リチャード3世関連小説

The Sun in Splendour (Jean Plaidy, 1982)

イギリス王室にまつわる多数の歴史小説で知られるジーン・プレイディーによる「プランタジネット・サーガ」第14作.エドワード4世の結婚(1464)からリチャード3世の死(1485)までを扱う.王室の女性を扱うのが得意な作者らしく,類書に比べてエリザベス・ウッドヴィル,その母であるルクセンブルクのジャケッタ,エドワード4世の母であるヨーク公妃セシリーの出番が多い.
作者は後年,The Reluctant Queen(邦訳『リチャード三世を愛した女』)で同じ時期を,リチャード3世妃アン・ネヴィルの視点で扱っているが,細かい点では筋運びに相違がみられる.最も目立つのはアン・ネヴィル失踪事件(1472)の扱いだが,史料のないこの事件については作家によって扱いが大きく分かれるところである.ほかにはテュークスベリーの戦い(1471)でのマーガレット王妃の動きやその後のリチャードとアンの再会なども異なっている.
悪人論から称賛論まで両極端な描かれ方をするリチャード3世については,てらいなく淡々と善人説に従っている印象.
各章の概要は以下の通り.
第1部 日の出
1 (p. 15) エリザベス・ウッドヴィル,母ジャケッタの入れ知恵でエドワード4世の気を引く
2 (p. 57) エドワード4世のエリザベス・ウッドヴィルとの秘密結婚
3 (p. 70) 国王の結婚の余波;ウッドヴィルの隆盛;王女出産;王妃の離婚を進言したデズモンドの処刑
4 (p. 102) エドワードがウォリック伯の捕囚に;ウォリック亡命;ウォリックの反攻でエドワード4世が亡命,エリザベス王妃は聖域に;エドワードの復位

第2部 絶頂
5 (p.149) アン・ネヴィルの受難,救出,グロスター公リチャードとの結婚
6 (p.177) ジャケッタの死;ヘースティングズのカレー守備隊長任命と王妃の嫉妬
7 (p.192) エドワードのフランス遠征
8 (p.203) イザベルの死;ブルゴーニュ公女との結婚を狙うクラレンス公ジョージ;クラレンスの死
9 (p.235) 前ブルゴーニュ公に嫁いだマーガレット訪英;スコットランド問題;ブルゴーニュとフランスの和解;エドワード4世の死

第3部 落日
10 (p.267) リチャード,少年王エドワード5世の身柄を確保
11 (p.286) ジェーン・ショアとドーセット侯,ヘースティングズ卿
12 (p.305) ヘースティングズ処刑
13 (p.324) 少年ヨーク公が聖域から出る,リヴァーズ伯らをポンテフラクトで処刑
14 (p.330) リチャード3世即位
15 (p.339) バッキンガム公の乱
16 (p.351) 2王子の死の噂;エリザベス王妃ら,聖域から出る;皇太子(リチャード3世とアンの子)の死;王妃アンの死
17 (p.361) ボズワースの戦い


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