チャールズ二世の信仰自由宣言(1672)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

チャールズ二世の信仰自由宣言:Declaration of Indulgence (1672)
第三次英蘭戦争(1672-74)開戦に先立ち,チャールズ二世が発した宣言.非イングランド国教徒に信仰の自由を認めるという内容で,国教会護持を掲げる議会に対抗するため,非国教徒の支持を得るねらいがあった.

チャールズ二世の信仰自由宣言(1672)

国王陛下の忠実なるすべての臣民に向けた宣言(一六七二年三月十五日)

国教会の権利と利益の保存に向けた余の心遣いと努力は,余の幸福なる復位以来の余の統治の路線によって,ならびに余が過てる,もしくは国教に従わない人々を減じるために,そして余が帰国した際に余の臣民のうちに見出した宗教問題における不幸な意見の相違を静めるためにたびたび用いてきた強制手段によって,世界に向けて十分に明らかにされてきた.しかし,十二年間の悲しい経験によりこうしたいっさいの強制的な路線にはほとんど成果がないことは明らかであり,余としては,余の生得権であるのみならず,いくつかの議会の制定法や立法によってもそう宣言され,認められてきた教会上の問題に関する至上権を行使する必要があると考える.それゆえに,余はここに,これらの点において余のよき臣民の心を安んじるため,この局面において外国人にやってきて余のもとで暮らすよう招くため,そしてすべての者がその職業と天職に喜んで従うことをよりよく奨励するため,そしてそれにより神の恵みにより余の統治に数多くの良く幸福な利益を得られるようにするため,またそもそも今後私的な会合や煽動的な秘密集会から生じかねない危険を防止するため,この余の宣言を発する.

〔イングランド国教会の護持〕
そしてまず第一に,余は余の明示的な決意,考え,意図が次のことにあることを宣言する.イングランド教会は,その教義,戒律,管理において完全に保存され,そうとどまるものとする.そしてこれは,現在そうであるように,公に神を崇拝する一般的な方法の基礎,規則,規準であるものとみなされる.そして正統派で国教に帰依した聖職者はそれに属する歳入を受け,享受する.そして何人たりとも,意見や信条が異なるからといって,その十分の一税その他何であろうと支払い義務から免れることはない.そしてさらに,余は,この余のイングランド王国において厳密に国教に帰依している以外の何人たりとも,聖職禄や位階を保持することができないことを宣言する.

〔刑罰法規の停止〕
余は次に,余の意思と喜びが次のことにあることを宣言する.教会上の問題におけるあらゆる種類の非国教徒,国教忌避者に対するすべての,そしてすべての形の刑罰法規の執行はただちに停止されるものとする.そしてすべての裁判官,巡回裁判および未決囚一掃審理の裁判官,州長官,治安判事,市長,郡代,その他教会関係,世俗を問わずあらゆる官吏はその停止に留意し,それにしかるべく従う.

〔非国教徒の集会の容認〕
そして余の臣民が非合法な会合や秘密集会を続ける口実がなくなるよう,余は折に触れて,望まれる十分な数の場所を,余の王国の全域において,イングランド教会に帰依しない者が公に礼拝し,献身するための会合,集会の用のために認めることにし,そのような場所はすべての人に対して開かれ,自由であるものとする.
しかし,しかるべく統制されなければこの余の信仰自由化によって混乱や不自由が生じるかもしれず,それを防止するため,そして彼らが世俗の行政官によってよりよく保護されるようにするため,そのような場所が認められ,その信徒集団の教師が余の承認を得るまでは,余の臣民はいかなる場所においても会合をもつようなことをしないことが余の明示的な意思および喜びである.

〔寛容の範囲〕
そして,この制約によって,余の前記認可と承認を得るのが困難になるとの懸念されることがなきよう,余はさらに宣言する.公共の礼拝の場の認可と教師の承認についてのこの余の信仰自由化は,ローマカトリック教の国教忌避者を除き,あらゆる種類の非国教徒,国教忌避者に適用される.ローマカトリック教徒については,余は決して礼拝のための公の場所を認めることはなく,ただ,刑罰法規の執行からの共通の免除は認め,そして個人宅においてのみのその礼拝の実践は自由とする.

そしてもしもこの余の慈悲と信仰自由化ののちに,余の臣民の何人かがこの自由を濫用して,煽動的な説教,もしくは確立された教会の教義,戒律,管理を貶める説教をしたり,あるいは余によって認められた場所以外で会合した場合には,余はここに警告として宣言する.そのような者らに対し,余は考えられる限りの厳しさをもって訴追し,真に慈しみある良心には自由を認めるのと同じように,かくも正当な挑発を受けた場合には厳しさをもってそのような違反者を罰することを示すことであろう.



テキストは Seventeenth-Century Resources を用いた.
(C) 2004.2. 友清理士; 訳文の最終修正日2004.2
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