ルイ十四世の宣戦布告(オランダ戦争)(1672)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

ルイ十四世の宣戦布告(オランダ戦争)
遺産帰属戦争がオランダの介入によって中途半端に終わったことでルイ十四世はオランダ侵攻を決意していた.スペインに対するオランダ独立戦争においてフランスがオランダを助けていたことに対する忘恩だと見なしたのである.そうでなくともスペインの凋落が明らかとなった今,フランスにとってオランダを同盟国としておく必要はなくなっており,むしろ自国の商業発展の障害となりつつあったのである.
ルイ十四世はオランダに対しては宣戦布告らしい布告はせず,1672年4月6日,自国民に向けてオランダとの開戦を布告した.

かねてより,国王陛下は連邦議会のふるまいについて快からざる思いを抱いてきたが,それはいやます一方である.連邦議会は国王陛下ならびにその父祖たる王たちが惜しみなく注ぎ込んだ恩義をあまりにも顧みることなくふるまっており,国王陛下としてはこれ以上,内に芽生えた憤りを抑えていてはその威光に傷がつくほどまでになっている.国王陛下は宣することにし,ここに宣するものである.前記連合諸州の連邦議会に対して海陸において戦争を起こすることを決め,決心している.したがって,あらゆる臣民,封臣,しもべにはオランダ人への攻撃に出るよう命ずる.そして今後,オランダ人とはいかなる通商,連絡,文通もしてはならず,違反者は死をもって罰せられるものとする.
この目的のため,前記国王陛下は本状により,過去において下された,あるいは法官その他の官吏によって本布告の趣意に反して下されるかもしれないあらゆる許可,旅券,安全通行券,安全通行保証は撤回され,みな無効にして効力をもたないものとする.何人たりともそれを通用させてはならない.
さらに,国王陛下は,ヴェルマンドワ伯―大団長,長官,本王国の航海通商の総監―,フランスの商人,国王陛下によって州や軍に任命されている総督や将軍,その軍における歩兵,騎兵を問わず,またフランス人か外国人かを問わず少将,大佐,少佐,大尉,隊長や指揮官,そして所属するその他すべての士官に対し,指示し,命令する.本宣言の内容を各人がその指揮権,担当地区,管区において実行に移すべし.それが国王陛下のおぼしめしである.国王陛下はこの宣言があらゆる沿岸その他の町にて,あらゆる港や避難港,その他王国内で必要なあらゆる地点にて公表され,掲示されることを望み,求めている.何人たりとも知らなかったふりをすることがあってはならない.ヴェルサイユ城にて発布.一六七二年四月六日.

署名
ルイ
少し下に
ルテリエ

シャルル・カント―国王陛下の常任布告官―は本年本月六日の国王陛下の宣言を,必要とされるパリ市の全域,郊外,管轄区,子爵領にて公表し,掲示すべし.何人たりとも知らなかったふりをすることがなきよう.一六七二年四月六日に発布.


テキストはDeclaration of War Against the Dutchの英語版を用いた.

(C) 2004.5. 友清理士; 訳文の最終修正日2004.5
革命の世紀のイギリス〜イギリス革命からスペイン継承戦争へ〜    歴史文書邦訳プロジェクト   

inserted by FC2 system