リチャード三世に関する史料

●『ワークワース年代記』
Warkworth's Chronicle
エドワード4世の治世の最初の13年間(1461〜1474年)の年代記.ジョン・ワークワースによるものとされる.

●『王たる資格』
Titulus Regius(本文書を取り込んだ議会法典)   本体部分だけを読みやすくしたテキスト
リチャード3世が王位につく資格を述べる文書.リチャードの王位就任を求めてリチャードに提出され,リチャードが広く流布させた.リチャード自身が作成させたものと思われる.エドワード4世の事前結婚のため,少年王エドワード5世に王位継承の資格がない,ウォリック伯エドワードは父クラレンスの反逆罪・私権剥奪により欠格,したがってリチャードが正統な王位継承者であるなどとする内容.リチャード3世の唯一の議会(1484年)で法典に取り入れられたが,ヘンリー7世はその最初の議会(1485年)で廃止させ,あらゆる写しを廃棄しようとした.

●『リチャード3世の王位就任』(ドミニク・マンチーニ)
De Occupatione Regni Anglie per Riccardum Tercium(ラテン語;英訳 The Usurpation of Richard III)
参考(引用あり)
イタリアの聖職者Dominic Manciniの同時代の記録.ちょうどエドワード4世の死からリチャード3世の即位にあたる1483年のほぼ4月から7月にかけてイングランドに滞在し,帰国後に記録をまとめ,12月には完成した.その後,行方不明になっていたが,1934になってリールの公共図書館で発見された.
リチャードを敵視するテューダー朝になる前の同時代の貴重な資料だが,少なくとも情報提供者としてDr. John Argentineという少年王エドワード5世の侍医が挙げられており,情報源が偏っていた可能性はある.また,英語やイングランド情勢に疎い著者は伝聞に頼らざるを得なかったはずで,信頼性は疑問視されている(明らかな誤りもある).リチャード3世には批判的だが,テューダー朝時代のような怪物扱いはしていない.

●『クロイランド年代記』(『クロウランド年代記』)
Croyland Chronicle (Chrowland Chronicle)
リンカンシアのクロイランド(クロウランド)のベネディクト会の修道院の遺した年代記で,リチャード3世に関係する時代のものもある.エドワード4世,5世の枢密顧問官も務めた人物による記録.1486年春に完成.リチャード3世には批判的.

●『ラウスの記録』(ジョン・ラウス)The Rous Roll (John Rous)
『イングランド国王の歴史』(ジョン・ラウス)Historia Regum Anglicae (John Rous)
リチャードの存命中に書かれたらしい前者はリチャードを称え,リチャード死後に完成した後者はリチャードを怪物のように描く.

●『回想録』(フィリップ・ド・コミーヌ)
Memoirs (Philippe de Commines [Commynes])
フランス語版    フランス語版2
コミーヌ(1447‐1511)はブルゴーニュ公に仕え,1472年からはフランスのルイ11世に仕えた高官で,エドワード4世らとも面識があり,重要な歴史的事件の現場にも居合わせている.1489年から1498年にかけて執筆した8巻の回想録はイングランド情勢についても貴重な資料になっている.ただし,特にイングランドについては伝聞が多く,信頼性には疑問もある.情報源としては,フランス亡命時代のヘンリー・テューダーやウイーン大司教カトー(マンチーニと親交あり)があるという.

●『イングランド史』(ポリドア・ヴァージル)
Anglica Historia (Polydore Vergil)
イタリアの聖職者として渡英したのち1510年に帰化.ヘンリー7世の委嘱により1534年に26巻からなる『イングランド史』を刊行.23〜25巻がばら戦争を扱う.公平な叙述を心がけているとはいうが,リチャードを倒したテューダー朝に好意的で,リチャード3世については悪しざまに描く.

●『リチャード三世史』(トマス・モア)
The History of King Richard the Third (Sir Thomas More)
※邦訳『リチャード三世伝』(訳者・藤原博, 出版者・千城, 刊行年・1986)がある模様
シェイクスピアのリチャード3世悪人像のベースになった著作.1513年ごろ英語版とラテン語版を書いたが,いずれも未完成で,トマス・モア没後の1543に刊行された.ただし,写本は1530年代に流布していたという.情報源としてはリチャードの仇敵であるイーリー司教ジョン・モートン(モアが若いころ仕えた人物)に多分に依存している模様.

●『高貴で名高いランカスター家およびヨーク家の統合』(『ホール年代記』) (エドワード・ホール)
The Union of the Noble and Illustre Famelies of Lancastre and York (Hall's Chronicle) (Edward Hall)
1542年に出版.ヴァージル,モアをはじめとする資料を使って編纂.テューダー朝賛美.

●『イングランド年代記要項』(ジョン・ストウ,1565)
Summarie of Englyshe Chronicles (John Stow)
『イングランド年代記』(ジョン・ストウ, 1580, 1592, 1601, 1605)
The Chronicles of England from Brute until this present yeare of Christ 1580

●『イングランド・スコットランド・アイルランド年代記』(ラファエル・ホリンシェッド)
Chronicles of England, Scotland, and Ireland (Raphael Holinshed)
1577〜1578年に出版.シェイクスピアも利用した反リチャードの立場の歴史.当時の標準的な英国史であったという.モア,ホール,ストウなどを参照している.

●『リチャード三世の生涯と治世についての歴史的疑問』(ホレス・ウォルポール)
Historic Doubts on the Life and Reign of King Richard the Third (Horace Walpole)




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