1763年の国王布告

(歴史文書邦訳プロジェクト)

1763年の国王布告: Royal Proclamation of 1763
1763年2月に締結された七年戦争の講和条約によりイギリスがフランスから獲得した北米領土を4つの植民地として整備した,同年10月の国王ジョージ3世の布告.戦後,西方に新天地を求める植民者に対するインディアンの不満が募っており,インディアン宥和のため,植民者の西方拡張禁止が主眼となっている.

去る二月十日,パリにて締結された先の最終的な講和条約によって余の王室に確保されたアメリカにおける広大にして価値ある獲得領土について熟慮し,余の王国ならびに余のアメリカでの植民地における余の忠実なる臣民すべてが,あたうるかぎりのすみやかさをもって,これより生ずるに相違ない,彼らの通商,製造,航海に対する多大な恩恵と利益にあずかれることを望み,余は余の枢密院の助言を受けてこの余の国王布告を発布し,ここに余の忠実なる臣民すべてに対し,余は余の前記枢密院の助言を受けて,前記条約によって余に割譲され,確認された国土と島々の領域内に四つの相異なる別個の政府を設立し,ケベック,イーストフロリダ,ウエストフロリダ,グレナダの名で呼ばれるそれらの限界と境界は以下の通りとし,余の英国の国璽を捺した開封勅許状を下したことを公にし,宣言することとした.

第一―ケベック政府のラブラドル側の境界は〔セントローレンス川北岸の〕サンジャン川,そしてそこからその川の源を起点としてサンジャン湖を通り,ニピシム湖〔オンタリオ湖北東のニピシング湖〕の南端に至る線,そこからは前記の線は北緯四十五度にてセントローレンス川,シャンプレーン湖を横切り,前記セントローレンス川に注ぐ水系を海に注ぐ水系から分ける高地地方に沿って〔東に〕進む.そしてまたシャレール湾の北岸,そしてセントローレンス湾の沿岸に沿ってロジエ岬に,そしてそこからセントローレンス川の河口を横切ってアンティコスティ島の西端を通り,前記サンジャン川で終わる.

第二―イーストフロリダの政府.西側の境界はメキシコ湾とアパラチコーラ川,北側は同川のチャタフーチー川とフリント川が合流する部分〔チャタフーチー川とフリント川が合流してアパラチコーラ川になる〕からセントメアリー川の源へ,そして同川の流れに沿って大西洋へ.東側と南側は大西洋とフロリダ湾で,沿岸より六リーグ以内のすべての島々を含むものとする.

第三―ウエストフロリダの政府.南側の境界はメキシコ湾のアパラチコーラ川からポンシャルトラン湖までで,沿岸より六リーグ以内のすべての島々を含むものとする.西側は同湖,モールパ湖,そしてミシシッピ川,北側はミシシッピ川の北緯三十一度の部分からアパラチコーラあるいはチャタフーチー川に真東に引いた線.そして東側は同川.

第四―グレナダの政府はその名の島およびグレナディン諸島,ドミニカ,セントヴィンセント,トバゴの各島を含む.そして余の臣民の自由で開かれた漁業がラブラドル沿岸や隣接する諸島にも広がって行なわれるようにするため,余は余の枢密院の助言を受けて,サンジャン川からハドソン海峡までの沿岸全体を,アンティコスティ島,マグダレン諸島,そして前記沿岸にある他のすべての小島とともに,余のニューファンドランド総督の管轄下におくことを適当と考えるに至った.

余はまた,余の枢密院の助言を受けて,サンジャン〔現プリンス・エドワード〕,ケープブレトン別名ロイヤルの各島をそれらに隣接する小島とともに余のノヴァスコシアの政府に併合するのを適当と考えるに至った.

〔植民地議会,適用法,司法について〕
そして余の忠実な臣民に,これらの地の住民およびこれから住民となる者の自由と財産の安全保障に対する余の父なる心づかいを知らしめることは前記した余の新たな各政府がすみやかに発足するのに大いに資するであろうがゆえに,余はこの余の布告によって,次なることを公にし宣言することを適当と考えるに至った.余は前記各政府を設立する余の英国国璽を捺した開封勅許状において余の前記植民地それぞれの総督に対し,前記植民地の状況が許し次第,余の行政参議会員の助言と同意を得て,余の直接の統治下にあるアメリカにおける植民地および属州においてならわしとなり行なわれてきたようなやり方と形において,前記政府内における議会をそれぞれ召集するよう,明示的な権限と指示を与えた.そして余は前記総督に,余の前記行政参議会および前述したように召集された人民の代表の同意を得て,イングランドの諸法にできるだけ調和し,他の植民地においてならわしとなっているような規制と制約のもとで,余の前記植民地そしてその人民と住民の公共の平和,福利,そしてよき統治のための法,制定法,条例をつくり,制定し,規定する権限を与えた.そしてその間,前述したように議会が招集されるまで,余の前記植民地に居住する,もしくはでかけるすべての人々は,国王たる余の保護を信頼することができ,余のイングランドの王国の諸法の恩恵を享受できる.その目的のために,余は余の国璽のもとに,余の前記植民地の総督それぞれに,余の前記行政参議会の助言をそれぞれに受けて,余の前記植民地のうちに,刑事民事を問わずあらゆる訴訟を普通法と衡平法に従って,イングランドの諸法にできるだけ調和するように,審理し,裁くための裁判所を構築,設立する権限を与えた.そのような裁判所の判決により不当に扱われたと考えるすべての人々は,すべての民事裁判において,通常の制限と制約のもとに,枢密院において余に上訴することができる.

〔総督の裁量〕
余はまた,前述したように余の枢密院の助言を受けて,大陸部における余の前記三つの新植民地の総督,行政参議会に対し,現在もしくは今後余が処置する権限をもつような土地,保有財産,相続可能財産について,余の前記新植民地の住民あるいはそこにでかけるいかなる人々とも調停をし合意に至る完全なる権限と権威を与えることを適当と考えるに至った.そして総督はそのような人あるいは人々に対し,余の他の植民地において定められ,定着しているような条件において,適度の免役地代のもとに,そして被授与者の利益ならびに余の前記植民地の向上と定着のために余が必要と思うような他の条件のもとに,任官や下付を認めることができる.

〔従軍者への報い〕
そして,余はあらゆる機会において,余の軍隊の士官や兵士の行動と勇気とに気づいており,是認していることを示し,彼らに報いることを望むものであるがゆえ,余はここに,余の前記三つの新植民地の余の総督に,そして北アメリカ大陸における余の属州それぞれの他の余の総督すべてに対し,料金や見返りを求めることなく,困窮した士官で先の戦争において北アメリカで従軍した者,そして北アメリカで除隊したか除隊することになっている兵卒で,実際にそこに居住しており,個人でそれを申請する者に,下記の量の土地を与えることを命令し,その権限を与えるものである.それは十年の期間が経過したのちには,それが与えられた属州において他の土地に適用されている免役地代が適用され,また耕作と改良の同じ条件が適用されるものとする.土地の量は次の通り.
佐官の階級の者すべてに―五〇〇〇エーカー
大尉すべてに―三〇〇〇エーカー
準大尉または参謀士官すべてに―二〇〇〇エーカー
下士官すべてに―二〇〇エーカー
兵卒すべてに―五〇エーカー
余は同様に,北アメリカ大陸におけるすべての余の前記植民地の総督ならびに軍司令官に対し,同様の量の土地を同じ条件において,余の海軍で同様の階級の困窮せる士官で,先の戦争でルイスバーグ,ケベックの攻略の時に北アメリカで余の軍艦に乗艦して従軍しており,個人的に余の各総督に申請する者には与えるよう,権限を与え,求めるものである.

〔インディアンの狩猟地としての西方の留保〕
そして余がつながりをもつそれぞれの国家あるいはインディアンの部族で余の保護のもとに生活するものが,余の属領と領土で余に割譲も購入もされていずに彼らまたはその一部に狩猟地として留保されている部分の保有を妨げられたり乱されたりしないことが,正義であり,妥当であり,そして余の利益また余の植民地の安全にとって必要不可欠であるがゆえに,余はここに,余の枢密院の助言を受けて,余の意志と希望とを宣言する.余のケベック,イーストフロリダ,ウエストフロリダの植民地のいずれかにおける総督あるいは軍司令官たる者は,いかなる主張に基づくものであろうと,彼らの辞令に述べられているそれぞれの政府の境界を越えて測量許可証を与えたり,土地の権利証を発行したりするようなまねをしてはならない.またアメリカにおける余の他の植民地または拓殖地における総督あるいは軍司令官は当面,あるいは前述のように余に割譲も購入もされていず,前記インディアンあるいはその一部のために留保されているいかなる土地についても,余のさらなる希望が伝えられるまでは,西部あるいは北西部より大西洋に注ぐどの川についても,その源流や水源を越えたいかなる土地にも測量許可証を与えたり権利証を発行したりするようなまねをしてはならない

そして余はさらに余の意志と希望とを宣言する.前述したのと同じように当面は,余の前記三つの新植民地の限界内,あるいはハドソン湾会社に与えられた領土の限界内に含まれないあらゆる土地と領土は,また同様に前述したように西部あるいは北西部から海に注ぐ川の源流より西に位置するあらゆる土地と領土は,余の主権と保護,支配のもとに前記インディアンの使用のために留保する.

そして余は,余の忠実なる臣民すべてに対し,上記にて留保された土地のいかなる部分についても,購入,入植といったことをしたり所有したりすることをここに固く禁じ,これにそむく者は余の不興をこうむるものである.

そして余はさらに,意図的あるいは意図せずして上に述べられた国土の範囲内の土地に,あるいは余に割譲も購入もされていず前述したように前記インディアンにいまだ留保されている他の土地に住み着いたあらゆる人々に対し,ただちにそのような定住地から立ち退くようきつく申しつけ,求めるものである.

〔インディアンの土地の取得禁止〕
そしてインディアンの土地の購入に際しては著しい不正と悪弊が犯されてきて余の利益への甚大な害と前記インディアンの大いなる不満となってきたゆえに,今後においてそのような変則的な事態を防止し,インディアンが余の公正およびあらゆる妥当な不満の原因を取り除こうとする断固たる決意を確信するようにするため,余は余の枢密院の助言を受けて,いかなる個人も,余の植民地のうち余が定住を認めるのが適当と考えた範囲内において前記インディアンに留保されているいかなる土地も前記インディアンより購入するようなまねをしてはならないものと,きつく申しつけ,求めるものである.しかし,何らかの時点において前記インディアンのいずれかが前記の土地を処分したい意向をもった場合には,その土地は余のためにのみ,余の名において購入されるべきであり,それはその土地がある余の植民地それぞれの総督または軍司令官によってその目的のために開催される前記インディアンの何らかの公の会合もしくは集会において行なわれる.その土地が〔王領植民地でなく〕領主政府の管轄内にあった場合には,それはその領主の名においてその領主のためにのみ,余または領主がその目的のために与えるのが適当と考える指示と指令に従って,購入されるべきである.そして余は余の枢密院の助言によって,前記インディアンとの交易は余の臣民すべてに対して自由であり,開かれているものと宣言し,申しつける.ただし,前記インディアンと交易をする意向をもつ者はみな,そのような交易を行なう免許状を,その者が居住する余の植民地のいずれかの総督または軍司令官から取得し,余自身またはこの目的のために任命され,前記交易増進を指揮し,定める余の代理官らによって余が随時適当と考えるような規制を遵守する担保を提供するものとする.

そして余はここに,余のすべての植民地―余の直接の統治下にある植民地のみならず領主の統治と指揮下にあるものも―のそれぞれの総督,軍司令官に,そのような免許状を料金や見返りを求めることなく発行し,その中には特別の注意をもって,そのような免許状が交付された人物が前述したように余が定めることを適当と考えた規制を遵守することを拒んだり怠ったりした場合にはそのような免許状は無効となり,担保は没収されるとする条件を挿入するよう,権限を与え,申しつけ,求めるものである.

〔犯罪人の逃亡阻止〕
そして余はさらに,軍士官のみならず前述したように前記インディアンの使用のために留保された領土内でのインディアン問題の管理と指揮に携わるあらゆる担当官に対して,反逆罪,反逆罪の犯罪隠匿,殺人,あるいは他の重罪,軽罪での告訴を受けて裁きを逃れて前記領土に避難するあらゆる人物を拘束し,逮捕して,彼らを適切な護衛のもとに起訴原因となった犯罪の行なわれた植民地に送り,それに対する裁判を受けさせるよう,別して申しつけ,求めるものである.

余の治世第三年,一七六三年十月第七日,セントジェームズの余の宮殿にて発する.

神が国王を救われんことを.

テキストはAvalon Projectは欠落が多く,結局Virtual Law Officeを主として参照した.

(C) 2003.9. 友清理士; 訳文最終修正日2005.6
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