ボズワースの戦い(The Battle of Bosworth, 1485)

概要
1485年にヨーク朝最後の王リチャード3世をヘンリー・テューダー(リッチモンド伯)が破った戦い.ばら戦争にほぼ決着をつけた戦いで,その後,ヘンリー7世が即位してテューダー朝を開く.
ボズワース・フィールドの戦い(The Battle of Bosworth Field)ともいう.戦後しばらくはThe Battle of Redemore [Redmore, Redesmore]と呼ばれていた.

背景
1483年に王位についたリチャード3世に対して,ブルターニュに亡命中のヘンリー・テューダーもイングランド王位継承権を主張していた.父はヘンリー5世妃の子エドマンド・テューダーであり,母マーガレット・ボーフォートはエドワード3世の血を引いているのである.ヘンリー6世亡き後のランカスター派にとって,テューダー家は最後の継承者といえた.
1483年の秋,リチャード3世の最大の支持者だったバッキンガム公が造反に及ぶのに呼応して,ヘンリー・テューダーもイングランド侵攻を試みた.しかし,バッキンガムの謀反をくじいた荒天はヘンリー・テューダーの船団をも大陸に押し戻した.再出港してイングランド南岸に近づいたときにはことは決しており,ヘンリー・テューダーとしても引き返すほかなかった.
1485年,リチャード3世はテューダー派の庇護者ブルターニュ公の周辺に手を回してヘンリー・テューダーの身柄を確保しようとしたが,テューダー派はぎりぎりのところでフランス王と話をつけ,その庇護下に逃れることに成功した.
戦役開始
8月1日,ヘンリー・テューダーは2000ほどの小さな軍勢を率いて出港した.ヘンリー本人は経験の浅い若者だったが,叔父のジャスパー・テューダー(ペンブルック伯),オクスフォード伯ジョン・ドヴィアという頼もしい味方がついていた.目指すはテューダー一族の出身地ウェールズである.テューダー軍は8月7日,ウェールズ西岸のミルフォード・ヘイヴンに上陸した.そのペンブルックシアはジャスパー・テューダーの地盤であり,ヘンリー自身,幼少時に暮らした土地でもあった.
テューダー軍は無抵抗でイングランドのシュローズベリーまで進出し,その軍勢も5000ほどになっていた.
テューダー派侵攻の動きを察知していたリチャード3世は,どこに上陸されても対応できるようイングランド中部のノッティンガムに陣取っていたが,上陸の報を聞くとレスターに軍勢を集結させた.リチャードの軍勢は約1万を擁しており,さらにスタンレー卿(トマス・スタンレー)にも合流を命じていた.
戦闘
8月22日,リチャードはレスターの西20キロほどのボズワース・マーケットの少し南にあるアンビオン・ヒルに陣取った.前衛(西)はノーフォーク公,中央はリチャード自身,後衛(東)はノーサンバランド伯である.ヘンリー・テューダーの軍勢はそこから湿地を挟んだ南西のホワイト・ムーアに野営していた.
日和見のスタンレー卿(トマス・スタンレー)は弟のサー・ウイリアム・スタンレーとともにその6000の兵を率いて馳せ参じていたが,リチャードの軍勢からは離れたところに陣取ったまま合流しようとはしなかった(スタンレー兄弟の位置は,北側とも,南側とも,北と南に分かれていたとも言われる).スタンレー卿の忠誠に疑問を抱くリチャードはスタンレー卿の息子(ストレンジ卿)を人質に取っており,ただちに合流しないと息子の首をはねると脅迫したが,スタンレーの答えは「息子は他にもいる」というものだった.一方,スタンレー兄弟はヘンリー・テューダーと会って内通していたが,最終的な態度は明らかにしていず,ヘンリーもそのどっちつかずの態度にじらされることになる.
お決まりの矢と大砲の応酬に続いてテューダー軍の前衛オクスフォードがリチャードの前衛ノーフォーク公との戦闘にはいった.テューダー軍は間もなく戦力の大半を投入して激戦になり,国王軍ではノーフォークも戦死した.一方,リチャードの後衛ノーサンバランドの3000はリチャードの命令にもかかわらず動かなかった.
リチャードはヘンリー・テューダーがさほど遠くないところにいると知ると,「ディッコンの泉」(ディッコンはリチャードの愛称)として知られる泉でのどをうるおした上で,数百の騎士を伴って敵本陣目指して突撃する.リチャードはヘンリーの旗手を自ら倒すほどの奮戦をしたが,粘り強い抵抗に手を焼いているところで,スタンレーが動いた.サー・ウイリアム・スタンレーの2500の軍勢がリチャードに襲いかかったのだ.これで形勢は決し,リチャードは討ち死にした.リチャードが死ぬと国王軍は潰走となり,戦闘は2時間ほどで終わった.
リチャードの突撃がいかにもわきが甘かったように思われるが,窮地に陥ったリチャードが一発逆転を狙ったとか,スタンレーがなかなか寝返ろうとしないのにしびれを切らしたヘンリー・テューダーが少数の控え兵とともにその方面に向かって動いたときの好機をリチャードが突こうとしたとか,逆にスタンレーが寝返る動きが出たのを阻止しようとしてリチャードが動いたなどという説があるという.
フィクション
小説ではリチャードの突撃はSharon Kay Penman, The Sunne in SplendourやMarjorie Bowen, Dickonのクライマックスで英雄的に描かれている.


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