摂政法(1706, 1708)

(歴史文書邦訳プロジェクト)

摂政法:Regency Act
アン女王が世継ぎなく薨去した場合に摂政委員会を発足させてハノーヴァー家への王位継承が順調に行なわれる手続きを定めた法(一七〇六).
同時に一七〇一年の王位継承法に関連して,内閣を廃して枢密院中心の政治に回帰する条項と官職保有者を下院議員欠格とする条項を撤廃したことの意義が大きい.その上で官職保有者については,特定の官職保有者に対してのみ欠格とする妥協的な規定をしている.
一七〇六年三月,摂政法は帰化法とともにハノーヴァー家に届けられたが,翌一七〇七年にイングランド・スコットランドの合同が成立したため,そのことをふまえてほぼ同内容のものが一七〇八年に改めて制定された.ここに訳出するのはその一七〇八年版である.
なお,G. Holmes (1966) によると,1706年の法と1708年の法の違いは,スコットランドのための若干の配慮のほかは些末なことのみ.なお,1706年の法における枢密院回帰と官職保有者排除についての王位継承法の条項廃止は1708年の法では(当然)繰り返される必要がなかったとのことである(The Attack on "the Influence of the Crown", Bulletin of Historical Research, vol. XXXIX).

イングランドとスコットランドの幸いなる合同により,今上陛下(神の恩寵によりそのお命が長からんことを)の治世第四年〔一七〇五年〕のイングランド議会において可決された「女王陛下の身体と政府ならびにイングランド王位のプロテスタント系列への継承のさらなる安全のための法」と題する法〔1706年の最初の摂政法;1705年秋から1706年春にかけての議会を「1705年の議会」と言うらしい〕に関連してさまざまな変更を加え,同法の規定を連合王国全体に拡大して我らの仁慈深い君主の身体と政府ならびにグレートブリテンの王位のプロテスタント系列への継承のさらなる安全を,現在この王国の法と制定法によって決着され,限定され,規定されているように保障することが必要となっている.

〔第一条〕〔文書による今上の王位否定の禁止〕
したがって,女王によって,この本議会に会したる聖俗貴顕と庶民の助言と承認により,またそれをもって,そして同議会の権威によって以下のことが立法化される.もし何人かが悪意をもって,故意に,直接に,書面もしくは印刷物によって,@我らの君主たるこれら諸王国の女王が現在そうあらせられるようなこれら諸王国の合法的かつ正当な女王ではないということを,Aまたは僭称せるウエールズ太子(現在自らをグレートブリテン国王もしくはイングランド国王また名前ではジェームズ三世,またはスコットランド国王また名前ではジェームズ八世と称している)がこれら諸王国の王位に何らかの権利や資格があるということを,Bまたはこれに関し,イングランドにおいて永遠に祝福され輝かしい追憶のうちにある故ウイリアム国王およびメアリー女王の治世第一年に制定された「臣民の権利と自由を宣言し,王位の継承を定めるための法」と題する議会法
〔1689年の権利章典〕ならびにイングランドにおいて前記故ウイリアム三世国王の治世第十二年に制定された「王位のさらなる限定ならびに臣民の権利および自由のよりよき安全のための法」と題するもう一つの法〔1701年の王位継承法;1700年秋から1701年春にかけての議会を「1700年の議会」と言うらしい〕ならびに先ごろイングランドとスコットランドにおいてそれぞれ両王国の合同のために制定された諸法〔1707年のイングランド・スコットランド合同法〕に反する何人かがこれに関して何らかの権利や資格をもっているということを,Cまたはこの王国の国王や女王が議会の権威をもって,またそれにより王位やその継承,限定,相続,統治を限定し拘束するに十分な効力と有効性をもった法や制定法をつくることができないということを主張したり是認したりした場合,そのような者はすべて大逆罪で有罪であり,それにより法に則って有罪となるものであり,反逆者と宣告され,死刑ならびに大逆罪の場合におけるあらゆる喪失および没収を被るものとする.

第二条〔口頭による今上の王位否定の禁止〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.もし何人かが悪意をもって,直接に,説法,説教,もしくは故意の発言によって,@我らの君主たる女王が現在そうあらせられるようなこの王国の合法的かつ正当な女王ではないということを,Aまたは僭称せるウエールズ太子(現在自らをグレートブリテン国王もしくはイングランド国王また名前ではジェームズ三世,またはスコットランド国王また名前ではジェームズ八世と称している)がこれら諸王国の王位に何らかの権利や資格があるということを,Bまたはこれに関し,イングランドにおいて永遠に祝福され輝かしい追憶のうちにある故ウイリアム国王およびメアリー女王の治世第一年に制定された「臣民の権利と自由を宣言し,王位の継承を定めるための法」と題する議会法
〔権利章典〕ならびにイングランドにおいて前記故ウイリアム三世国王の治世第十二年に制定された「王位のさらなる限定ならびに臣民の権利および自由のよりよき安全のための法」と題するもう一つの法〔王位継承法〕ならびに先ごろイングランドとスコットランドにおいてそれぞれ両王国の合同のために制定された諸法〔イングランド・スコットランド合同法〕に反する何人かがこれに関して何らかの権利や資格をもっているということを,Cまたはこの王国の国王や女王が議会の権威をもって,またそれにより王位やその継承,限定,相続,統治を限定し拘束するに十分な効力と有効性をもった法や制定法をつくることができないということを主張したり是認したりした場合,そのような者はすべてリチャード二世国王の治世第十六年にイングランドにおいて制定された王権蔑視罪法において言及されている王権蔑視罪の危険と処罰を被るものである.

第三条〔言論の自由〕
ただし,前述した権威により以下のことが立法化される.何人たりとも本法の効力によって口頭の言葉を理由として訴追されることは,そのような発言の情報が一人以上の治安判事に対する宣誓の上で発されたものでない限り,ないものとする.そしてそのような罪の訴追はそのような情報ののち三か月以内とする.また,何人たりとも本法の効力によってそのような口頭の言葉を理由として訴追されるのは,信用できる二人の証人の宣誓〔証言〕によってのみとする.

第四条〔君主の薨去時の議会の継続〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.この現議会また今後アン女王陛下やその世継ぎもしくは継承者によって招集される他のいかなる議会も,前記女王陛下やその世継ぎもしくは継承者の薨去によって終了もしくは解散されることはないものとする.むしろそのような議会は,継続され,ここに権限を与えられ,またそのような薨去の時点において適当である場合には要求され,ただちにそのような薨去にもかかわらず活動を続けるものであり,ここにそのように立法化される.その期間は高々六か月であるが,前述した王位継承を限定し決着させる法ならびに合同法に従ってこのグレートブリテン王国の王位が継承される人物によってそれより早く停会ないし解散される場合はその限りではない.そしてもし前記議会が停会された場合には,その停会期限の日において〔再び〕会し,着席し,前記した六か月の期間の残りの期間の間継続される.ただし,それより早く前述したように停会ないし解散される場合はその限りではない.

第五条〔君主の薨去時に議会が休会中であった場合〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.女王陛下,その世継ぎや継承者の死の時点で議会が存在していながらたまたま休会ないし停会中で散会していた場合には,その議会はそのような薨去ののちただちに会し,集会し,着席し,そのような薨去にもかかわらず活動する.その期間は高々六か月であるが,それより早く前述したように停会ないし解散される場合はその限りではない.

第六条〔君主の薨去時に議会が解散されていた場合〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.そのような薨去の時点で会し,着席している議会が存在していない場合には,その直前最後に行なわれていた議会がただちにウエストミンスターにて集会し,着席し,その議会が解散されなかったかのごとく,あらゆる意味において前述したように継続される議会たるべきこととする.ただし,前述したように停会ないし解散されることはあり得る.

第七条〔君主の解散権・三年議会法の確認〕
ただし,ここに宣言する.本法に含まれるいかなることも,女王やその世継ぎもしくは継承者が議会を停会もしくは解散する権限を変更したり制限したりするであるとか,前記した亡き国王ウイリアムおよび女王メアリー両陛下の治世第六年にイングランドにおいて制定された「議会の頻繁な集会と招集のための法」と題される議会法
〔1694年の三年議会法〕を撤廃したり無効にしたりするなどと拡大されるものではなく,またそのように解釈してはならない.前記法は本法の規定に反したり矛盾したりしないあらゆる点において効力を持ち続けるものである.そして前記議会の頻繁な集会と招集のための法はここにグレートブリテン議会に拡大されるものと宣言され,立法化される.それは完全にして有効なる形における拡大であり,あらゆる意味・解釈においてであり,あたかも同法がここにおいて個別に引用され立法化されているがごとくであるものとする.

第八条〔君主の薨去時の枢密院その他の官職の継続〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.女王陛下やその世継ぎもしくはグレートブリテン王国の継承者の枢密院は女王陛下や世継ぎもしくは継承者の薨去によって終了もしくは解散されることはないものとする.そのような枢密院はそのような薨去ののち次の六か月の間継続,活動する.ただし,それより早く本王国の主権者の王冠が限定され,移行し,留まり相続されるべく指定されている次の継承者によって終了された場合にはこの限りではない.またグレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書,グレートブリテンの大蔵卿,グレートブリテンの枢密院議長,グレートブリテンの王璽尚書,グレートブリテンの海軍卿,また女王や国王の宮中での現在のの要人の職はいずれとも,またグレートブリテンもしくはアイルランド王国,ウェールズ属領,ベリック・アポン・ツイード市,ジャージー,ガーンジー,オールダニー,サークの各諸島もしくは女王陛下のすべての拓殖地の域内におけるいかなる官職,地位,ポストも武官か文官かを問わず現女王陛下やその世継ぎや継承者たるこの王国の女王や国王の薨去を理由として無になることはないものとする.そうではなく前記グレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書,グレートブリテンの大蔵卿,グレートブリテンの枢密院議長,グレートブリテンの王璽尚書,グレートブリテンの海軍卿,宮中の要人,また前述したいかなる官職,地位,ポストにある他のすべての者も,それぞれの官職,地位,ポストにそのような薨去ののち次の六か月間は留任するものとする.ただし前述したような次の継承者によって更迭ないし罷免された場合はこの限りではない.

第九条〔国璽・王璽・玉璽〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.グレートブリテンの国璽,王璽,玉璽ならびに女王陛下やその世継ぎもしくは継承者の薨去の時点において存在する他のすべての公印は引き続き有効であり,引き続き継承者のそれぞれの印章として,そのような継承者がそれを無効とする命令を出すまで使用されるものとする.

第十条〔王位継承者の布告〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.女王陛下が(神の恩寵によりそのお命が長からんことを)その血を引いた世継ぎなく薨去し世を去られるようなことがあった場合には,女王陛下の薨去の時点において存在しているグレートブリテンの枢密院は,可能な限りすみやかに先に挙げた諸法の効力によってグレートブリテンの王位を受ける資格がある次のプロテスタントの継承者をして公に厳粛に,グレートブリテンおよびアイルランドにおいて,これまでの国王や女王がそれぞれその先代の薨去後に宣言されたのと同じ様式と仕方によって布告されるようはからうものとする.そして前記枢密院のうちでそのような布告がなされるのを故意に怠ったり拒んだりするすべての顧問官は大逆罪で有罪であり,それにより法に則って有罪となるものであり,反逆者と宣告され,死刑ならびに反逆罪の場合におけるあらゆる喪失および没収を被るものとする.そしてまた前記グレートブリテンおよびアイルランドの王国内におけるすべての官職保有者で,前記枢密院によってそのような布告をすることを求められつつそれを故意に拒んだり怠ったりする者は,反逆罪で有罪であり,それにより法に則って有罪となるものであり,反逆者と宣告され,死刑ならびに反逆罪の場合におけるあらゆる喪失を被るものとする.

第十一条〔施政官(摂政委員会)〕
そして女王陛下の薨去の時点において次のプロテスタントの継承者がグレートブリテンの王国外の海外の場所にいる可能性が考えられるため,前述した権威により以下のことが立法化される.すなわち,そのようなプロテスタントの継承者の名前において彼女もしくは彼がグレートブリテンに到着するまで政府の施政を継続するため,下に指名される七名の閣僚,すなわち女王陛下の薨去の時点において次の官職を保持している者―その時点におけるカンタベリー大主教,その時点におけるグレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書,その時点におけるグレートブリテンの大蔵卿,その時点におけるグレートブリテンの枢密院議長,その時点におけるグレートブリテンの王璽尚書,その時点におけるグレートブリテンの海軍卿,その時点における女王座部裁判所の首席裁判官―は,本法の効力によりグレートブリテンの施政官を構成するものとされ,任命され,本法の効力により継承者の名において,その継承者が到着するか別の権威代理人を決めるまで,彼女および彼の代わりに,あらゆる権限,権威,事項,国事行為,政府の施政を行使し,執り行なうものとする.それはそのような継承者が,もし彼女もしくは彼が自らこのグレートブリテンの王国内にいた場合にそれを行使し,執り行なうことができるのと同じように完全に余すところのないものとする.

第十二条〔ハノーヴァー家が任命する施政官;多数決〕
それにもかかわらず,さらに前述した権威により以下のことが立法化される.前述した限定によって女王陛下が世継ぎなく薨去された場合にこの王国の王位を次に継承することになっている人物は,女王陛下の存命中のいかなる時にでも,彼女または彼の署名と印章のある三通の文書によって,前述した施政官として先に名を挙げた七名に加えて,彼女もしくは彼が適当と考える人物を適当と思う人数だけ指名し,任命する権限をここに与えられるものとする.ただしその人物はこのグレートブリテン王国の本来の生まれの国民であるものとし,彼女および彼の意思や気持ち次第で取り消したり変更したりできるものとする.それらの人物は本法の権威により,施政官として先に名を挙げた七名とともに活動する権限を与えられるものとし,それは彼らがここに個々に指名されている場合と同様に完全なものとする.その前記施政官もしくはそのうちの出席している多数者は(ただし多数とは五名以上であるとする)先に述べられたあらゆる権限と権威を行使し,執り行なうことができる.それはあらゆる意味において完全で有効なもので,あたかも全員が出席し同意した場合と同様であるものとする.
〔注:ジョージ一世が任命した施政官の人数は18となっており,前条による職務上自動的に施政官となる7名と合わせて25名となった.当初ハノーヴァー選帝侯太妃ゾフィアが指名したのも18名(+「ヨーク大主教(当面の間)」)〕

第十三条〔ハノーヴァー家が任命する施政官のリストの管理〕
そして前述した権威により以下のことが立法化される.前記三通の取り消しないし変更可能な文書については,その信用証書が大法官府裁判所において,そしてまたカンタベリー大主教とグレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書に,厳封して登録されるものとする.それらがそのようにして送付されたのち,前記三通の文書はそれぞれの封筒に入れられ,それは
〔ハノーヴァーの〕駐在公使,カンタベリー大主教,グレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書の三つの印章によってそれぞれに封印される.その一通は封印されたのち駐在公使の手に寄託され,もう一通は前記カンタベリー大主教の手に,もう一通はグレートブリテンの大法官もしくは国璽尚書の手に寄託される.そして次の継承者が前述したように彼女もしくは彼の指名や任命を取り消したり変更したりする気になり,彼女または彼の署名と印章のもとなる同趣旨の書状三通によって前述したように寄託されている前記文書を,その文書でそれを受け取るべく権限を与えられたある人物もしくは人物らに届けるよう求めた場合には,その場合,前記文書が寄託されている前記人物らは,そのみなが―そのうちの何人かが逝去した場合にはそのそれぞれの執行人もしくは財産管理人および前記文書のいずれか一通を保管する他の何人でもが―前記文書をしかるべく届け出なければならない.その者たちはここにそれぞれそのようにする権限を与えられ,またそのようにすることを義務づけられるものである.そしてもし前記文書がそのようにして寄託される人物らの何人かが女王陛下の存命中に逝去するかもしくはそれぞれの官職もしくは地位から去っていた場合には,そのような人物もしくは人物ら―逝去の場合にはそのそれぞれの執行人もしくは財産管理人および前記文書のいずれか一通を保管する他の何人でも―は,可能な限りすみやかに,彼のもしくは彼らの保管するその文書を前述したように逝去ないしは去る人物の継承者もしくは継承者らに届け出るものとする.前述したように封印され寄託された前記文書のおのおのは,女王陛下が世継ぎなく薨去した場合にはただちに枢密院の前にもたらされ,そこで開封され,読まれ,その後大法官府裁判所に登録されるものとする.

第十四条〔リスト管理者の義務〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.もしも前述したように前記文書が寄託される人物のいずれか,またはその執行人もしくは財産管理人もしくは前記人物らのいずれかの逝去ののちに同文書を保管する他の何人でもが,前記文書のいずれかを開封したり,あるいは彼もしくは彼らが前述したように保管する前記文書を,前述したように前記枢密院の前に提出することを故意に怠ったり拒んだりした場合には,そのように開封したり怠ったり拒んだりした者はすべて王権蔑視罪法によって科される王権蔑視罪の罰を被るものである.

第十五条〔リストが3通揃わなかった場合〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.もしも前述したように寄託された前記文書のすべてが前述したように前記枢密院の前に提出されなかった場合には,前述したように提出された前記文書の一通もしくは二通がそこに指名されている人物らに前述したような権威を与えるのに有効であるものとし,それは三通とも提出された場合と変わりはないものとする.そしてもしそのような文書による指名がなかった場合には,前記七名の官職保有者もしくはそのうちの五名がグレートブリテンの施政官とされ,任命され,ここに本法で言及された権限と権威を授与されるものである.

第十六条〔1706年の摂政法に基づくリストの有効性の確認〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.前記した女王陛下の身体と政府ならびにイングランド王位のプロテスタント系列への継承のさらなる安全のための先の法に従って次の継承者によってすでになされ,前述したように寄託された文書によって示される指名や任命は,そのようにしてイングランド施政官に指名された人物らをグレートブリテンの施政官とし,任命するのに有効であると見なされる.それはあらゆる意味・解釈においてであり,あたかもそのような指名や任命が本法に従ってなされた場合と同様であるものとする.

第十七条〔施政官の権限の制限〕
そしてさらに,以下のことが立法化される.前述したように任命された前記施政官は前述したように継続され,会し着席するよう命じられた議会を継承者たる女王もしくは国王からの明示的な指示なしに解散しないものとする.そして前記施政官らは,国王チャールズ二世の治世第十三年および十四年にイングランドにおいて制定された「公共の祈祷,サクラメントの施行,その他の儀式や礼典を統一するため,ならびにイングランド国教会における主教,牧師,執事を任命し,叙任し,聖別する形式を確立するための法」と題する法律
〔1662年の礼拝統一法〕ならびにスコットランドにおいてその地での議会の先の会期において制定された「プロテスタントの宗教および長老派教会の統制のための法」〔1706年の教会保障法〕を撤廃したり変更したりする法案ないし諸法案に対して議会において王権による裁可を与えることはここに制限され,不可能なものとされる.前記諸法を撤廃したり変更したりする法案もしくは諸法案に王権による裁可を与えることに同意する前記施政官のすべての各人は,みなおのおの大逆罪で有罪であり,大逆罪の場合に沿って罰され,没収される.

第十八条〔宣誓〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.前記施政官らはその前記職務もしくは本法によって与えられるいかなる権威においてであれ行動ないし介入する前に,イングランドにおいて故ウイリアム国王とメアリー女王の治世第一年に制定された「忠誠ならびに至上権の宣誓を廃し,別の宣誓を規定するための法」と題する法において述べられている宣誓,ならびに下
〔二十条〕に掲げられ,女王陛下がその血を引く世継ぎなく薨去したのちに行なうべく立法化される宣誓を行なうものとする.その宣誓は本法の効力によって継続される枢密院の前で行なわれるものとし,枢密院はここに同宣誓を執り行なうことを求められ,その権限を与えられる.そしてすべての上下両院議員およびすべての枢密院の顧問官および軍民を問わずあらゆる官職,地位,ポストにあるすべての官吏もしくは人物で前述したようにこの法により留任させられる者は,前記宣誓を行ない,この王国の法および制定法によってそれぞれの官職,ポストについたり留任したりする資格として必要とされる他のすべての行為を行なうものとする.それは同じく必要とされる期限内に,同じく必要とされる様式に則って,同じく定められている処罰,刑罰,欠格のもとに行なわれ,あたかも通常の方法によってそのような官職,地位,ポストに新たに選出され,任命され,資格を付与され,任じられた場合と同様とする.

第十九条〔信託を受ける職としての扱い〕
そしてここに以下のことが立法化され,宣言される.この法の効力によって施政官の一員となったすべての各人は,イングランドにおいて信託を受ける職を務める人物であると考えられ,見なされ,イングランドの法および制定法によって信託を受ける前記官職,地位についたり留任したりする資格として必要とされるすべての行為を行なうことを求められるものとする.それは同じく必要とされる期限内に,同じく必要とされる様式に則って,同じく定められている処罰,刑罰,欠格のもとに行なわれ,前記法において,またそれによって求められている通りに行なうものとする.

第二十条〔宣誓の内容〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.女王陛下がその血を引く世継ぎなく薨去した時点よりそののちには,「女王陛下の身体とプロテスタントの系列への王位の継承のさらなる安全ならびに僭称せるウエールズ太子および他のあらゆる僭称者,彼らの公然ないし内密の教唆者の希望を根絶し,関与の終了を宣言するための法」と題される本法
〔1706年の摂政法のこと?〕によって行なわれるべき規定されている宣誓に代わって,前記法によってそこで述べられている前記宣誓を行なうべく求められているすべての人物によって次の宣誓が行なわれるものとする.その宣誓はここに変更される.すなわち,

私(姓名)は,私どもの君主たる__はこの王国およびそれに属する他のすべての__陛下の属領と諸国の合法的で正当な__であることを,神と世界の前で良心のもとに真実に衷心より認め,告白し,証言し,宣言します.そして私は良心のもとに,亡き国王ジェームズの存命中はウエールズ太子を僭称し,その没後はイングランド国王また名ではジェームズ三世を僭称し,自らその称号を帯びている人物がこの王国またそれに属する他のいかなる属領の王位に対してもいかなる権利も資格も有していないと信じていることを,そしてその人物に対するいかなる忠誠も服従も否定し,拒否し,否認することを,厳粛に衷心より宣言します.そして私は__と__〔継承者〕への誠意と真の忠誠を抱き,私の全力を尽くして,__の身体,王冠,権威に対してなされるあらゆる反逆的な陰謀および計略に対してお守りすることを誓います.そして私は__もしくはそのいずれかに対して企まれている反逆や反逆的な陰謀を知ったときには__陛下と__の継承者に対してそれを暴き,お知らせするよう全力を尽くします.そして私は前記ジェームズおよび他のいかなる人物に反してであれ,力の限り王位の継承を,それが「王位のさらなる限定ならびに臣民の権利および自由のよりよき安全のための法」と題される法によってハノーヴァーの選帝侯・公太妃ゾフィア王女およびその血を引くプロテスタントの後継者に限定されている通りに,支持し,維持し,防護することを誠実に約束します.そしてこれらすべてのことを私はその言葉の明白で一般的な意味と理解のもとに,疑いの余地や心理的な逃避や内密な留保といったものいっさいなくして明白に誠実に認めます.そして私はこの認識,証人,否認,否定,約束を心より,進んで,真実に,キリスト教徒としての真の誠意に基づいて行なうものであります.神のご加護を.

第二十一条〔宣誓内容の状況に応じた補正〕
この宣誓の空欄は,前記宣誓が行なわれる際に,彼女もしくは彼の名前を,前記「王位のさらなる限定ならびに臣民の権利および自由のよりよき安全のための法」の定める次の継承者によって女王もしくは国王として埋められるものとする.そしてほかにも「彼女」「彼」の単語をしかるべく加えるものとする.そして前記僭称せるウエールズ太子の死の時点より以降には次の語句,すなわち

そして私は良心のもとに,亡き国王ジェームズの存命中はウエールズ太子を僭称し,その没後はイングランド国王また名ではジェームズ三世を僭称し,自らその称号を帯びている人物がこの王国またそれに属する他のいかなる属領の王位に対してもいかなる権利も資格も有していないと信じていることを,そしてその人物に対するいかなる忠誠も服従も否定し,拒否し,否認することを,厳粛に衷心より宣言します.

は除かれるものとし,同様に語句

前記ジェームズおよび他のいかなる人物に反してであれ,

は省かれるものとし,その代わりに

いかなる人物に反してであれ

と挿入されるものとする.

第二十二条〔ハノーヴァー家の継承者がイギリス到着前に用いる印章〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.そのような次なる継承者の女王もしくは国王は,彼女もしくは彼がグレートブリテンに到着する前に何らかの王権による行為を執行し,なし,あるいは執行せしめ,なさしめたりするために作成して成立せしめる何らかの書面や文書に捺すのに印章をも用いるものとし,いかなるものを用いてもよいものとする.そのような書面や文書は,それがグレートブリテンの国璽もしくはその地で用いられている他の何らかの印章のもとに成立した場合と同じ効力をもつことを意味しており,それは実際にグレートブリテンの国璽もしくは他の公印(そのような書面もしくは文書においてその効力をもつことが意図され,述べられているもの)が捺されているのと同じ力と効力をもつものとする.

第二十三条〔施政官が招集した議会〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.女王陛下が世継ぎなく薨去したのち,継承者たる女王もしくは国王がグレートブリテンに到着する前に施政官により施政官の名による詔書が発行されて議会が招集された場合,継承者たる女王もしくは国王がグレートブリテンに到着することによってそのような議会が解散されるものではなく,そのような到着ののちも新たな詔書なく進行するものとする.

第二十四条〔施政官となるべき大臣職が委員会制だった場合〕
ただし,前記七名の官職保有者のうちグレートブリテンの大蔵卿以外の官職のいずれかがそのような女王陛下の薨去の時点で委員会制をとっていた場合には,そのようなそれぞれの委員会の第一委員
〔the first commissioner〕が前記グレートブリテン施政官を構成する者となり,本法により前記グレートブリテン施政官に授けられているあらゆる権限,権威,事項,国事行為を,本法の指示と規定に従って,用い,行使し,執行するものとする.それは完全で余すことがないものであり,そのような官職が単一の人物の手にある場合と同様であるものとする.グレートブリテンの大蔵卿がおらず,財務部の大蔵卿の官職が委員会制をとっていた場合にはその委員の筆頭の人物〔the first in that commission〕がグレートブリテン施政官を構成する者となる.
〔注:17世紀には大蔵委員会における first commissioner は必ずしも最重要の人物ではなかった.1690 年以降は first commissioner は平民なら財務府長官として,貴族なら第一大蔵卿となる(Handbook of British Chronology)が,この時点ではまだその慣行が確立しきっていなかったためこのような表現になったのだろう〕

第二十五条〔下院議員欠格となる官職など〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.自らの名において,あるいは自分の信託を受けたもしくは自分のために働く何人かの名において,@主の年一七〇五年十月二十五日以降のいずれかの時点に創設もしくは設立された,あるは今後創設もしくは設立される俸給を伴う何らかの王室のための官職もしくは地位についている者は,Aまた戦利品委員もしくは副委員,戦利品事務官もしくは受領官,軍の何らかの会計監査官,何らかの輸送委員,何らかの傷病者委員,何らかの連隊の何らかの担当官,何らかのワイン免許の何らかの委員,拓殖地のいずれかの何らかの総督もしくは副総督,外港のいずれかにおいて雇用されている海軍の何らかの委員のいずれかである人物,Bまた君寵ある間王室から何らかの年金を受けている何らかの人物は,今後招集され開催されるいかなる議会においても下院議員として選出され,着席し,投票することはできないものとする.

第二十六条〔議員が官職を受領した場合の失職;前条に該当しなければ再出馬可能〕
下院議員として選ばれている何人かが議員であり続ける期間中に王室から俸給を伴う何らかの官職を授かった場合には,その人物の選出は無効とされるものであり,ここにそう宣言する.新たな選挙のための新たな詔書が発され,それはあたかもそのような官職を授かった者が自然に逝去した場合と同様とする.ただし,そのような人物は再選されることができ,それはあたかもその地位が前述したように無効になった事情がなかった場合と同様とする.

第二十七条〔委員数の上限〕
また以下のことが立法化される.将来何らかの官職の遂行のためにあまりに多数の委員が任命されたり構成されたりするのを防ぐため,いかなる官職の遂行にあたっても,そのようなそれぞれの官職においてこの本議会の初日以前のいずれかの時点において雇用されたことのある数を超える人数を委員として任命したり構成したりしてはならない.

第二十八条〔軍士官の除外〕
またここに含まれているいかなることも,女王陛下の海軍もしくは陸軍の士官でありそれぞれ海軍もしくは陸軍において新たなもしくは他の辞令を受け取る下院議員には適用されるものではなく,また適用されると解釈もされないものとする.

第二十九条〔罰則〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.ここに欠格とされ,今後開催されるいかなる議会においても着席したり投票したりすることができないと宣言された者がそれにもかかわらずいずれかの州,郡,都市,町,五港の代表としてそのような何らかの議会において選出された場合には,そのような選挙および選出はここにあらゆる意味において無効であると立法化され,宣言される.そしてもし本法によって欠格とされ選出されることができないと宣言された何らかの人物がこの本議会の解散もしくは終結後に今後招集される何らかの議会において下院議員として着席し,投票するようなことがあれば,そのように着席し投票する人物は五〇〇ポンドの額の罰金を科されるものとし,それはイングランドにおいて借金,請求,告訴,情報によってその金を請求した者に与えられるものとする.それにあたってはいかなる言い逃れも保護も法の主張も認められず,訴訟延期も一度しか認められない.

第三十条〔イングランド議会での決定の引き継ぎ〕
そしてさらに以下のことが立法化され,宣言される.イングランドのいずれかの議会の下院において選出され,また着席ないし投票することができないとされたすべての人物は,グレートブリテンのいずれの議会の下院においても選出され,着席し,投票することはできない.

第三十一条〔スコットランドへの代価担当委員の除外〕
そしてさらに,前述した権威により以下のことが立法化される.現在,
〔イングランド・スコットランドの合同法の第十五条で述べられている〕三九万八〇八五ポンド一〇シリングの額ならびに協定に基づく,また両王国の合同の諸条項において述べられている目的に従う代価としてスコットランドに提供される他のあらゆる金額を配分するのための委員である者については,その代価もしくはその一部分を配分するため,またはそのような何らかの代価もしくはその一部分の遂行のため,またはそのような何らかの委員やそれに関係する何事かの職務遂行のため,議会の議員に選出されたり,この,あるいは将来の何らかの議会において着席したり投票したりすることが欠格とされることはないものとする.


テキストは4〜17条は Lewis Melville (1909): The First George によった.それ以外の部分は http://www.jacobite.ca/documents/1707security.htm によった.


(C) 2004.10.24 友清理士; 訳文の最終修正日2004.12.23
革命の世紀のイギリス〜イギリス革命からスペイン継承戦争へ〜    歴史文書邦訳プロジェクト   
inserted by FC2 system