I-1
ランカスター派とヨーク派が王位を争うばら戦争.ランカスター派のヘンリー6世が一冬の間王位を回復したが,ヨーク派のエドワード4世は王位を奪還し,再びヨーク朝の天下となっていた.
しかし,エドワード4世の次弟クラレンス公ジョージはロンドン塔に投獄されることになった.それは口では兄思いの言葉を述べつつ陰で国王に讒言を吹きこんだ末弟グロスター公リチャードのなせるところであった.
I-2
エドワード4世復位の直後にヘンリー6世が亡くなっていた.その棺に付き添っていたのはヘンリー6世の息子であった亡き皇太子エドワードの妻アン.アンは夫と父を殺したリチャードをなじるが,アンの相続財産を狙うリチャードはアンに求愛する.毒づいていたアンも,気がつくとリチャードから指輪を受け取っていた.
I-3
国王エドワード4世は病に倒れ,病床で王妃一族とリチャードやヘースティングズとの和解を望んでいるという.王妃とリチャードらが言い争っていると,ヘンリー6世妃マーガレットが現われ,いがみあっていたみなの批判はランカスター派を率いたマーガレットに向かう.
マーガレットはエリザベス王妃に孤独な死を,リヴァーズ,ドーセット,ヘースティングズには不慮の死を,リチャードには味方に裏切られての死を願って呪う.当初うらみはなかったバッキンガムにも,忠告が顧みられないと見ると,いつか悔いると告げる.
一人になったあと,リチャードはクラレンス公への刺客を送り出す.
I-4
二人の刺客がロンドン塔のクラレンス公のもとにやってくる.一人は良心に目ざめるが,もう一方が手を下す.
II-1
病身のエドワード四世の願いどおり,家臣たちは和解を果たす.クラレンス公赦免の話も出るが,クラレンス公はすでに殺されたことが明らかになる.処刑命令を取り消したと思っていた国王は衝撃を受け,悔いる.
II-2
クラレンス公の遺児二人が父の死を嘆いているところに,エリザベス王妃が夫エドワード四世の死の報せをもたらす.嘆く王妃をどうにかなだめ,ラドローの宮廷にいる皇太子エドワードを呼び寄せ,王位継承の手続きを進めることが決められる.
リチャードとバッキンガムは皇太子を王妃から引き離してその身柄を確保する決意をする.
II-3
ロンドン市民の間では王位を継承するのが年端もいかぬ少年であることに不安の声が聞かれる.
II-4
皇太子をロンドンに連れてくる途中,リヴァーズ伯(王妃の弟),グレー卿(王妃と前夫との間の息子)がリチャード,バッキンガムによって逮捕されてポンフレット城に送られたとの報せがはいる.危険を感じた王妃は下の王子ヨーク公リチャードを連れて聖域にはいることにする.
III-1
少年王エドワード五世がロンドンに到着.聖域に隠れていた弟のヨーク公も連れてこられ,兄弟はリチャードの意向で王城であるロンドン塔で過ごすことになる.
リチャードは少年王を廃して自ら王位につく野望を温め,バッキンガムはそのためにヘースティングズを味方に引き入れるよう打診する指示を下す.満足したリチャードはバッキンガムに褒美を約束する.
III-2
ヘースティングズはスタンレー卿から翌日の枢密院会合の危険を知らされるが相手にしない.一方,リチャードの使者からリチャードが王位につこうとしていることを聞くと反発する.
それでも,ヘースティングズはスタンレーともども会合に出席すべく出発する.
III-3
ポンフレットで捕らわれていたリヴァーズ伯,グレー卿,ヴォーンの三人が刑場に引き立てられていく.
III-4
枢密院の席上,リチャードは言いがかりをつけてヘースティングズを責め,即刻の処刑を命じる.
III-5
ロンドン市長はすでに処刑がすんだヘースティングズの首を見せられるが,リチャードのすごみとバッキンガムの説明に納得せざるを得ない.
リチャードはバッキンガムに,エドワード四世が王妃と正式に結婚していなかったとの話を市民に伝えるよう指示する.
III-6
代書人が登場してヘースティングズの逮捕の前に令状ができていたことを嘆く.
III-7
バッキンガムは,ロンドン市民にエドワード四世の結婚の無効とリチャード三世の王位を告げたものの,市民たちがみな押し黙っていたことを報告する.
ロンドン市長をはじめ市民らはベイナード城にやってくる.バッキンガムがリチャードの敬虔な姿を演出し,その誘導に従って市長らはリチャードに王位を引き受けるよう求める.バッキンガムとの打ち合わせどおり,リチャードはその気のないふりをしながら,最終的には王位を受諾する.
IV-1
王妃エリザベスとリチャードの妃アンがロンドン塔の王子たちに会いにくるが守衛に拒まれる.
アンは王妃として戴冠するため呼び戻されるが,エリザベス王妃はアンも自分と同じでリチャードの犠牲者だと憐れむ.
IV-2
国王となったリチャードはバッキンガムにロンドン塔の二王子の暗殺をもちかけるが,バッキンガムが逡巡すると,ティレルを送り出す.
リチャードはまた,王妃アンの重病の噂をまくことを指示する.エドワード四世とエリザベス王妃の娘エリザベス王女(エリザベス・オブ・ヨーク)との再婚によって王位を安泰にするためである.
王妃の前夫との間の息子ドーセット侯が大陸にいるリッチモンド伯のもとに亡命しており,リチャードはリッチモンドの義父スタンレーに警戒を命じる.その間,約束された褒美を願い出るバッキンガムのことは目もくれなかった.
IV-3
ティレルがロンドン塔の二王子殺害をすませて戻ってくる.
イーリー司教モートンが大陸のリッチモンドのもとに走ったとの報せが届く.
バッキンガムはリチャード三世に反乱を起こす.
IV-4
マーガレット王妃がヨーク朝崩壊の兆しを喜ぶ.我が子の死を嘆くエリザベス王妃とすでに命を落としたヘースティングズ,リヴァーズ,グレーについてはみなマーガレットの呪いが成就したことになる.
リチャードはエリザベス王妃にその長女エリザベスとの結婚を打診する.王子たちを殺したリチャードに反発する王妃だったが,いつのまにかリチャードにまるめこまれたような形で娘を説き伏せる役を引き受ける.
リッチモンド伯の来寇と各地の反乱で危機になり,リチャードはスタンレーの息子を人質に取る.バッキンガムの反乱は瓦解し,バッキンガム本人も捕らえられたが,リッチモンド伯は西海岸への上陸に成功する.
IV-5
スタンレーは,リチャード三世に息子を人質に取られていながらも,リッチモンド伯に激励のメッセージを送る.エリザベス王妃についても,娘エリザベスをリッチモンドに嫁がせる意向と伝える.
V-1
バッキンガム,かつてのマーガレットの予言を思い出しつつ,刑場に向かう.
V-2
リッチモンドが味方に訓辞を下す.
V-3
ボズワースフィールドでリッチモンド伯の軍と迎え撃つリチャード三世の軍が対峙.リチャード三世に殺された者たちの亡霊がリチャードの眠りを妨げ,リッチモンドのために祈る.
リチャードは,合力しようとしないスタンレーの息子の処刑を命じるが,すでに戦闘がはじまろうとしており,それどころではなくなっていた.
V-4
激戦の中,乗馬を失ったリチャードが馬を求める.
V-5
リチャードとリッチモンドが剣を交え,リチャードが倒れる.
戦闘はリッチモンドの勝利に終わり,リッチモンドはエリザベス王女と結婚することでランカスター家とヨーク家を統一する意向を宣言する.
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『リチャード三世を愛した女』