ドーヴァー条約(ドーバー条約,ドーヴァーの密約,ドーバーの密約)(1670)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

ドーヴァー条約:Secret Treaty of Dover
イングランド国王チャールズ二世が,フランス国王ルイ十四世に対し,資金援助をみかえりとして,オランダに対する戦争に荷担し,いつの日かカトリックに改宗することを約束した秘密条約.
オランダに対する戦争はルイ十四世のオランダ侵略戦争(オランダ戦争; 1672-78)と同時に勃発した第三次英蘭戦争(1672-74)として実現した.

[この重要な条約は長らく秘密にされていたが,一八三〇年に故クリフォード卿が卿の所有するオリジナルから出版することを筆者に認めてくれた.]

〔チャールズ二世の全権委任状〕
国王チャールズ
神の恩寵により大ブリテン,フランス,アイルランドの国王,信仰の擁護者たるチャールズより,本状を手にするすべての者にご挨拶申し上げる.余の親愛で最愛なるきょうだいにしていとこのフランス国王の大使たるコルベール氏の一六六九年十月三十一日付の全権委任状を読み,熟慮したところ,それは余の前記きょうだいが余が指名する委員たちと協議し,我らの間のより緊密な友好,関係,連盟のための条項を交渉し,締結し,調印する権限を氏に与え,これほど王にとって好ましく,その臣民にとって利になる同盟関係はほかにはないと断言するものであった.余も同じ気持ちであり,余にとって余の前記きょうだいと完璧にして解消し得ない友愛によって結ばれることほど熱心に望むことはない.余にそうさせるのは血縁の近さ,かの王自身に対して余が抱く愛情と尊重,それにより神が余の配下におきたもうた民に復される利益,そして何よりも,余が(神の恩寵によって)カトリック教会と和解し,それによって余の良心に平穏を与え,カトリック教の福利を得るという計画においてかくも強力な同盟者の友好と熱意による支援と助力を期待できることである.すなわち,余のいと忠実にして最愛のアーリントン卿―余の枢密院の顧問官にして余の首席国務大臣―,余のいと忠実にして最愛のウォーダーのアランデル卿,余のいと忠実にして最愛の勲爵士クリフォード氏―余の枢密院の顧問官,余の王室の会計官にして大蔵委員―,余のいと忠実にして最愛の勲爵士ベリングズ氏―余のいとしい妃たる王妃付きの秘書―の忠節,力量,熱意,分別に完全なる信をおくことから,余は,前記アーリントン,アランデル両卿,クリフォード,ベリングズ両氏に辞令を発し,命令し,権限を与えることにしたものであり,余の手によって署名された本状により辞令を発し,命令し,権限を与えるものである.そしてこれらの者に対して,余の親愛で最愛なるきょうだいにしていとこのフランス国王の大使たる前記コルベール氏と,我らの間のより緊密な友好,関係,連盟の樹立に至るための方法について協議し,余の前記委員たちが通商行為ならびにその他の事項や利害にとってよいと見なすような条項や協約,さらには攻守同盟さえをも共同して交渉し,協定し,その上で締結し,署名する,そしてまた一般に,彼らが前述した目的のために必要と見なすあらゆることをなし,交渉し,約束し,同意し,署名するための全権,権限,委任状,個別命令書を与えることにしたものであり,ここに与える.それに際しては,国王としての信義と言葉において,義務と余の現在および将来における福利にかけて,余の前記委員たちによって本状の効力に基づき規定され,約束され,同意されるすべてのことについて確固としてゆるがないものとして維持し,実施し,決してこれに違背せず,またそれが違背されることを許しもしないことを,
また,有効なる形の余の批准書を発送し,それが定められた期間内に提出fournirできるようはからうことを約束する.その証として,余は本状に余の王璽を捺さしめた.ホワイトホールにて作成.千六百六十九年,余の治世二十一年目,十二月十五日.

〔ドーヴァー条約〕
全能なる神の名においてすべての各人に知らしむべし.神の恩寵により大ブリテンの国王たる最もやんごとなき最も力ある君主チャールズ二世ならびに同じく神の恩寵によりフランス国王たる最もやんごとなき最も力ある君主ルイ十四世は,常にその民に完璧なる幸を得るために心血を注いできたのであり,それぞれ自身の経験は,共通の福利は,両王自身,そしてそれぞれのもとにおかれた国土と国家の間のとても緊密な連合,同盟,連盟にしか存し得ないことを知るのに十分であった.そのことについては両者とも,血縁の近さ,両王国の近さ,その他多くの事情からそれぞれのうちに樹立された誠実な友愛と愛情によって等しく望んでいる.そして両者とも,他者の利益によって互いの間で生じた混乱のうちにあっても,両者の前記国土と国家の安全のため,またそれぞれの臣民の福利と利便のために努めたいという願いを大切に持ち続けてきた.その臣民の通商は,長い目で見ればこうしたよき調和と利害の結びつきから著しい利益を受けるはずなのである.前記両王はこの神聖にして称賛すべき望みを実行するため,そして現在両者の間にあるよき友好と理解を常に強化し,確認し,維持するため,それぞれ委任状を発行し,権限を与えることにした.すなわち,前記大ブリテン国王はアーリントン卿―陛下の枢密院の顧問官にしてその主席国務大臣―,ウォーダーのアランデル卿,勲爵士クリフォード氏―余の枢密院の顧問官,余の王室の会計官にして大蔵委員―,勲爵士ベリングズ氏―大ブリテン王妃付きの秘書が,そして前記フランス国王はシャルル・コルベール・ド・クロワシー氏―国務評議会における陛下の顧問官にしてその大ブリテン国王陛下への通常大使―が,彼らそれぞれに上記国王より与えられて一語一語この条約の末尾に挿入されている前記全権委任状および委任状の文言によって十分な権限が与えられている.その効力により,彼らは上述の国王の名において以下の条項に合意した.

第一条〔友好〕
前記大ブリテン国王とその世継ぎを一方とし,継承者と前記フランス国王を他方としてその両者の間に,また両者が現在もつもしくは有する,あるいは両者が今後海上,水上,陸上を問わずもつ,もしくは維持するもしくは有するすべての各王国,所領と領土,そしてその臣民と封臣の間に,永久に,よき安定して確かな平和,連合,真の交誼,連盟,友好,同盟,そしてよき交流がうち立てられるべきであることが,協定され,決定され,締結された.そしてこの平和が何ものも決してそれを乱さず,侵されないことを保証するため,以下に信頼に基づく条項が続くが,それはいとも大いなる,それに加えて前記両国王にいとも利益あるもので,今後ほとんど見られず,過去のいかなる世紀にもこれほど重要なものが決定され,締結されたことはないほどである.

第二条〔チャールズ二世の改宗とルイ十四世からの資金・兵の援助〕
大ブリテン国王は,カトリック教の正しさを確信しており,その王国の事情が許し次第それを宣言し,カトリック教会と和解する決意であるが,臣民の愛情と忠節を期待し,あてにできる十分な理由がある.神の恩寵はすべての臣民がこの尊い例にならって改宗するにまで広まってはいないものの,臣民は,反対の宗教の君主に対してであっても,侵されることなき服従心に欠くことはないものと思われる.そうではあるが,折に触れて問題を起こす満足を知らない人はいるもので,そうした者はとりわけ宗教上のまことしやかな口実のもとに邪悪な企てを覆い隠そうとする際,公共の平穏を乱さんと努めるものである.大ブリテン国王陛下は,(〔改宗によって〕自らの良心の平安を得たあとは)自らの統治の穏健さによって臣民のために獲得したことを確かなものにすることしか考えていないのであるが,それが改変されるのを防ぐ最善の手段は,必要なときにはフランス国王陛下の助力が得られるよう保証を受けることだと考えた.フランス国王陛下は,そのような場合には大ブリテン国王にその誠意と友好の疑う余地のない証明を与え,そのように輝かしい,大ブリテン国王陛下のみならずカトリック教全体に対してさえも実に有用な計画を成功に導くのに貢献することを望んでいることから,そのために,前記大ブリテン国王に二〇〇万フランスリーヴルの額の供与を約束することにしたものであり,ここに約束する.その半額はこの条約の批准書の交換後三か月に,カレー,ディエップ,あるいはルアーヴル・ド・グラース〔現ルアーヴル〕において前記大ブリテン国王の裏書人に正貨にて支払われる,あるいは交換手形でロンドンに,前記フランス国王のリスク,危険,費用のもとに送金されるものとする.そして残りの半分は同様にして三か月後に.それに加え,前記フランス国王は大ブリテン国王に必要であれば歩兵六〇〇〇までの軍勢の援助をし,さらにそれを自らの費用と負担において大ブリテン国王がその計画の執行のために必要と判断する限り募り,維持する義務を負う.そして前記の軍勢は大ブリテン国王の船で同王が自らの役に立てるために最も適当と判断する場所・港に輸送され,その乗船の日にすでに述べたようにフランス国王によって給金を支払われ,前記大ブリテン国王の命に服するものとする.そして前述したカトリックの宣言の時期は完全に大ブリテン国王の選択に委ねられるものとする.

第三条〔スペインとの平和および三国同盟の確認〕
同様に,フランス国王と大ブリテン国王陛下との間で,前記フランス国王がスペインと結んだ平和条約を決して破ったり侵害したりせず,またエクス・ラ・シャペル条約において同王が約束したことのいずれにも違背せず,またその結果として大ブリテン国王に三国同盟およびそれに伴う取り決めの条件に従って前記エクス・ラ・シャペル条約を維持することを認めることが協定された.

第四条〔新たな権利〕
また,今後スペイン王国に対してフランス国王の新たな肩書きや権利がみつかった場合には,前記大ブリテン国王は,フランス国王陛下を海上,陸上を問わずその軍勢によって支援し,同王が前記権利を獲得するのを助けることが協定され,合意された.そのいっさいについての個別の条件は,前記両王が,前記肩書きや権利の移行日がきたのちにそれぞれの軍勢を合流させるために,また前記国王が妥当に望みうるであろう利益のために協定するものとして留保しておく.そして両国王はただ今より,前記の新たな肩書きや権利を理由としては,互いの協調と同意によるものでなければ,いかなる君主や有力者ともいかなる条約も互いに結ばないという相互的な義務を負う.

第五条〔対オランダ戦争〕
前記両王は,ネーデルラント連邦共和国の連邦議会の傲慢を罰し,この国民を打ち据える決意したことを世界に対して正当化するのに十分以上のあまたの理由をそれぞれ抱えている.彼らはしばしば〔スペインからの独立を支援した〕己の創設者,この共和国の創造者に対する著しい忘恩をさらけだし,今日では他の諸国すべての至上の仲裁者,審判者としての立場を固めんと欲する不遜ささえも示しているのである.よって,以下のことが協定され,決定され,締結された.両陛下は前記ネーデルラント連邦共和国の連邦議会に対し,陸上,海上におけるその全軍をもって共同して宣戦布告し,戦争を遂行する.前記両王のいずれも,相手の意見と同意なくして彼らと平和条約,休戦,停戦を結ぶことはしない.また前記両王の臣民と前記連邦議会の国民との間の通商はすべて禁止される.この禁止にも関わらず不正取引をする船およびその荷があれば,他方の国王の臣民はこれを差し押さえることができ,それは正当な獲得とみなされる.そして前記連邦議会と前記両王もしくはその父祖との間に結ばれた条約は,エクス・ラ・シャペル条約の執行のために結ばれた三国同盟のほかは,すべて無効であるとする.宣戦布告後に前記両王のいずれかの臣民で前記連邦議会の軍籍に登録された,もしくは実際に軍務についていた者を捕虜にした場合は,捕虜にした臣民の側の国王の裁きによって死刑に処されるものとする.

第六条〔対オランダ戦の陸上の負担〕
この戦争を,共通の大義の公正さから前記両王が期待するようにすみやかに行ない,遂行するため,同様に以下のことが協定された.フランス国王陛下は,前記連邦議会の各地点や国土を陸上から強力に攻撃するために必要な軍勢を整え,維持し,行動させるために適切なすべての費用を負う.前記大ブリテン国王陛下はフランス国王の前記軍勢に,自らの負担で六〇〇〇の歩兵部隊を送り,常時これを維持する義務のみを負う.その指揮官は将軍で,フランス国王に,そして長として軍勢を指揮する者に従う.または前記部隊は補助兵として奉仕する.その内訳は十個中隊からなる連隊六とし,各中隊は一〇〇名より成るものとする.その部隊は今後前記両国王の間で協議される時期に,協議で決められる港や避難港に,運ばれ,上陸するものとする.ただし,その部隊は,以下に述べられるようにポーツマス近辺に艦隊が集結してから一か月後に,ピカルディーの海岸もしくは協議で決められる他の場所に到着できるようにする.

第七条〔対オランダ戦争の海上の負担;イングランドへの毎年の資金援助;イングランドの取り分;オレンジ公への配慮〕
海上での戦争に関しては,前記大ブリテン国王がこの負担を負うものとし,少なくとも五十の大型艦,火船十を武装させ,これに対して前記フランス国王は,最低四十砲門をもつ良好なフランス艦三十および必要だとしても十隻を上限として艦隊中に有するべき割合の火船からなる艦隊を合流させる義務を負う.この補助艦艇のフランス艦隊は前記戦争の期間中フランス国王の費用と負担によって継続し,人員や艦船が欠けた際にはできる限りすみやかにフランス国王によって補充される.そしてこの艦隊はフランスの副提督〔海軍中将〕もしくは陸軍中将によって指揮され,ヨーク公爵閣下に従う.同公爵には両国王から,それぞれが保有する艦船についてその旨の全権委任状が与えられる.そして前記公爵はオランダ艦船を攻撃し,これと交戦し,また共通の大義のために最もふさわしいと判断するあらゆる手だてを講じることができる.また,旗,敬礼の名誉,そして提督が慣習上受けている他のすべての権威,大権,優先権を享受する.他方,フランス側の前記副提督もしくは陸軍中将は,個人に関しては軍議での上位権を,その艦艇と副提督旗に関しては同じ階級のイングランドの副提督や艦船に対する位階の上位権を有するものとする.さらに,両国の大佐,中佐,士官,水兵,兵士は,この幸いなる連合を改変しかねない事故の発生を防止するために今後協定される事項に従って互いに友好的にふるまうものとする.
そして前記大ブリテン国王がこの戦争の費用をまかなうのを助けるため,フランス国王陛下は前述した方法によって前記戦争が継続中は毎年,三〇〇万フランスリーヴルを前記国王に支払う義務を負う.その最初の支払いは七十五万フランスリーヴルとし,宣戦布告の三か月前になされるものとする.同額の第二回目の支払いは前記宣戦布告の際になされ,一五〇万フランスリーヴルになる残りの額の支払いは前記宣戦布告の六か月後になされるものとする.その後の年については,最初の支払いは七十五万リーヴルとし,二月一日に,同額の第二回目は五月一日に,そして一五〇万フランスリーヴルになる残りの額の支払いは十月十五日になされるものとする.これらの金額は,カレー,ディエップ,あるいはルアーヴル・ド・グラースにおいて前記大ブリテン国王の裏書人に正貨にて支払われる,あるいは交換手形でロンドンに,前記フランス国王のリスク,危険,費用のもとに送金されるものとする.
また,前記大ブリテン国王は,前記フランス軍艦三十,火船十の補助艦隊がポーツマス近辺でイングランド艦隊に合流するまでは宣戦布告の義務を負わないことが協定され,決定された.そして連邦議会に対してなされるあらゆる征服のうち,大ブリテン国王陛下は以下の地点で満足するものとする.すなわち,ワルヘレン島〔スヘルデ河口右岸〕,スライスとカトザント〔同左岸〕.そして攻撃および戦争続行の方法は今後協議される規則によって調整される.
そして,連邦議会政府の崩壊によって大ブリテン国王の甥であるオレンジ公に何らかの害が及ぶ可能性があり,さらに分割しようとしている国土に公に属する地点,町,管区があることに鑑み,前記両王は,前記公がこの戦争の継続中および終了後に利を得られるよう最善を尽くすことが決定され,締結された.それについては,今後別記条項において規定される.

第八条〔他の諸国・諸侯の勧誘〕
同様に,この戦争の宣戦布告の前に,前記両王は共同してもしくは個別に,時流の要請に応じて,スウェーデン国王およびデンマーク国王またはその一方に,連邦議会に対するこの戦争に参加するよう説得するか,少なくとも中立を保たせるために全力を尽くし,同様にケルン選帝侯,ブランデンブルク選帝侯,ブラウンシュヴァイク家,ノイブルク公,ミュンスター司教をこの方針に引き込むよう努めることが決定された.前記両王はさらに,皇帝およびスペイン王室さえも,前記領土の征服に反対しないよう説得するために全力を尽くすものとする.

第九条〔対オランダ開戦の時期〕
前記大ブリテン国王がこの条約の第二条で定められた〔カトリック改宗の〕宣言をしたのち(その宣言は神の恩寵により幸いなる成功に恵まれるはずと期待される),前記両王が連合した軍勢によって連邦議会に対して戦争をしかけるはずの時期を定めるのは完全に前記フランス国王の権限と選択によるものとすることが同様にして協定され,合意された.大ブリテン国王陛下は,フランス国王陛下がこの目的のために最適と判断した時期に共同して宣戦布告することを約束する.前記大ブリテン国王は,フランス国王陛下が前記の時期の指定に際して両王室の利益を考慮することを確信しているからであり,両王室の利益は,この条約の締結後は両者いずれにとっても共通で不可分のものとなるのである.

第十条〔この条約と矛盾する取り決めの無効;通商条約の締結〕
もし前記両国王の一方もしくは他方がいずれかの君主もしくは国家とこれまでに結んだ条約のいずれかにおいて,本連盟において定められる条項に反する条項があった場合には,そのような条項は無効であるとし,この条約に含まれる条項が有効で,効力を持ち続けるものとする.
そして前記両王の臣民の心情と利害をさらに統一するため,現在交渉中の通商条約をできるだけ早期に完遂するものとする.
上にまとめて述べられている点と条項ならびにそれぞれの点におけるすべての内容は,大ブリテン国王陛下の委員アーリントン卿,ウォーダーのアランデル卿,勲爵士クリフォード氏,勲爵士ベリングズ氏およびフランス国王陛下の大使コルベール氏の間で,前記両陛下の名において,その全権委任状(その写しはこの条約の末尾に挿入されている)の効力によって交渉され,合意され,是認され,規定された.彼らは,前記両王の現在および将来のすべての各財産,所領にかけて,これらの条項が両陛下によって侵されざるものとして遵守され,完遂されることを,またこの条約の日と日付から一か月,もし可能ならばより早くにできうる限り有効なる形の両国王の批准の書状を与え,届けることを約束することにし,ここに約束するものである.そしてこの条約によって規定されていることのすみやかな成功のためには,それを実行に移す時がくるまでそれを極秘に保つことが絶対に必要であるため,前記委員たちおよび大使は,前記条約の発効のためには批准書が前記両王自らの手によって署名され,その王璽で封され,前記両王が前記批准の書状のうちでそのために国璽がそこに捺されている場合と同じ効力をもつと宣言することで十分であることに合意している.そのことは,両王のそれぞれができる限り,そして必要なだけ早期になす義務を負う.その誓約として,前記委員たちおよび大使は,この条約に署名し,そこに彼らの印章を捺さしめた.ドーヴァーにて.神の年千六百七十年五月二十二日.

◎アーリントン.     コルベール.◎
◎T・アランデル.
◎T・クリフォード.
◎R・ベリングズ.

これに続いて,同日ドーヴァーで調印された三つの別記条項がある.第一のものは,チャールズが六〇〇〇の兵を割けなければルイは四〇〇〇で満足するというもの.第二は,ヨーク公が艦隊指揮を退いた場合には,公爵が有するはずのすべての指揮権と権限はイングランドの提督が享受するというもの.そして第三のものにおいて,オレンジ公の便宜を図った〔第七条の〕規定は,他の列強が第九条で規定されている時期に合同して参戦することを妨げるものではないことが合意されている.
別紙には,次の宣言がある.もし条約または交渉者の全権委任状の中に,我らの主君たる両国王の肩書きおよび身分において,亡きイングランド王チャールズ一世の治世だろうと今上国王の治世だろうとイングランドとフランスの間で結ばれたさまざまな条約に反することがあったとしても,我らは前記条約の批准書の交換の前にそれを正すものとし,そのために遅らせることはしない.


John Lingard The History of England vol. IX から説明(英語)も含めて訳出した.本文はフランス語.一部改行を追加した.
(C) 2004.2. 友清理士; 訳文の最終修正日2004.2.11
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