スペイン継承戦争（1701年〜1714年）

スペイン王カルロス２世没後のスペイン王位をめぐって，ブルボン家のフェリペ５世を推すフランスと，ハプスブルク家のカルロス３世（カール大公）を推すオーストリア，イギリス，オランダ，プロイセンなどの諸国が戦った戦争．

病弱なカルロス２世の没後に備えてイギリスのウイリアム３世とフランスのルイ１４世は２度にわたりスペイン領の分割条約を結んだが，国際的に受け入れられないまま，1700年，ついにカルロス２世は没した．
カルロス２世は遺言状でルイ１４世の孫フェリペを王位継承者に指名しており，1701年，これに異を唱えるオーストリアとの間でイタリアにおいてスペイン継承戦線が勃発した．1702年にはイギリス，オランダも参戦した．
緒戦の主戦場はイタリアとネーデルラントだったが，ネーデルラントではマールバラ（ジョン・チャーチル）の活躍により，同盟軍は，スペイン領ネーデルラント全域を支配していたフランスから次々に拠点を奪取する戦果を上げた．しかし，帝都ウイーンにも近いバイエルンがフランスと同盟することで，同盟陣営は危機に直面する．
そこで1704年，マールバラは，味方をも欺いてネーデルラントの主力軍をバイエルンの奥地にまで進め，ブレニムの戦いでフランスに対して大勝利を上げる．
1706年，ラミイの戦いのあと，マールバラ率いる同盟軍は一気にネーデルラントの大半を占領した．その後もマールバラは1708年にはアウデナールデの戦い，1709年にはマルプラケの戦いとネーデルラントで相次いで勝利を上げる．
この間，海上では1704年のジブラルタル占領，1708年のミノルカ占領という同盟陣営の戦果があった．イタリア方面でも1707年にはブルボン勢力は一掃された．
一方，肝心のスペインでは，1706年，同盟軍は首都マドリードを占領するが，２か月もたたずして奪還された．ルイ１４世によって送り込まれたフェリペ５世はすでにスペイン王としてスペイン国民の支持を得つつあった．
しかし，長引く戦争に厭戦気分は高まり，マールバラの愛妻サラとアン女王の確執もあって，マールバラの指導力にかげりが見えるようになる．1710年，マールバラはネーデルラントで包囲戦を続け，着実に戦果を重ねてはいたが，イギリス本国ではマールバラの盟友として内政を支えていたゴドルフィンが更迭され，まもなく戦争遂行を積極的に支持してきたホイッグ政権がトーリーに取って代わられた．
トーリー政権首班のハーレー（オクスフォード伯）は戦争を終わらせるために内密にフランスとの交渉に着手する．無敗の将軍マールバラは解任され，1712年，イギリスは同盟軍を見捨ててフランスと休戦した．
1713年，ユトレヒト条約によってイギリス，オランダ，プロイセンなどがフランスと講和した．ただし，オーストリアがフランスと講和するのは翌1714年のことになる．
結局，スペイン王位はブルボン家のフェリペ５世が継承することが確定した．その一方，イタリアやネーデルラントのスペイン領は割譲されることになり，列強間の勢力均衡がはかられた．戦争遂行でも講和締結でも主導権を握ったイギリスは地中海の要衝ジブラルタルや新世界のニューファンドランドを獲得したことに加え，スペインへの奴隷供給権（アシエント）が認められるなど，最大の受益者となった．