は,前記事項をその全体としても個々のものとしても自分たちの疑うことのない権利であり自由であると主張し,要求し,そして断固求めるものである.そして前記事項のいずれかにおいて人権の侵害となるようないかなる宣言,審判,行動または手続きも,いかなる形においても今後は重きをおいたり前例としたりしてはならないものとする.
人民の権利のそのような要求に向けては,彼らはとりわけオレンジ公殿下の宣言によって勇気づけられている.この宣言は完全な是正および改善を得るための唯一の手段と言える.
それゆえ,前記オレンジ公殿下がここまで殿下によって進められてきた解放を完成させ,さらにここに主張されたる権利が侵害されたり,その宗教,権利,自由に対する侵食が試みられたりすることから人民をお守りくださるであろうと完全に信じて:
前記のウエストミンスターに集まりたる聖俗貴顕および庶民はオレンジ公夫妻ウイリアムおよびメアリーがイングランド,フランス,アイルランドおよびそれらに属する属領の国王であるとし,またそう宣言されるものであり,前記の王国とそれらの属領の王冠と王としての威厳を前記の公と公妃はその寿命および後継者の寿命の間,保持するものと決議する.そして王権の唯一にして完全なる行使は,前記公および公妃両名の共同の寿命の間は両名の名において,前記オレンジ公にのみ存し,公によってのみ執行されるものとする.二人の没後は前記の各王国および属領の王冠と王としての威厳は前記公妃自らの子孫に次がれるものとし,そのような世継ぎのない場合にはデンマーク公女アン,そしてその自らの子孫に,そしてそのような世継ぎのない場合には前記オレンジ公自らの世継ぎに次がれるものとする.聖俗貴顕ならびに庶民は前記公および公妃に本件をつつがなく受け入れることを祈念するものである.
そしてこの次に述べられる宣誓が,忠誠と至上権の宣誓が法によって要求されるかもしれないすべての人物によって,従来の宣誓に代わって行なわれること.そして前記した従来の忠誠と至上権の宣誓は廃止されること.
私ABは,国王ウイリアムおよび女王メアリー両陛下に対し,信義を尽くし,真の忠誠を果たすことを誠実に約束し,誓います.よって神よ助けたまえ.
私ABは,教皇またはローマ教皇庁のいずれかの権威によって破門されたり資格剥奪になった君主がその臣下や他の何人かによって廃位されたり殺害されたりしてもよいとする憎むべき教義や立場は心より忌み,嫌悪し,否定することを誓います.そしていかなる外国の君主,人物,高位聖職者,国家,有力者もこの王国内においていかなる司法権も,権力も,優位性も,卓越も,権威も,教会上のものだろうと精神上のものだろうと持たず,また持つべきではないことを宣言します.よって神よ助けたまえ.


(C) 2003.10. 友清理士; 訳文の最終修正日2004.12.3
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